健康情報2.お茶の元素分析によるミネラル量と質の違い

 茶のミネラル(無機質)成分とその量は意外と知られていません。
 筆者らは国立健康・栄養研究所(現国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所)千葉市環境保健研究所との共同研究で各種茶を誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)にて24種の元素定量を行いました。その結果、総ミネラル量は鳥龍茶が2594.3ppmで最も高く、麦茶が961.2ppmと最も低値(鳥龍茶>ほうじ茶>緑茶ほまれ>煎茶>静岡煎茶>宇治茶顆粒>カテキングリーン>玄米茶>宇治煎茶>麦茶)でした。この内、全茶においてマグネシウム(Mg)とマンガン(Mn)量が総ミネラル量の94.3(鳥龍茶)~98.1%(玄米茶)を占め、Mg量は60.4(鳥龍茶)~77%(玄米茶)、Mn量は1.9(麦茶)~40.4%(ほうじ茶)でした。

 抗酸化元素および必須元素Co、Cr、Cu、Mg、Mo、Mn、Ni、Se、V、Znの総量は総ミネラル量とほぼ比例していました。鳥龍茶はCo, Cr、Cu、Mg、Se、Vが多く,麦茶はZnが多いことがわかりました。
 汚染元素の定義はありませんが、Al、As、Cd、Pb、Snについて検討しました。茶腫の名前は避けますが、中にはアルミニウム(Al,175.6ppm)、砒素(As,0.425ppm)、鉛(Pb,3.608ppm)、錫(Sn,0.372ppm)と他の元素に比べて高値を示すものがありました。この数値はヒ素(宇治煎茶の22倍)、ビスマス(24倍)、鉛(20倍)、錫(16倍)に当たります。
 以上、茶中の元素量は栽培される土壌等の環境によっても影響を受けますが、茶種によって元素バランスおよび量がかなり異なっていることが分かりました。また、砒素、カドミウム、鉛含有量の多いものが確認されました。茶腫については成分分析表示のない物も多く,ミネラルの成分表示の公開も含めた検討が必要です。(近藤雅雄、2025年3月6日掲載)

健康情報1.健康食品は十分に情報を得てから摂取したい

 コロナ禍における自粛生活は健康食品の利用を加速させました。
 健康食品の使用目的は病気の予防ですが、病気の90%は活性酸素が原因と言われています(日本抗酸化学会)。こうした観点から、とくに活性酸素を除去する抗酸化成分を含む商品が、がん予防、動脈硬化予防、老化防止、免疫増強作用、美容などを宣伝文句に多数販売されています。
 しかし、この抗酸化物質を過剰摂取するとプロオキシダント作用、すなわち、本来活性酸素を除去するはずの健康食品が、逆に体内で大量の活性酸素を発生する原因となる場合があります。また、食物や医薬品との相互作用も考えられ、安全性についての保証は何一つなく、注意が必要です。さらに期待される効果がまったくない健康食品も多々ありますので、よく情報を得てから購入・摂取して下さい。
 栄養成分は基本的に食品から摂取することによって自然治癒力の強化など、さまざまな効果が発揮されます。 (近藤雅雄、2025年3月6日掲載)

飲む健康ゴーヤエキス・プラス・難消化性デキストリン

~苦瓜(ゴーヤ)の豊富な栄養素と難消化性デキストリンを一包に凝縮~

Ⅰ.ゴーヤの主な成分と健康効果

 ゴーヤにはたんぱく質、炭水化物、脂質、ビタミン類、ミネラル類の5大栄養素を含み、エネルギー量は17Kcal です。この内、とくにビタミンB1、B2 、βカロテン、ビタミンC、カリウム、食物繊維が豊富に含まれています。
 ゴーヤは夏バテ・疲労回復、血糖値の調節、脂質異常の調節、血圧調節、むくみ・便秘の解消、ダイエット、老化防止・美肌作り、紫外線・シミ対策、貧血予防、肌荒れ・ニキビ予防などに有効であると言われています。とくにビタミンCはキュウリの14mgやトマトの15mgに対して5倍以上も含まれ、野菜の中で唯一、加熱に強いという特性を持っています。また、鉄分はほうれん草の約2.3倍含まれ、葉酸とともに貧血の予防になります。ビタミンB群は生体エネルギー(ATP:アデノシン三リン酸)の生産に不可欠で、疲労回復、皮膚や粘膜の正常化に、カリウムは腎臓でナトリウムの排泄に働きますので血圧の低下に各々役立ちます。
 苦み成分としてチャランチンとモモルデシン、コロコリン酸が含まれ、チャランチンとコロコリン酸は植物インスリンとも言われ、血糖値の正常化、糖尿病の血糖値改善(食後高血糖改善)に役立つと古くから注目されています。ヒトのインスリンと同様に肝臓や筋肉へのブドウ糖の取り込みを促進し、グリコーゲンの合成を促すことが報告されています。動物実験では糖尿病改善効果、抗ウイルス作用、抗炎症作用、コレステロール低下作用、抗癌作用、免疫調節なども報告されています。チャランチンやモモルデシンには活性酸素を還元する作用も報告されています。
 食物繊維は100g中水溶性0.5g、不溶性2.1g含まれ、腸内の善玉菌の増殖を促進し、糞便量を増やし、腸内環境を整えます。サポニンはコレステロールや老廃物を排出し、動脈硬化、糖尿病、がんの予防、胆汁酸の分泌や産生を促してコレステロール値を下げます。

Ⅱ.難消化性デキストリンの健康効果

 難消化性デキストリンは天然の澱粉から作られた水溶性の食物繊維で①食後血糖上昇抑制作用②食後中性脂肪上昇抑制作用③血清脂質低下作用④内臓脂肪低減作用⑤整腸作用⑥ミネラル吸収促進作用などの効果が報告され、安全な食品として消費者庁で認められています。

Ⅲ.飲む健康ゴーヤエキス+難消化性デキストリン

 難消化性デキストリンはゴーヤエキスと同時に摂取することで水溶性と不溶性のバランスが保たれることが推測され、食物繊維の効果とゴーヤの栄養分の効果に相加・相乗効果が期待できると期待されます。とくに、糖代謝と脂質代謝の改善に対する効果とビタミン、ミネラルなどの吸収促進が期待されます。
 飲む健康ゴーヤエキス+難消化性デキストリンはゴーヤの栄養素を丸ごと水、熱湯などで溶かしておいしく召し上がれます。そして、現代人の摂取量が不足している食物繊維を補給することができます。

飲用の注意
 ゴーヤには血糖低下作用のある成分が含まれていますので、効果の現れやすい子どもや高齢者および糖尿病患者の場合は飲みすぎに注意してください。また、妊娠中にゴーヤを食べると流産を起こしやすいと言われています。さらに腹痛や下痢といった消化器症状、頭痛などが現れた場合は摂取を見合わせた方がよいでしょう。近藤雅雄(東京都市大学名誉教授)
PDFもご参照ください。PDF:飲む健康ゴーヤ

健康を体感できる食品「サルバチア ホワイト チアシード」

チアシードは中南米原産サルビア科の植物。現地では古来から「生命維持にはチアシードと水があれば足りる」と言われ、他の穀物に混ぜたり飲み水に入れたりして摂取してきた。粒の大きさはゴマよりも小さく、いちごの表面の粒位で、白と黒がある。白い粒の方が栄養学的効果は高く、これを品種改良したスーパーチアシードが「サルバチア」。水を含んだ時にもチアシードは約10倍、サルバチアは14倍と膨む。
 サルバチアの主な栄養成分は、脂肪33%(オメガ3系脂肪酸は総脂肪の59%)、炭水化物36%(食物繊維81%)、タンパク質20%、ビタミン・ミネラル11%を含む完全栄養食品です。ダイエット時の食事や運動時の栄養補給、生活習慣病予防やアンチエイジングなど多方面で健康保持を目的として注目されています。
 また、生体の機能保持に不可欠なオメガ3系脂肪酸(DHAやEPAなど)はサーモンの8倍以上、葉酸はほうれん草の5倍、マグネシウムはブロッコリーの5倍、ミネラルは牛乳の6倍、抗酸化物質はブルーベリーよりも多く、タンパク質も大豆より多いことが報告されている。これだけの栄養素を一度にとることができる完全栄養食品はなかなかなく、男女・年齢問わず、日常の食生活に取り入れたい食品です。
 (近藤雅雄:平成28年11月22日掲載)

PDF:サルバチアホワイトチアシード

こころとからだの健康(13)目の病気の予防に必要な栄養素と食品

 近年、スマホやコンピュータ、大画面テレビなどの急速な発展による生活環境の変化に伴って眼精疲労・ドライアイを自覚する人が増加すると共に白内障、緑内障、加齢黄斑変性などの失明に至る眼病が注目されるようになった。これら背景にはスマホやコンピュータの発展以外に高齢人口の増加と日常的なストレス、偏った食事、無理なダイエットなどによるビタミンやミネラル類の過不足など、栄養障害が考えられることから目の病気も生活習慣に関わる疾病と言える。

 目はこころとからだの健康維持に重要であり、目の病気は様々な行動の妨げとなるなど、日常生活への負の影響は計り知れない。疲れ目やかすみ目で悩んでいる人、スマホやパソコンなどで目を四六時中酷使している人や自動車やトラックのドライバー、飛行機のパイロットなどは一度自分の食生活を見直すことが大切である。普段の食事を意識して摂取する習慣を身に付けたい。食事で摂取できない時は視力回復のサプリメントや緑黄色野菜、果物などを積極的に摂りいれることも考えたい。

 世界の中でも日本人の視力低下は著しく、最近の調査では約83%の人がメガネかコンタクトを使用し、近視の低年齢化が問題となっている。目に関することわざは多数あるが、その中で「目は心の鏡」「目は人の眼(まなこ)」と言われるように、目はこころとからだの入力部位であり、こころとからだを映し出している。目は生体すべての感覚情報の約80%を占めると言われ、生体に入る情報は目に依存していると言える。

 人間において、視力が形成されるのは生まれてから後天的に徐々に発達し、5~7歳位までに完成すると言われている。したがって、この期間における目のケアーにはとくに十分に注意したい。また、目は12~13歳頃から老化が始まると言われている。生涯において目を大切にするこころを持って、目の健康に気を配り、食環境と同時にストレス解消の方法を自分なりに考え、美しい目を保持したいものである。

 本稿では目の病気の予防・対策に必要な栄養素・食品について調査を行った。論文の内容はⅠ.視覚と目の病気(1.視覚の性質、2.目の病気、3.失明の原因となる疾患)、Ⅱ.眼病の予防に良いとされる栄養素と食品(1.眼精疲労・ドライアイに良い栄養素、2.近視抑制に良い栄養素、3.白内障、加齢黄斑変性などに良い栄養素、4.抗酸化物質の機能、5.ブルーベリーは目が良くなる食べ物の代表)、Ⅲ.眼に良い栄養素(1.抗酸化物質、2.ビタミン類、3.ミネラル類、その他)からなる。(近藤雅雄:平成28年2月8日掲載)
 内容詳細は以下のpdfを参照されたい。 PDF:眼の病気の予防・対策に必要な栄養素{pdf}

油脂の健康効果~「こめ油」「クリル」「亜麻仁油」の健康効果

1.こめ油
原料:米糠
成分:米糠に特有の成分γ‐オリザノール(オリザノールA、オリザノールC)とオレイン酸、ビタミンE(α‐トコフェロール、α‐トコトリエノール)、ビタミンK、鉄などを含む。γオリザノールとはフェルラ酸とステロールとが縮合したエステル類の総称。
効果:以下のように多様な効果が知られている。
①自律神経調節作用:自律神経失調症の緩和に有効、自律神経のバランスを整え、肩こり、眼精疲労、腰痛、更年期に起こりやすい不定愁訴などの症状を改善する。
②皮膚の健康維持作用:皮膚の血行をよくするとともに、皮脂腺の機能を高め乾燥性の皮膚疾患を改善する。老化した角質を取り除き、皮膚の表面を膜で保護する。また、シミの原因となるメラニン色素の増殖を抑え、紫外線吸収作用があり、皮膚の酸化および老化を防ぐ。皮膚の血管を拡張し、血液循環を促進する。
③血中脂質改善効果:脂質代謝に関与し、コレステロールを低下させる。また、コレステロールの吸収・合成を抑制する効果が知られ、高コレステロール血症や動脈硬化症など脂質異常症の予防・治療薬に多く利用されている。
④生殖機能改善作用:無月経、卵巣機能障害、性腺刺激作用などの効果。
⑤抗酸化作用:ポリフェノール成分で、ビタミンEとともに抗酸化作用が知られ、脂質過酸化防止、リノール酸の体内作用の強化、ホルモンバランスの改善、脳や皮膚の老化防止などが知られている。
⑥その他、抗ストレス作用、成長促進やがん治療効果、心身症改善効果などが知られ、医薬品および化粧品としても利用されている。医薬品としての副作用は発疹・かゆみなどのアレルギー症状、眠気•嘔吐、吐き気•下痢、脱力感、倦怠感、また、0.1%未満であるが、めまいやふらつき、頭痛、便秘、食欲不振、腹痛、口内炎、動悸、むくみ、などの症状が報告されている。

2.クリル
原料:オキアミ類
成分:EPAとDHA
効果:オキアミから抽出されるクリルにはDHA、EPAを豊富に含む。DHAは脳内に存在する主要な多価不飽和脂肪酸であり、脳の発達と機能のために重要である。脳のシナプスに豊富に含まれ、ニューロンでのシグナル伝達に関与していることが示唆されている。記憶の要である大脳辺縁系の海馬にも多く含まれる。脳の代謝・血流改善作用として、①血管壁や赤血球の細胞膜を柔らかくする。②神経伝達物質の産生量を増やすことが知られている。また、ストレス耐性を強化する働きもあるという。注意欠陥多動性障害(ADHD)の子どもに症状のわずかな改善が認められたという報告がある。 さらに抗酸化成分のアスタキサンチンが含まれ脂質過酸化防止に有用である。

アスタキサンチン
ビタミンEの約1000倍の抗酸化力とされ、自然界で最強の抗酸化物質との指摘がある。
主な効能は脂質の酸化防止、LDLコレステロールの低下、動脈硬化の予防・改善、糖尿病性白内障の進行抑制、ストレスなどによる皮膚の免疫能低下の抑制、紫外線による皮膚の酸化防止、炎症抑制、ビタミンAの生産、概日リズムの調節などが言われている。最近、脳血管性認知症やアルツハイマー病、糖尿病の合併症、白内障、加齢性黄斑変性症などの予防効果が期待できると注目されている。

3.亜麻仁油
原料:亜麻仁種子
成分:αリノレン酸
効果:オメガ3系脂肪酸の一種であるαリノレン酸は、体内でエイコサペンタエン酸(EPA)とドコサヘキサエン酸(DHA)に変換される。亜麻仁油にはα-リノレン酸がゴマの約100倍含まれ、脂質異常症患者の血中中性脂肪と超低比重リポタンパク質(VLDL)値を全般に低下させると言われている。
効果としては学習能力や記憶力の向上、認知症予防、アレルギー症状の緩和、血流改善、エストロゲン作用、便秘解消、高血圧、動脈硬化、心血管疾患、骨粗鬆症、糖尿病、がんなどの生活習慣病予防など多様な効果があると言われている。ドイツでは慢性の便秘、緩下剤誘発性結腸障害、過敏性腸症候群、腸炎、憩室炎での使用を承認している。 (参考文献:Wikipediaなど)(著者:近藤雅雄、平成26年11月23日)

こころとからだの健康(10)脳に良い食品、機能性食品とその成分

 脳は大脳(皮質、辺縁系、基底核)、間脳(視床、視床下部)、脳幹(中脳、橋、延髄)および小脳から構成され、心身(こころとからだの働き)の司令塔である。特に大脳皮質は感覚・運動の統合、意志、創造、思考、言語、理性、感情、記憶を司る人間としての最も重要な器官であり、その中でも前頭連合野は人間としての中枢とも言うべき、様々な重要な働きをし、哺乳動物の中では一番重たい。
 脳は骨格筋、肝臓に次いで基礎代謝量が高く、多くの栄養素を必要としているため、栄養の摂取バランスの異常や不足は脳の機能にダメージを与え、こころとからだに様々な影響を与える。その代表的なものとして、近年、アルツハイマー病やうつ病などの疾病が大きな問題となっている。
 2012年の世界保健機関の報告によると、認知症患者は毎年770万件増加し、その数は世界中で3,560万人と推定されている。これが2030年までに倍増、2050年までに3倍以上(1億人以上)になると予測されている。認知症には①アルツハイマー型、②脳血管性認知症、③レビー小体型認知症、④ピック病(前頭側頭型認知症)、⑤混合型認知症、⑥その他などがあるが、この内、70%近くがアルツハイマー病という。
 そこで、認知症やうつ病などの脳の障害を予防し、脳(こころとからだの司令塔)の働きをよくする食品および有効成分について文献調査を行い、こころとからだの健康に役立つ資料とした。
 掲載した食品および機能性物質は以下の24食品、24物質であり、その詳細はpdfに掲載した。

1.脳(アンチエンジング)の活性化が期待される食品
 亜麻の種(亜麻仁油)、イチョウ葉、オリーブオイル、カワカワ、くるみ、ココア、コーヒー、魚、ザクロ、センテラ(ゴツコーラ、ブラーミ、ツボクサ)、SOD様作用食品、セイヨウオトギリソウ、セイヨウカノコソウ、ダークチョコレート、納豆、ニンニク、ビルベリー、ブルーベリー、ほうれん草、豆類、松葉、ムール貝、ヨヒンベ(ヨヒンビン)、緑茶の24食品。

2.脳に良いとされる機能性物質
 アスタキサンチン、アントシアニン、イソフラボン、カテキン、γ‐アミノ酪酸(GABA、ギャバ)、ギンコライド、グルタチオン、コエンザイムQ10、サポニン、ジメチルアミノエタノール、食物繊維(不溶性食物繊維、水溶性食物繊維)、タウリン、テアフラビン、テアニン、DHA、トリプトファン、ビフィズス菌、分岐鎖アミノ酸(BCAA)、フェルラ酸、ホスファチジルセリン、ポリフェノール、フラボノイド、メラトニン、レシチンの24物質。
 原稿は以下のPDFを参照されたい。(近藤雅雄:平成27年10月6日掲載)
PDF:脳に良い食品、機能性食品

植物センテラ(ゴツコーラ、ブラーミ、ツボクサ)の人への影響

 インド・南アジア・東ヨーロッパなどが原産の植物で、葉の部位が西洋ハーブとして利用される。インド医学であるアーユルヴェーダに取り入れら、中国の「神農本草経」に記載があるという。
 北米の先住民は皮膚炎の治療薬や利尿剤として使用し、東洋医学では身体的な悩みからくるうつ病などの治療に使われている。
 効能としてはリラックス効果や記憶力の回復、精神状態(うつ状態、ストレス状態)の改善や鎮静効果、また、脳内の神経伝達物質を調整し、脳の働きを活性化するという。その他、去痰、風邪によるうっ血解消、産後の回復を早める、血行促進、静脈炎の腫れや痛み緩和などが知られている。動物実験では学習能力と記憶力が改善されたとの報告がある。

スーパーフード亜麻の種(亜麻仁油)のサプリメント効果

 日本ではあまり見かけないが、海外ではスーパーにて普通に売られているスーパーフード。種は小さいが100g当たり脂肪41 g、食物繊維28 g、タンパク質20 gと豊富に含まれている。
 最近、亜麻の種子から得られる亜麻仁油(アマニ油)にオメガ3系脂肪酸であるα-リノレン酸をはじめとする不飽和脂肪酸が豊富に含まれることから、脳に良いサプリメントとして販売されている。ドイツでは慢性の便秘、緩下剤誘発性結腸障害、過敏性腸症候群、腸炎、憩室炎での使用を承認している。
 効果としては学習能力や記憶力の向上、認知症予防、アレルギー症状の緩和、血流改善、エストロゲン作用、便秘解消、高血圧、動脈硬化、心血管疾患、骨粗しょう症、糖尿病、がんなどの生活習慣病予防など様々な効果があると言われているが、十分な科学的根拠はない。
 安全性については、食品に含まれる量を摂取する場合は問題ないが、妊婦・授乳中の女性については十分なデータがないため摂取を避ける。

地中海に面した地域で汎用されているオリーブオイルの効果

 地中海に面した地域(イタリア、スペイン、ギリシャなど)で汎用されている。ギリシャでは日常的に様々な料理に使われ、消費量は世界一。他の食用油脂に比べて酸化されにくく固まりにくい性質を持つ。
 ポリフェノールと良質の脂肪がからだと脳のエネルギー源となるほか、関節や粘膜の炎症を抑える効果があるという。主成分であるオレイン酸は腸を刺激して排便を促す効果がある。ただし体質によっては、過剰摂取により下痢を起こす場合もあるという。
 オリイーブオイルは大腸がんの予防として注目されている。日本では男女ともに大腸がんが急増しているが、オリーブオイルを大量に使っている南イタリアやギリシャ、スペインでは大腸がんが少ない。また、高GI食にオリーブオイルを加えると食後血糖値が抑えられ、さらにダイエット効果(やせる)があるといわれている。

「くるみ」は栄養価が高く、脳や心臓の健康に効果がある

 紀元前7000年前から人類が食用していたとも言われ、日本では縄文時代から食用していたとされる。米国カリフォルニア州と中国での生産が多く、日本では長野県東御市が生産量日本一である。脂質が実全体の70%を占め、オメガ3系脂肪酸であるα-リノレン酸も豊富である。また、ビタミンEなど様々なビタミンやミネラルが豊富に含まれており、栄養価が高く、脳や心臓の健康効果があるという。
 2015年、米国の大規模研究によって、くるみを消費した成人の記憶力・集中力・情報処理速度などの認知機能は年齢・性別・民族性に関係なく高いことが分かった。くるみにはポリフェノールが含まれ、脳内化学伝達物質を活性化し、認知機能を向上させる可能性が示唆されている。
 くるみを1日に一握り分食べている人の記憶力は、食べていない人と比較して19%高い。

ビタミン,ポリフェノール,アミノ酸等を含む「ザクロ」の効能

 1999年から2000年頃、果汁にエストロゲンが含まれるとして閉経後のアルツハイマー型認知症に有効であるとブームとなった。しかし、国民生活センターが流通しているザクロジュースやエキス錠剤など10 銘柄について分析した結果、いずれもエストロゲンは検出されなかった。古くから薬用に供されてきたが、科学的根拠は十分ではない。
 可食部はカリウムが比較的多く含まれ、ビタミンC,B1,B2,ナイアシン等のビタミン類、タンニンやアントシアニン等のポリフェノール類、グルタミン酸やアスパラギン酸などのアミノ酸類等が含まれ、美肌効果や生活習慣病に良いといわれている。

多年草ハーブ,セイヨウオトギリソウの効果と薬への影響

 セントジョーンズワートは、一般的にセイヨウオトギリソウという植物種のことを指し、黄色い花を咲かせる根茎性の多年草のハーブである。ヨーロッパに自生し、後にアメリカへも伝播され、多くの草地で野生化している。ヒペリシンを含み、モノアミンオキシダーゼ(MAO)を抑え、抗うつ症状の改善、鎮静作用があることからドイツでは抗うつ剤として用いられている。しかし、うつ病に対する効果は賛否様々であり、軽度から中程度のうつに対して有効で副作用が少ないとする研究や、逆にプラセボ以上の効果は見られないとする研究がある。
 ジゴキシン(強心薬)、シクロスポリン(免疫抑制薬)、テオフィリン(気管支拡張薬)、インジナビル(抗HIV薬)、ワルファリン(血液凝固防止薬)など、医薬品との相互作用などが危惧されている。さらに、ある種の薬物の量を体内で減少させる作用があり、薬効が低下することがある。副作用としては、ごくまれであるが光線過敏性皮膚炎や不安感、口渇感、めまい、消化器症状、倦怠感、頭痛、性的機能障害などが知られている。

医療用のハーブとして用いられてきたセイヨウカノコソウ

 オミナエシ科のセイヨウカノコソウは欧州、アジアを原産とする多年草で、古代ギリシア、ローマ時代から医療用のハーブとして用いられ、米国ではサプリメントとして販売されている。
 治療上の使用法は医聖ヒポクラテスにより示され、2世紀にはガレノスが不眠症に処方したと言われている。16世紀には神経過敏、振戦、頭痛、動悸の治療に用いられ、第二次世界大戦中には英国で空襲によるストレス緩和のために用いられたと報告されている。
 臨床では神経の緊張、不眠症に対する鎮静薬、睡眠補助薬、消化管の痙攣と不快感、てんかん発作、注意欠陥多動障害(ADHA)の治療として用いられているが、有効性に関する科学的根拠は乏しい。
 仏国では、13歳女子に不安軽減や鎮静作用を期待してハーブ薬(セイヨウカノコソウ、ニガハッカ、セイヨウサンザシ、チャボトケイソウ、コラノキ含有)を1錠×3回/日、数ヶ月間摂取させたところ、肝細胞の90%以上が壊死したため、肝移植を行ったという報告がある。

カカオ成分が70%を超えるダークチョコレートの健康効果

 カカオ成分が70%以上のビターなチョコレートを1日に25g位食べると脳が活性化するという。原料のカカオは「神の食べ物」という意味で、不老長寿の妙薬として珍重されてきた。
 カカオにはポリフェノールが非常に多く含まれ、強い抗酸化作用がある。気分を落ち着けるリラックス効果、集中力・記憶力を高める効果、血圧を下げ高血庄の予防・改善の効果などが報告されている。また、カカオにはカルシウム、亜鉛、マグネシウム、鉄と言ったミネラルが豊富に含まれ、健康長寿に寄与するといわれている。
 これに対してカカオの含有量が少なく砂糖が多いミルクチョコレートの過食は肥満効果があるといわれている。

納豆には多様な健康効果が知られ、夕食での摂食を勧める

 大豆を納豆菌で発酵させた食品である。たんぱく質はもちろんのことミネラルやビタミンが豊富に含まれ、なかでも骨を作るのに不可欠なビタミンKやナットウキナーゼ1)を含むことで注目されている。食物繊維は100グラム中に4.9~7.6グラムと豊富に含まれる。食物繊維はオリゴ糖などと共にプレバイオティクスと呼ばれ、腸内環境に有用な成分である。納豆菌はプロバイオティクスと呼ばれ、これも腸内環境に有用と考えられている。
 納豆に含まれるレシチンは記憶力や学習能力を高め、血中コレステロールの低下による脂質異常症の予防、血圧低下作用による高血圧予防。たんぱく質は脳内の神経化学伝達物質の合成を活発化する。コリンは脳の神経化学伝達物質の材料となる。ビタミンBは中枢神経と末梢神経の機能を保つ。カルシウムは不足すると集中力が低下する。ビタミンKは脳の神経伝達を活性化する。カリウムは無気力を防ぐ。マグネシウムは高ぶった神経を鎮静化する。ジピコリン酸、リゾチームはO157病原性大腸菌、サルモネラ菌などの抗菌効果。イソフラボン、SODの抗酸化作用による生活習慣病予防のほか、健脳効果(神経伝達物質の活性化、血液循環の改善)、血栓溶解作用、骨形成促進作用、カルシウム吸収促進作用など多様な効果が知られている。
 ビタミンK2は抗凝血薬(ワルファリン)の作用を弱めることから、ワルファリンの服用中は、納豆は避けるべきである。
 ナットウキナーゼは食べた後10~12時間ほど効果があるといわれているので、夜に食べると脳梗塞を惹き起こす血栓の生産が抑制されるといわれています。  

中華料理や肉料理に欠かせないニンニクの健康効果とは

 生産量は中国が世界の8割を占めている。球根中のフラボノイドに認知症の予防があると言われるが、科学的根拠に乏しい。
 期待できる効果としては、ノルアドレナリン分泌を促進し、エネルギー代謝を活発にする。血栓形成抑制、血圧上昇抑制、コレステロールの低下、抗菌作用、抗ウイルス作用など多様な作用が報告されている。ニンニク成分の匂いのもととなるアリシンがビタミンB1(チアミン)と結合すると脂溶性のアリチアミンとなり、ビタミンB1の吸収・利用を促進し、元気にする強壮作用がある。無臭のスコルジニンには強力な酸化還元作用があり、体組織を若返らせ、新陳代謝を盛んにし、疲労回復に役立ち、強壮・強精作用を有する。また、にんにくは脳の萎縮を抑え、学習能力を高めることが動物実験で確かめられている。
 臨床的にはいくつかのがん、特に消化器系のがん(結腸がん、直腸がんなど)のリスクを減少させる可能性が示唆されている。アリシンには抗菌作用があり、腸管出血性大腸菌O157等に対する殺菌力から、消化器系の感染予防に効果があることを示唆している。
 副作用としては、①強い悪臭(口臭・体臭)の原因となる。②生のニンニクの強烈な香りと辛味は、刺激が強過ぎて胃壁などを痛める場合がある。③過剰摂取は胃腸障害を起こしうる。④調理などでニンニクアレルギーとなる場合がある。⑤赤血球の溶血を促し、血尿、血便といった溶血性貧血の原因となる場合がある。

ビルベリーの医薬品の可能性や健康効果ははっきりしない

 ツツジ科スノキ属の20〜40cm程の高さの低木に実が生るブルーベリーの一種で、ブルーベリー界の王様と呼ばれている。
 ビルベリーの果実はアントシアニン類などを豊富に含むため、「眼精疲労や近視によい」「視力回復に良い」「動脈硬化や老化を防ぐ」などといわれているが、ヒトでの有効性・安全性についての信頼できる十分なデータがない。ビルベリーの葉を経口で大量摂取すると死亡する可能性があると言われているので、葉の摂取は避ける。

ブルーベリーの目の健康効果についての科学的根拠はない

 コケモモ属のベリー類の総称で、食用として日本、オーストラリア、ニュージーランドなど各地で栽培されている。果実は北アメリカでは古くから食用されてきたが、20世紀に入り果樹としての品種改良が進み多くの品種が作られ、ほとんどの品種はアメリカ産である。
 ブルーベリーやビルベリーを使用した健康食品やサプリメントが「目の網膜に良い」と視力改善効果を謳い、広く市販されている。しかし、国立健康・栄養研究所の論文調査や海外での研究ではブルーベリーやビルベリーおよびそれらに含まれるアントシアニンによる視力改善効果は認められておらず、目に良いとして宣伝される科学的根拠はない。また、血管を丈夫にする、糖尿病・脳卒中に有効とされるが、ヒトでの有効性・安全性については信頼できるデータが見当たらない。妊娠中・授乳中の安全性については十分な情報がないため、食事以外での過剰摂取は避けた方がよい。

ビタミンや鉄分などの栄養素に富むホウレンソウ(ほうれん草)

 マグネシウムが豊富で、体内の血流を促進し、脳にも十分な血液が届く。また、ビタミンA、葉酸、ルテイン、鉄分を多く含み貧血予防に繋がる。しかし、シュウ酸が多く含まれているため、多量に摂取し続けるとカルシウムの吸収が阻害され、また、体内ではカルシウムと結合してシュウ酸カルシウム結石を作り腎臓や尿路障害の原因となることがある。