研究回想7.元.国立公衆衛生院,素晴しき教育・研究環境

公衆衛生院の学びと環境(施設,組織,職員)に感謝

 筆者が31年間,国立公衆衛生院にて楽しく教育・研究業務を遂行できたのは素晴らしき施設,設備,職員に恵まれたからであり,これらすべての環境に感謝を込めて回想しました。(近藤雅雄,2026年6月21日掲載)

国立公衆衛生院とは
 元国立公衆衛生院(本院,The Institute of Public Health,IPH)の建物・設備は米国ロックフェラー財団の寄付によって誕生しました。本院は,1938(昭和13)年3月29日勅令第147号公衆衛生院管制の公布をもって厚生省の創立(1938年1月11日)から約2か月後に同省の直轄機関として,東京都港区白金台の北里柴三郎博士が創設した伝染病研究所(現在は東京大学医科学研究所)の隣に設置されました。設置に関しては米国ニューヨーク州のロックフェラー研究所(現在:ロックフェラー大学)の細菌学者野口英世博士と恩師の北里博士が関与した記録(文献1,5)があります。
 本院は国および地方公共団体などで働く衛生技術者の資質向上を図るための養成訓練と公衆衛生に関する学理応用の調査研究を司る教育・研究機関として国内外の保健・医療,福祉・環境の分野に多大な貢献をしました。①教育課程としては系統教育課程(研究課程,専門課程,専攻課程),生涯教育課程(特別課程,特殊課程),国際教育課程(長期課程,短期課程)を持ち,わが国で初めてのSchool of Public Healthとして,公衆衛生の発展に貢献しました。また,②国際的には世界保健機関(WHO),日米医学協力プログラム,JICAなどを通じた国際協力を積極的に行いました。すなわち,国民の健康とQOL向上,公衆衛生の向上を目指した多分野の専門家からなる総合的な研修・教育・研究機関として,唯一無二の存在でした。
 本院の教育・研究組織は時代に応じて変化,閉院時は3学系(情報・政策学系,対人保健学系,生活環境学系)16学部,生物実験実習施設,保健情報センター,国際協力センター,教育研究計画部,図書館および総務部からなり,わが国の公衆衛生発展に多大な貢献をしました。  本院の建物は東京大学の内田祥三教授(元東大総長,文化勲章受章者)によって設計された厳かな近世ゴシック風装飾を備えた現代建築です。1982(昭和57)年,本院は日本建築学会より当時の建築様式を示す優れた建物として選定され,「日本現代建築総覧」に収録されています。

国立公衆衛生院の学びと環境(施設,組織,職員)に感謝
 筆者は1971(昭和46)年から2002年の終了時まで,厚生行政に関わるさまざまな研究および公衆衛生技術者への教育・研修に従事しました。本院の施設・設備は教育・研究環境の向上に十分配慮されただけでなく,自然の緑に覆われ,四階(右翼)の研究室からは富士山が見え,精神を集中し,教育・研究意欲を掻き立てる充実した職場環境でした。
 本院に入った動機は,生命の根源物質であるポルフィリン・ヘムの巨大化学構造に興味を持ち、当時先駆的な研究が本院の生化学研究室で行われていたのがきっかけでした。この化学物質を中心とした学術研究,教育,難病の調査研究・患者支援など,最先端の「研究と教育」活動に従事したこの期間は人生最高の時間でした。
 筆者は本院の全学部(16学部),動物実験中央研究室、図書館の各分野の専門家,100名(名称略)から各専門領域における実践的・総合的な近世の公衆衛生学を学ぶと同時に独学にて基礎を学び,修得しました。さらに,在職中は国際血液学会や日本内科学会など国内外30以上の学会に加盟し,常に最先端の医学,医療,保健及び環境科学などを学ぶと共に,国立感染症研究所など他の研究機関の専門家からも厚生科学を学びました。このような素晴らしき「環境と組織と研究者」に出会ったことは幸せでした。本院の元職員,そして施設を提供したロックフェラー財団にこころを込めて感謝します。

国立公衆衛生院と憲法第25条の「公衆衛生の向上及び増進」
 日本国憲法第25条は「国は,公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」と定めています。国がこの責務を果たすためには,厚生省において公衆衛生の研究・教育が推進されなければならない。第25条は国民の生存権の補償について定めており,同条第2項は,その生存権を具現するための三大シビル・ミニマムの一つとして「公衆衛生」を掲げています。つまり,「公衆衛生」という言葉には,国民の健康に対する国の公的責任という意味が含まれます。
 本院は公衆衛生の総合性を担保するために①情報政策系,対人保健系,環境衛生系など公衆衛生の全部門を揃え,同時に②研究と教育を一元化する,という理念に基づいて設立され,わが国における公衆衛生学の一大拠点として活動しました。
 しかし,1995(平成7)年、厚生行政の中心課題は生活習慣病となり,公衆衛生という言葉が消えました。そして,2002(平成14)年4月,本院は惜しまれながらも64年という短い歴史を閉じました。

おわりに ~公衆衛生は人類と共に在る~
 他国では,公衆衛生は国民の健康増進,QOLの向上,感染症予防,公共衛生などを目的とした重要な「教育・研究」機関としての役割を担っています。公衆衛生は人類が生存する限り存続し続けるでしょう。
(現在,本建物は港区が購入,郷土歴史館複合施設「ゆかしの杜」として公開しています)

文献(参考資料)
 本院の歴史,組織,教育訓練・研究活動,施設・設備,各部のあゆみなどの詳細は下記資料を参照してください。
1.記念誌「しろかね」-国立公衆衛生院64年の軌跡,-記念誌編集委員会編集 2002.10.15
2.国公衆衛生院の移転・再編1988-2001,公衆衛生研究,第51巻,特別企画号 2002.3
3.公衆衛生院ニュース,第24号,ー国立公衆衛生院創立50周年記念特集号,国立公衆衛生院編集,財団法人公衆衛生振興会発行1988.5.15
4.国立公衆衛生院,創立五十周年記念誌,国立公衆衛生院五十周年記念事業出版企画編集委員会1988.3.30
5.長田泰公,国立公衆衛生院の50年と将来展望,公衆衛生院研究報告,第37巻補遺,創立50周年記念号 1988.12

下の写真は筆者が撮影した本院の建物です。

また,PDFには良き国立公衆衛生院時代を回想しました。
PDF:国立公衆衛生院に感謝

老人のつぶやき6.社会人として大切な相手を思いやるこころ

 社会人の評価の一つとして、謙虚さや誠実さなどといった「人格・品性」があります。これは、人としての基本である「相手を思いやるこころ」,「いのちを大切にするこころ」,「感謝するこころ」、そして、社会の一員としての「責任あるこころ」を指します。人は生涯、社会人としてさまざまな人間と関わりますが、この関係を上手に保ち、人生を豊かにするためには年齢を問わず「相手を思いやる」こと、そして「自分に勝つ」ことが大切です。

1.社会人としての評価
 教育・研究分野で経験した多くの不見識な事例の中から、未だに記憶に残る3つを以下に示します。

1)研究協力の事例
 国際的に有名な教授からサンプルとその情報の提供依頼があり、科学の発展のためにこころよく引き受けました。教授はそれを用いて研究し、優れた論文発表を行いました。しかし、サンプルや情報の提供などに関する謝辞や研究成果の報告などは一切ありませんでした。国際的には有名な学者として活躍していますが、人間的には首をかしげる研究者でした。

2)会議の事例
 ある職場の運営会議で、議長が資料を作成・配布し、審議を始めたところ、20人の委員の内一人が誤字を指摘し、「このような、誤字のある資料を基にまともな議論はできない」と言う理由で会議が流会しました。
 一人の人間によって会議が破壊された例ですが、誤字は一つだけで、内容は全く問題はありません。その委員は被害者意識、組織への不満が強く、会議等、組織活動を平気で声高に破壊する人でした。この様な人は意外と多いです。議長は逆らわず、誤字を反省し、後日開催された会議では完璧に無事終了しました。

3)人事の事例
 某私立大学の教授が突然トップ人事によって某研究所の新所長となりました。新所長は、一方的に研究所の研究内容の変更と同時に研究者の入れ替えを行いました。また、研究部長から主任研究員(部長が大学教授、主任研究員が講師に相当)、またその逆など、降格や昇格の人事を行いました。権力を振るい組織を私物化したのです。結局、旧所長を含め10名以上の優秀な研究者が辞職しました。真面目で優秀な研究者の夢・生活が破壊された大きな悲劇です。本来あってはならないことですが、辞職した研究者は自分で新たな職場を見つけ転出しました。

 以上、3つの事例は教育・研究分野では比較的良く遭遇します。彼らは偏差値の高い、一流大学出身の優秀な学者であり教育・研究者です。しかし、人間的には我儘で自己中な人たちです。特に、権力を振るう人に自己中が多いようです。そのような人は相手の心の痛みを理解せず、すべて自分が正しいと思い込んでいます。例え間違っていても、それを認めず、後ろを振り返ることはありません。常に前を向いています。
 人間の評価は、血筋、偏差値、難関大学出身、業績、勲章など学歴や肩書といった表面的なラベルではなく「他者理解力」、感謝するこころがあるかどうかといった「内面的な豊かさ」に基づく「人格・品性」が大切です。

 社会には多様な職種がありますが、関わる人がすべて人格者だとは限りません。組織は人によって運営される以上、さまざまな問題が起こります。組織で重要なのはリーダーの人格・品性です。人間として基本的に重要な「他者理解」(相手の視点や立場に立って考えること)できるか否かが組織の発展に大きく関与します。

2.社会人としての生き方
 長い人生、人は多様な人間と関わります。その関係を正しく保つためには「信念」「他者理解」「感謝」のこころを持つと同時に、「自分に勝つ」こころを持つことが大切です。「自分に勝つ」とは、怠け心や誘惑を抑え(克己心)、目標に向かって強い意志で行動し続けることです。誰でも迷い、苦労し、悪い誘惑、困難、恐怖、哀しみ、怒りなどを経験します。その時は落ち着いて、自分を見つめ直し、自信を持って、ゆっくりと前へ踏み出します。そして、良き人脈を沢山構築し、それぞれの関わる社会・家族に迷惑をかけず、思いやりと責任を持つことです。

おわりに
 「人は財産(人財)である」と言われます。街中で「人材(スタッフ)募集」の広告をよく見かけますが、スタッフは英語でSTAFFと書きます。優秀な人であれば人財となります。しかし、STUFFとなると、単なる物(粗大ゴミ)であり、人罪となります。昔、学生によく「社会に役立つ人材(人財)となれ!」と講義で励ましたことを思い出します。相手への思いやりを持った良い人間関係を確立すればそれは人財となり、その後の人生を豊かにします。人は一人で生きて行くことは難しいので、多くの人と良い関係を築きたいものです。(近藤雅雄、2026年5月26日掲載,同年7月21日更新)
 以下に、自分を取り巻く環境に対する生き方についてPDFで示しました。ご参照ください。

PDF:自分を取り巻く環境は自分で創る、自分に勝つ

研究回想6.せたがや福祉区民学会創設時の感謝と誇り

 平成21(2009)年12月,東京都世田谷区は福祉の発展・充実を期して,区内の福祉関連施設や事業所,大学,行政及び区民が自由に参加できる学術団体,「せたがや福祉区民学会(以下,区民学会)」をわが国ではじめて創設しました。その後16年経ち,大学,企業,団体の加盟が増え、産官学(行政・大学・企業)が共同で福祉に関わる諸問題を提起,研究し,その成果を区民に還元する学術組織となりました。創設メンバーの一人として誇りに思います。

1.区民学会設立
 区民学会の会員は世田谷区内の福祉施設や事業所で働き,学び,研究する人々で構成されています。目的は、福祉の向上と発展を目指し相互に対等平等な立場で,福祉実践活動の工夫や抱える課題などについて研究を行ない,その成果を発表,討議します。大会は,区内大学の福祉系学部が持ち回りで会場校となり会員と学生ボランティアが一体となって開催する。こうした福祉関係者と住民,学生と行政が一緒になって研究発表する学術会議(学会)は,国内では初めてと思います。そこで、創設時のメンバーの一人として,過去を研究回想しました。

2.区民学会加盟
 2009年4月、区内の武蔵工業大学と東横学園女子短期大学が統合され、総合大学として5学部からなる東京都市大学がスタートしました。新設の人間科学部には児童福祉関連の児童学科があり、開設後、世田谷区社会福祉事業団世田谷区福祉人材育成・研修センターの職員2人が来訪、面会しました。来訪目的は「区民学会」設立に関する同意と施設校としての参加要請でした。職員から学会の主旨、内容についての説明があり、初代会長は自閉症研究の第一人者石井哲夫先生、そして運営委員長が昭和女子大学教授の永山誠先生といった福祉関係の大御所でした。職員の強い熱意と誠意にこころ打たれ、そして地域貢献、社会貢献及び教育の観点から学会設立に同意し、参加することを承諾しました。

3.区民学会の運営と学会開催
 学会の運営会議はいつも忙しい時に小田急線成城学園前駅近くにある福祉人材育成・研修センターの研修室Aに午後7時から開催。第1回の運営委員会は10名の委員がそれぞれ福祉の現状と将来を考え、熱心に議論したことを覚えています。当時大学の加盟校は4校(昭和女子大,日大文理,駒大,都市大)でしたので、区民学会の開催頻度は高かったと記憶しています。
開催校を経験して、当時は予算が無く、スタッフはすべてボランテアなので、開催に当たって大学の施設利用許可申請手続きおよび学生の動員が大変でした。また、発表演題も新設校でまだ整わなかった状態でしたが、山岸道子先生ほか沢山の先生方、学生の協力があって何とか開催校としての責務を果たせました。とにかく開催校の負担は大きく、大変であったことを覚えています。しかし、学生への教育、地域貢献、社会貢献と自分に言い聞かせ、無事責任を果たしました。また、学会開催及び運営に多大なるご支援・ご助力・ご協力頂いた区の人材育成・研修センター職員の皆様にはこころより感謝を申し上げたことを思い出します。

おわりに
 現在,区民学会は139団体,10大学が加盟し,設立時とは比較にならない程発展しました(詳細は学会ホームページを参照)。そして,世田谷区の福祉政策・行政は科学的根拠に基づいたさまざまな新しい取り組みが行われ,行政機関や福祉関係から注目されているとのことです。福祉関連の仕事に従事している人や学んでいる学生にとっては,世田谷区は働き・学び甲斐のある地域のようです。この様な活動は,地域で学び、地域で育ち、地域の発展に貢献すると言った連鎖が起こります地域創生が求められる現代,このような活動を考えてはいかがでしょうか。

 もはや福祉文化都市となった世田谷区および区民学会の益々の発展と学会関係者各位のご活躍を祈念します。

 2025年11月8日、東京都市大学にて第17回大会が開催されました。そこで、下記PDFに13年前に同校で開催された第3回大会の総括を回想しました。(近藤雅雄、2026年5月18日掲載)

PDF:第3回全体総括2012.2.10

健康情報15.運動により分泌される筋マイオカインの健康効果

 筋肉には骨格筋(横紋筋)、心筋(横紋筋)、内臓や血管の平滑筋の3種類存在する。この中で、骨格筋は体重の約26~36%を占める人体最大の臓器で身体活動を支えている。
  骨格筋には①運動作用、②姿勢保持作用、③熱の発生、④張力の発生、⑤筋ポンプなどの作用がある。しかし、近年、運動によって骨格筋から血液中に分泌される物質、マイオカインが次々と見出されている。いわゆる運動ホルモンで、運動による健康効果として注目されている。

Ⅰ.マイオカインとは
 マイオカインは骨格筋細胞内で生産され血中に分泌される物質の総称で、多くの種類が報告されている。生活習慣によってマイオカインの分泌量に個人差が見られ、日常的によく動く人は「善玉」が多く分泌される。一方、動かない人は「悪玉」が増え、筋の萎縮・老化を速める。つまり、運動(からだを動かすこと)は善玉マイオカインの分泌を促進し、健康を維持する鍵となる。

Ⅱ.マイオカインの主な生理作用
 マイオカインは脳、肝、膵、皮膚、血管、筋、骨、脂肪細胞など、ほぼ全身を標的組織として作用する。その主なものは脂質代謝の改善、白色脂肪細胞から褐色脂肪細胞への変換、内臓脂肪減少、糖代謝の向上、糖尿病の予防、抗炎症作用、脳神経細胞の活性化、海馬の神経細胞新生、学習記憶力強化、認知症予防、食欲抑制、抗がん作用、免疫増強作用、全身エネルギー代謝の調節、血管の健康維持、筋肥大促進、筋増強促進、骨形成、骨粗鬆症予防など多様な効果が報告されている。
 運動による健康増進や生活習慣病、がん、神経変性疾患サルコペニアなど各種疾病の予防、健康と若さを保ちフレイル予防アンチエイジング健康寿命延伸に期待されている。

Ⅲ.マイオカインを増やす生活習慣
マイオカインの分泌に欠かせないのが健康増進の3原則(運動,栄養,休養)。各個人にあった心身のケアを考えたい。
1.運動:運動の種類や強度によって分泌されるマイオカインの種類や量が変わるため、さまざまな種類の運動を行うことを心掛ける。継続的な運動は持続的にマイオカインの分泌を促すため、体力や生活環境に合わせて軽い運動(ウォーキングやストレッチなど)を習慣化すると良い。とくに高齢者ではウォーキングに加え、身体を細目に動かすよう気を配る。
 一方、競技用スポーツや激しい運動(全力のランニングなど)は免疫力低下、筋の疲労、酸化ストレスなどさまざまなリスクがあるので注意する。
 筆者は、下記PDFに記載したように独自の運動を計画的に、楽しく、習慣化している。

2.栄養:筋の維持には、体重1kgにつき1日1g以上(筋量を増やす場合は1.2~1.5g)の蛋白質摂取が推奨され、同時にビタミン、ミネラル、糖質、脂質の5大栄養素をバランス良く摂取するのが基本です。また、酸化ストレスから心身を守るためにポリフェノール、ビタミン、そして牡蠣、レバー、海藻、ナッツ類などに多く含まれている抗酸化ミネラル*(セレン、亜鉛、銅、マンガン、鉄)を含むさまざまな食品摂取に心がけ、楽しく運動後のケアを行う。
*抗酸化ミネラルとは体内に発生した活性酸素を分解するスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)は亜鉛、銅、マンガン、グルタチオンペルオキシダーゼはセレン、カタラーゼは鉄を、各々構成元素として含むことから、これら必須元素の摂取が注目される。

3.休養:質の高い睡眠と入浴は心身のリフレッシュに有効です。筋線維は運動によって傷つくが、それを修復するには、十分な休息が必要です。アクチンとミオシンという筋フィラメントが修復されれば、より強い筋を得ることができる。(近藤雅雄、2026年5月9日掲載)
詳細は下記PDFを参照して下さい。

PDF:骨格筋運動ホルモン:マイオカイン

老人のつぶやき5.戦争や軍事活動によって破壊される地球

 人類の誕生以来、領土、資源、思想、宗教などといった多様な名目で、規模を変えながら綿々と続く争い。現在も、2020年12月24日、ロシアがウクライナを侵攻してから未だに戦争が続いている。そして、2024年から始まったイランとイスラエルの戦争、2026年には米国が参入しイスラエルと米国によるイラン攻撃米国のベネズエラ攻撃等々、ロシアと米国が関わる戦争に世界は混乱し、地球は悲鳴を上げている。
 国際秩序が崩壊しつつある現在、これら国際法で違法とされている戦争は、人命損失だけでなく、地球環境を破壊する行為であり、看過できない。その破壊は修復不可能であり、大量のエネルギーを消費し、土地、大気、海洋、森林を汚染し、気候・自然資源の悪化、生物多様性の減少など、甚大な被害をもたらす。このような不可逆的な環境破壊行為を許してはいけない。国際社会は地球環境を破壊するような戦争や軍事活動をできなくする新たなルールを作るべきです。 (近藤雅雄,2026年4月3日掲載)

戦争をなくしてみんなの地球を守ろう(作:近藤雅雄)

地球上には沢山の生き物が生活している
助け合いながら

この美しき地球は
人類だけのものではない
戦争は人類によって惹き起こされるが
どんな事情があれ、許されない

戦争は悪である
これを惹き起こす人間は最悪である

この世に表(陽)と裏(陰)があるように
平和を望む人と戦争を好む人がいる
しかし殆どの人は平和を望んでいる

みんなの力で
戦争しない国際ルールを作って
それを厳しく守れば
戦争を平和に変えることができる

地球は一人のもの、一国のものではない
地球はみんなのものだ
生き物たちすべての
みんなの地球だ

一人ひとりのいのちの尊さと
人を愛する心 感謝の心を持って
沢山の生き物が棲むこの美しい地球を
みんなの力で大切にしよう

世界の平和と地球の環境保全に貢献する
たくさんの仲間を増やそう

PDF:老人のつぶやき5

老人のつぶやき4.戦争と地球環境、世界の国際秩序は

 人類の持続した発展を願う上で、最も基本的で重要なことは、地球を大切にするこころを学ぶことです。そして、地球環境に負荷をかける生き方を改め、環境の改善・保全に全力で取組むことです。

 2020年12月8日、新型コロナウイルス(COVID-19)が中国武漢で発生して以来、南極大陸を除くすべての地域に瞬く間に広がりました。そして、日本では甚大な社会的、経済的不安を起こし、保健、医療、福祉、教育、食糧・食生活、地域社会、レジャー、仕事、働き方等々、国民生活に大きな影響を与えました。

 一方、世界では2022年2月24日のロシアのプーチン大統領によるウクライナ侵攻、2026年1月3日の米国のトランプ大統領によるベネズエラへの攻撃、国家元首(大統領)拘束、2026年3月3日イランへの攻撃と最高指導者の殺害、イラン・イスラエル戦争イスラエル・米国によるイラン攻撃ホルムズ海峡の封鎖、また、北朝鮮の核開発など、世界情勢が急速に変化し、国際秩序に混乱が生じはじめています。これらを解決するには新たな政治・経済・環境・安全・人権・保健・医療等に対する国際的な監視・評価・審判機構の設置など、国際秩序の健全化への取組が望まれます。
また、人類が誕生して以来、綿々と「戦争と環境破壊」が続いていますが、いずれは人類の生存と地球環境に何らかの不可逆的な影響が出てくるのではないかと不安です。国際社会は直ちに地球と人類の持続した発展を図るべく地球環境の改善・保持に取組むべきです。

 私たち人類は自国愛ファーストではなく、この美しい地球に感謝するとともに、この美しい地球を次代に引継ぐことを第一に考え行動すべきです。愛国教育も大事ですが、それ以上に地球を愛するこころを育てる教育の方がもっと大切と思います。

 国際的な紛争・戦争、侵略、地球環境の破壊、人権侵害、関税の一方的引上げなどが公然と行われている現代、これら人類の平和な生活への脅威に関わる問題、国際秩序の安定と地球環境の保全は国連、各国政府機関、および国際的なNGOによって協働して進められていますが、残念ながら軍事大国の大統領による影響を受け易く、活動が平和裏に進まないことがあります。このようなことがないよう、新たな「国際秩序と地球環境を守る組織」を構築し、すべての国が人類・地球の持続的発展と平和を目指した活動に取組むよう期待したい。この取組は世界で唯一の被爆国であり、東京大空襲、沖縄大惨劇を経験した日本が中心となって進めてほしいと思います。(近藤雅雄、2026年4月2日掲載)

老人のつぶやき3.平和で美しい日本の持続的発展を願う

 次の世代へ平和で美しい日本を引き継ぐことは、今を生きる私たち共通の願いであり、責任でもあります。自然の豊かさ、文化の深さ、そして何より人々の心が穏やかでいられる社会を、守り続けたいとの願いで、つぶやきました。子どもたちの未来が心配で、ついついネガティブ思考・愚痴が多くなります。

 「喜怒哀楽」といった4つの基本的な人間の感情において、悲しい時に涙するのは動物の中で人間だけであり、感情をコントロールして「前へ」向う上で、また人間の魂を支えていく上でとても大切なことです。例えば、悲しみを抱えた場合、泣くことによって悲しみを乗り越え「前へ」進むことができます。もし、泣かない人間が多くなった時、社会はどうなるのでしょうか。
 1941年6月、民俗学者の柳田国男が発表した「涕泣(ていきゅう)史談」に「最近の日本人は泣かなくなったように見える」とあります。この年の12月に真珠湾攻撃が発生し、米・英国との太平洋戦争に突入しました。そして現代、日本は円安、物価高騰、詐欺等犯罪の多様化、SNSによる誹謗中傷、外交問題等々、「怒り」が多く見られるようになりました。

 日本は、ロシア、中国、北朝鮮といった近隣の国々や同盟国である米国などの動向、また地震などの突発的大規模自然災害によって大きく変わることが推測されます。
 また、社会的にIT、汎用AI、生成AI、フィジカルAI、デジタル化や各種詐欺などが国民生活に与える影響が加速しています。これらIT,AIに関わる企業の国及び国民への影響は大きく、正しい方向へと歩むことができるようマスコミ及び国は監視・指導するよう願っています。その他、様々な問題が日本及び世界で起こっています。

 これら、現代社会が抱える諸問題に対して、日本の持続的発展を願い、様々な不安を取り除くよう国家・国民が総力を挙げて取組むことを願っています。多くの政治的問題は与党を中心に遂行されます。その責任は非常に重たいですが、それ以上にメディアや野党の責任も大きい。メディアや与党、野党がしっかり機能していれば、日本は国民の願う方向に進んでいく筈です。

 気になる噂について、「老人のつぶやき27項目」として下記PDFに挙げました。国はこれら産業・経済・農業・教育・人口・インフラ・防災・外交・医療・福祉・科学等に関わる諸課題に対して謙虚に総力を挙げて取組んでほしい。戦後、平和への思いを掲げた世界唯一の平和憲法第2章第9条を変えることなく、したたかに生きることも肝要かと思います。(近藤雅雄、2026年4月1日掲載)

PDF:老人のつぶやき27項目

老人のつぶやき2.いのちを大切に~生きるこころと感謝

 人は、この世に生まれてきたことに対して、「感謝のこころを持って生きる力、いのちを大切にするこころ、他者を思いやるこころといった人としての基礎を育む」。これが人間形成の基盤と成すこころの教育です。地球上の全人類が同じ思いであると嬉しいです。
 人を含め、遺伝子を持つ生命(細胞)は必ず死を迎えます。は生きることが出来なくなった状態です。したがって、生命(いのち)とは生きている状態を指します。
 その生命とは次代を生産し、育てること。そして、知識や技術を次代に引継ぐことです。
 生きるとは満たされること。日々何かに満たされれば、次(明日)に繋がります。その繰返しが生きる糧となります。私たちは感謝の気持ちを持ち、楽しい、美しい景色を見て人生を謳歌したいものです。近藤雅雄(2026年3月25日掲載)

生きるこころ

生きるこころとは
それは生きる希望、夢です
希望、夢を心に抱き、明日に向かって生きようとするこころです
1日でも長く生きたいと思うこころです

飼い主に可愛がられていた忠犬ハチ公は、朝晩渋谷駅まで送り迎えしました
しかし、職場で飼い主が脳出血で死んでしまいます
それを知らないハチは帰ってくるはずのない飼い主を毎日迎えに行きました
10年間、雨が降っても雪が降っても、何も食べなくても、駅に行きました
それは毎日の希望、期待、夢でした
しかし、願叶わずひっそりと亡くなってしまいました
悲しい話ですが、1日でも長く生きたいというこころを学びます

すべての生き物(動物)は1日でも長く生きたいのです
明日への希望、夢を心に抱き、生きたいのです
私の希望、夢は孫の成長を1日でも長く見続けたい
そして、家族の笑顔を1日でも長く見続けたい

生きるこころを育てるには
生きる力、感謝するこころ
いのちを大切にするこころ
他者を思いやるこころ
前向きなこころ
諦めないこころ
そして、生涯、学ぶこころを育むことが大切です

しかし、生きるこころを奪う人間
生きるこころを奪う権力はいりません

以上、PDFにしました。

PDF:生きるこころ

老人のつぶやき1.退職前・後および若年期と高齢期の変化

 2021年7月、2回目の新型コロナウイルスワクチン接種後、健診で血液がんが発見、5年生存率36~40%と告げられる。以降、仕事を退職し、終活に取組んでいます。

 退職前は講義、講演、論文書きなど、教育・研究者として毎日充実した人生でした。また、人、物、環境とすべてが良い方向に行き、戦争もなく幸せな時代でした。研究環境ではタイプライター、ワープロ、コンピュータ、またポケベルPHS、携帯電話、スマートフォンなどと目まぐるしい社会の変遷を経験しました。
 一方で、地球環境は公害に代表されるように、多くの問題を出しました。1967年6月、私が勤めた厚生省国立公衆衛生院では大気汚染、水質汚染、騒音などによる公害に係わる衛生に関する調査・研修・研究を目的に公害衛生学部が新設されました。しばらくして、わが国からは公害と言う言葉は殆ど無くなると同時に国立公衆衛生院の公害衛生学部は1972年7月に地域環境衛生学部と名称変更されましたが、その後も環境汚染の公衆衛生学的対策に関するさまざまな最先端の教育・研究が続けられました。
 ところが、地球規模的には途上国が先進国と同じように公害を出している現状がありますが、これは頂けません。公害は人類共通の課題として学習し、地球の持続した発展を願うべく再度出さないことが大切です。さらに、ロシア、米国、イスラエルなどが行っている戦争、北朝鮮などが行っている核実験や弾道ミサイルの試射、そして世界中で発生している森林火災などは公害の最たるもので、すべてを破壊します。地球の温暖化生物多様性の減少、海洋汚染、大気汚染、放射性物質の放出等々、絶対に肯定できるものではありません。直ちに止めてほしいものです。

 退職後は自分自身のこころとからだの養生と生命(いのち)を課題として研究していますが、日々緊張感が薄れてきます。75歳の後期高齢期を境として、聴力、視力、咀嚼・嚥下力、筋力の衰えを実感すると共に知力(思考・記憶)、行動力の衰えを自覚します。そこで、養生のためこれらを少しでも是正すべく、視力、聴力、咀嚼力、筋力、知力及び意識の向上が図られる方法を調査・研究し、栄養管理と共に視力や聴力など感覚力の矯正、筋肉維持や学習のトレーニングを毎日の仕事と位置付け、実行しています。その効果は少しずつ表れていることを自覚しますが、これがいつまで続くかは不明です。

 今年77歳、がん患者として残り僅かな命ですが、珈琲を飲んでいる時や勉強している時、家族の笑顔を見たり花や金魚など自然に触れる時、“幸せ”を実感すると共にいのちに感謝します。これが生きるこころとなって、明日への希望、夢、期待に繋がって行くのでしょう。そして、子どもや孫の未来が平和で幸せであることを願って、笑顔で逝きたいと思っています。人は生まれた直後は生理学上泣きますが、死ぬ直後は両親・家族、いのちに感謝しつつ笑って逝きたいものです。(近藤雅雄、2026年3月24日掲載)

教育回想14. 東京都市大学人間科学部「紀要」の発行と巻頭言

 昭和13(1938)年,東急電鉄創業者五島慶太氏は世田谷区の等々力に東横商業女学校を創設しました。昭和30(1955)年,学校法人五島育英会(以下,法人と略)が設立され,翌年に東横学園女子短期大学と校名変更されました。時代は変わり,平成21(2009)年4月には武蔵工業大学(工学部,知識工学部,環境学部)と統合,新たに人間科学部と都市生活学部が創設され,5学部からなる総合大学として東京都市大学が誕生しました。そして,令和4(2022)年4月,人間科学部は等々力キャンパスから世田谷キャンパスに移転しました。また,人間科学部は2023年度より児童学科から人間科学科と科名変更され,「児童学」と「人間総合科学」の2つのコースとなりました。

<  さて, 1965年に創刊された東横学園女子短期大学紀要は新たに東京都市大学人間科学部紀要として引き継がれました。この紀要への投稿原稿には必ず査読が入り,学術論文誌として審査したことを覚えています。どれも萌芽性・独創性が高く,優れた論文ばかりでした。大学は教育機関であると同時に研究機関でもあります。紀要は学部の顔・看板として研究活動や学問的な特色を示すと同時に教員の研究業績及び学部の評価対象物ともなります。総合大学となってから16年が過ぎましたが,紀要の内容はグレードアップし,成長・進化しています。益々の発展を期待しています。

 紀要は大学のホームページで読むことができます。第1号に巻頭言を書いた記憶がありますが,USBに原本がありましたので,以下のPDFに示しました。当時は執筆時間が無く校正もしていないので,読みにくいです。ほんの少し修正しました。(近藤雅雄、2025年12月1日掲載)
PDF:人間科学部紀要巻頭言

病気と治療10.わが国の医学および医療の問題を独自検証

問わず語り~いつまで続ける西洋医学単一医療

 明治7(1874)年、わが国の医師法と医療制度の根源を成す「医制」が発布されて以来、西洋医学を基礎とした体制が150年以上続いています。医師は患者に対して、診断・治療を理由に、各種検査や投薬、手術、放射線療法、食事療法などすべてを遂行でき、また、看護師、薬剤師、理学療法士などの医療従事者の職務を指示・管理できます。
 日本では専門医制度が発展し、資格を取得した医師による診療が行われています。大学病院など「特定機能病院」では極端に専門化し、高度医療の提供を開始しましたが、逆に専門領域以外の病気は診なくなりました。例えば、血液のがん患者が高血圧症を合併した場合は循環器の専門家に紹介します。肝機能の数値が高ければ肝臓の専門家に回します。このように患者は院内の他科に紹介されます。そして、その都度検査や薬が処方されます。日本の医療の基本は検査と薬物治療です。専門及び総合病院にはからだ全体を診る医師(総合診療医)は少ないので、患者は専門の各科または他の病院へ移動します。
 そして、やがて患者は各診療科の専門医から処方された多くの薬の副作用とその複合作用でどんどん衰弱、がんは転移、さらに、さまざまな検査(とくにCTやレントゲン検査などによる酸化ストレス)と心身疲弊で免疫力が低下、全身のバランス、生体リズム・恒常性が崩れた段階で手遅れ、手の施しようがなく、両手を挙げる如く、お手上げとなりかねません。しかし、総合診療医制など、現代医療が抱えている多くの問題を検証し、抜本的な改革をすれば手遅れにならず、手当てできるようになるでしょう。
 米国では1990年を境にがん死亡率は低下しています。そして、さまざまな医療改革(代替・補完療法(CAM)や食事療法を取入れ、1991年、日本の厚生労働省に当たる行政機関に代替医療局(現在は公衆衛生局)を設置し、1998年には国立補完代替医療センター(NCCAM)を開設した)によって、西洋医学に伝統医学、代替・補完療法などを加えた統合医療が行われています。しかし日本では公衆衛生の部署すら無く、がんの死亡率は今も増え続けています。
 そこで、日本医療の進化を図るために、現代医学が抱えている多くの問題の中から抜本的な改革が必要と思われる以下の4章,15項目について独自検証しました。

 第1章.代替・補完医療と統合医療の進展(①いつまで続ける医師主体の医療,②西洋医学一辺倒の日本の医療,③米国が国立補完代替医療研究センター開設,④薬物依存治療偏重の是非,⑤医師の診察のあり方を問う,⑥大学医学部のカリキュラムの見直し,⑦がん死亡率が減少しない)。第2章.総合診療の拡充を期待(①総合診療を行う医師が少ない,②何故、総合診療医が育たない)。第3章.我が国の医療進化を期待(①医療機関のあり方,②医師の数と家庭医が足りない,③厚生労働省医政局への期待)。第4章.その他の諸問題(①永遠と続く安楽死問題,②臓器移植の停滞,③医師の偏在対策)
 内容は以下のPDFを参照して下さい。(近藤雅雄、2025年10月23日掲載、2025年11月11日更新)
PDF:日本の医療を独自検証2

病気と治療9.がん診療連携拠点病院の相談支援強化に期待

 某有名私立大学医学部附属病院(大学病院)には「がん相談支援センター(以下、センターと略)」があり、「がんに関する治療や検査、療養と就労、教育との両立についてなど、さまざまな心配事や不安についてご相談をお受けします」とあります。そこで、早速相談してみました。
 内容は、自宅療養中に約1週間発熱が続き、外来に電話したが医師がいないため、センターに電話をしました。相談内容は、①治療法について主治医以外の医師の意見を聞きたい、②悪性リンパ腫の患者会の存在、③現在の病状の対応について、の3点です。
 電話に出たのは看護師で、医師はいないという。①については、「病院内で他の医師の意見を聞くことはできない。他の病院に行けばよい」ということでした。②については患者会はなく、センターではその実態はわからないという。また、③の現在の病状について、発熱に対する対応については全く相手にされませんでした。外来に電話しても担当の医師がいない。また、主治医とは連絡ができないシステムになっているため、センターに相談したのですが、話を聞いてもらえず、精神的苦痛だけが残りました。がん患者にとっては全く理解できない内容でした。

「がん相談支援センター」への期待
 厚生労働省では「がん診療連携拠点病院等における相談支援について」センターの業務を12項目挙げています。大学病院にはこの項目を基本とした業務の強化を期待します。
 センターが患者のために機能していると、患者は安心して在宅療養できます。「がん最前線」の情報を持つ大学病院のセンターが中心となって、患者との意思の疎通を十分に行い、患者からアンケートを取り、統計学的に患者の意見を集約し、チーム医療を引っ張っていくよう期待します。そのためにも組織と業務の改革を行ってほしい。例えば、センター長は病院長の下、副院長として教授相当の人材を配置し、医師・看護師・薬剤師などがんに関わる医療関係者を統括し、患者のための相談支援機能を持った組織にする。さらに医師・看護師などの治療を評価・監督できる機能を持つよう期待します。
 また、特定機能病院日本医療機能評価機構の認定を受けた大学病院ではがん患者のQOL向上と死亡率の減少に繋がるよう日常的な自己点検・評価と第三者による点検・評価、並びに病院間の情報の共有を行い、同時にチーム医療に関わるスタッフの卒後研修ならびにリカレント教育などを徹底して取組んでほしい。(近藤雅雄、2025年10月15日掲載)

病気と治療8.総合病院における「チーム医療」推進を期待

 厚生労働省は「チーム医療の推進について(案)」を7つ挙げています。その内の一つ、『チーム医療とは、「医療に従事する多種多様な医療スタッフが、各々の高い専門性を前提に、目的と情報を共有し、業務を分担しつつも互いに連携・補完し合い、患者の状況に的確に対応した医療を提供すること」と一般的に理解されている。』とあります。しかし、私が3度の入院中で経験した現状とは異なっていました。

 この健康・栄養資料室「病気と治療7」で述べたように、私が肺炎で大学病院(特定機能病院医療機能評価機構認定病院)の血液内科に入院した時は主治医や担当医の記載がないまま、6人の病棟医師(内2人が研修医)によって治療が行われました。治療を計画、実行する責任者は誰だか不明です。そして、医師を中心として看護師、薬剤師、理学療法士が治療に関わりましたが、その連携はありませんでした。まず、医師について、末梢神経障害を訴えましたが、残念ながら聞きとめる医師はいませんでした。医師は患者の言葉(ナラティブ)を聞き、治療に当たるのですが、全く基本的なことが行われていないことに驚きです。また、薬の副作用を何度も訴えましたが、担当医師、看護師は対応せず、当直の医師(内分泌内科)が対応しました。
 薬剤師については、持病薬を病室に持って来ましたが、副作用との関係を聞いても説明できず、また薬の複合的副作用について説明できる薬剤師はいませんでした。薬を持ってきただけで薬剤管理指導料を取る。また、理学療法士が勝手に病室に3回来ましたが、雑談しただけで、リハビリ指導料を取る。さらに看護師については本資料室「病気と治療5,7」に示したようにチーム医療とは言えない作業でした。これでは、患者の心身をさらに傷つけ、そして高額の医療費による生活の困窮など、明らかな医療過誤です。残念ながら、これが大学病院に限らず、多くの病院の現実と思われます。

チーム医療への期待
 病院には患者の立場にたったこころの医療(他者理解、仁愛)を期待します。チーム医療は、安心・安全な高度医療を提供するため、主治医を中心とし、医師、看護師、薬剤師、理学療法士、管理栄養士など、さまざまな専門職がそれぞれの専門性を活かし、情報や目的、治療法を共有しながら連携を密にし、患者一人ひとりに最適な医療を提供することです。
 「チーム医療」によって、患者の心理的・社会的な側面を含めた多面的な支援が可能となり、患者のQOL向上と自然治癒力の向上が期待できます。そのためのリカレント教育(または研修)が必要ですが、患者が安心して、より良い療養生活が送れるようチェック体制の強化、医療環境の充実、ガバナンス強化、情報の共有・連携など、チーム医療の推進、総合的な医療体制の構築・強化を期待します。(近藤雅雄、2025年10月15日掲載)

著書26.絆:明治,大正,昭和,平成,令和,そして未来へ

「夢を紡ぐ,夢を繋ぐ」、夢の翼
 子どもの頃は、いつも夢で溢れ、ちょっとした不思議なもの・些細なことでも目を見張る感性があり(Sense of wonder)、明日を夢見ていた。

 少年期から青春時代にかけては一気に世界が広がり、将来への望みが多くなり、多様な夢を見る夢多き時代でした。しかし、夢の多くが夢で終わり、消えていった。
 老人になると、未来への夢を見なくなり塞ぎがちになるが、夢に生きる老人は新鮮に光輝いている。明日を夢見るこころを忘れてはならない。

 そして、いきもの大好き家族の夢を紡ぎ、夢を繋ぐことが大切であることを知る。
 夢は、こころとからだの健康と繋がっている。健康な人はこころもからだも生き生きとし、次々と夢を描いてはそれを叶えていく。夢は人生だ。

 幸福と平和の夢の実現にはただ憧れているだけではなく、強い意志とその翼が必要だ。
 夢の翼は、個性であり、知の創造であり、知の結集である。そして、ロマンであり、情熱であり、未来へ飛翔する不滅の力であり、真の勇気であり、愛であり、感謝である。世界の人々が手をつなぎ、平和な多様性のある地球社会がやってくることを夢見る。

 夢は人生であり、計画だ。皆が光り輝く夢を見て、教育(今日行くところがある)と教養(今日用事がある)を高め、皆がそれぞれの人生を楽しく前向きに歩んでいく。
 そんな「夢を紡ぐ、夢を繋ぐ」“”を大切にしたい。

  “絆”「わが家系の回想」(明治,大正,昭和,平成,令和,そして未来へ)
 本書(絆:近藤雅雄編,5人兄弟執筆,A4,92ページ,2021年4月1日出版)は、筆者が生まれ育った「近藤家」の未来への資料として纏めました。執筆した理由は、私たちは一人で生まれ、育ったのではなく、多くの人との関わり、絆があって誕生し、育つということを知って欲しい。そして、自分のルーツを知り、未来に向かって歩む力を身に付けるために。
 内容は明治生まれの父と母の生涯、その後を時代ごとに回想しました。父母は名古屋で生まれ、育ち、成長、やがて結婚し、東京で5人の子どもが誕生するまでの誕生期(1904~1949年)、5人の子どもが結婚し、子どもを授かるまでの黎明期(1950~1981年)、父母との永遠の別れと同時に5人の兄弟が成長し、新たな時代への転換となる創生期(1982~1997年)、5人兄弟の子どもが成長、孫が誕生し、次代への引継ぎと「千代の会」結成並びにその発展期(1998~2020年)、そして5人の兄弟すべてが高齢者となると同時に孫が成長、未来への扉が開き、持続可能な時代へと発展・移行を期する持続期(2021年~)として分けて整理しました。
 本書が10年後、20年後、50年後も引き継がれ、近藤家のすべての人が高い志、夢をもって新たな時代を担うべく、大きく成長し、社会へ貢献していって欲しいとの思いから纏めました。そして、両親の血を受継ぐすべての人が「いのちの尊さと感謝の気持ちを持って、人間として正しい判断力を身に付け、健康で質の高い生活を維持し、健康寿命の延伸を図って欲しいと願っています。また、後継者にはどのような遺伝子を受継いでいるかを知る貴重な資料ともなるでしょう。
 そして、地球上のすべての人が光輝く遺伝子をもって生まれてくるのです。その遺伝子が争いごとではなく、正しく教育・醸成され、人類が差別・格差なく、平和で、持続した国際社会の発展と持続した地球環境の保全に貢献することを願っています。(近藤雅雄、2025年9月23日掲載)

教育回想12. 東京都市大学付属小学校、平成24年度卒業式祝辞

 2009年4月、学校法人五島育英会は大学から幼稚園までの各学校に「東京都市大学(略称:都市大)」の共通名称を冠し、「東京都市大学グループ」を結成しました。
 法人のホームページには「都市大グループの使命は、優れた感性と品性を備え、世界から待望される有為な人材を育てあげていくこと」とあります。そして、「グループのスケールメリットを生かしながら、持続可能な社会発展に貢献し、未来を見すえた国際性に富んだ人材を輩出していきます」とあります。
 グループには東京都市大学、東京都市大学等々力中学校・高等学校、東京都市大学付属中学校・付属高等学校、東京都市大学塩尻高等学校、東京都市大学付属小学校、東京都市大学二子幼稚園、そして東急自動車学校があります。私は東京都市大学の人間科学部学教員としてこのグループ誕生を目にし、運営・教育・研究を2015年まで携わりました。大変すばらしい大学であり、グループでした。
 在職中に、法人より東京都世田谷区成城にある東京都市大学付属小学校の平成24年度卒業式の祝辞を依頼され、大学学長であり都市大グループの総長の代行として挨拶させていただく機会を得ました。6年間頑張った12歳の卒業式です。出来る限り心に残る祝辞となるよう配慮しました。同時に、同じ生徒数以上の保護者も同席するということで、両者に配慮した祝辞を考えましたが、結局簡単な祝辞に終わってしまいました。内容はPDFに示しましたのでご参照ください。

 祝辞を終えて、校長室で談話していた時に、小学校の職員から卒業生の親が私に挨拶をしたいと言っているというので、お会いしました。その人は優等生の父親で、某医科大学病院の医師でした。以前に医師の患者が指定難病ポルフィリン症の疑いということで検査を依頼され、診断を確定し、報告したことがあったのです。
 偶然のことでしたが、医師及びご息女は立派なご家庭で、私は医師及び付属小学校とのご縁に感謝すると共に、患者さんの容態お聞きし、元気でいるということで二重に嬉しかった思い出があります。
 この卒業式は、今から12年前のことなので、現在、ご息女は24歳頃と推察します。おそらく、大学院または既に社会人として頑張っていることでしょう。
 また、私にとってこの卒業式は、実にさわやかな式で、感謝するひと時でした。(近藤雅雄、2025年9月23日掲載)
  PDF:東京都市大学付属小学校卒業式祝辞   

ミネラルの健康・栄養:生命維持に必須な元素とその過不足

 生命維持に必須なミネラルの基本的概念と生理的意義を理解することを目的として、健康・栄養と食生活および欠乏や過剰などについて纏めました(下記PDF参照)。

生命活動の維持に必須な五大栄養素:糖質,脂質,蛋白質,ビタミン,ミネラル
①熱量素(エネルギー物質アデノシン三リン酸(ATP)の生産材料):糖質,脂質,蛋白質
②構成素(細胞や骨など体を構成する材料):蛋白質,脂質,ミネラル
③調節素(生体物質の代謝調節を行う材料):ビタミン,ミネラル

 生命を維持するためには蛋白質、糖質、脂質、ビタミン、ミネラルの5大栄養素が不可欠です。ミネラルは無機質ですが、それ以外は有機質です。ミネラルについては食塩の摂りすぎや鉄の不足、更年期になると骨粗鬆症とカルシウムが話題となりますが、その他の必須ミネラルの過不足についてはあまり注目されていません。

 われわれは、健常者170例(年齢30~70歳代、男性62例、女性108例)の中・高齢者の血液中の微量元素を誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)にて分析した結果、男性ではクロム(Cr)、マンガン(Mn)、セレン(Se)、女性では亜鉛(Zn)、銅(Cu)、Cr、Mn、ニッケル(Ni)といった生体機能調節に重要な微量元素が加齢とともに減少し、体内微量元素の分布に偏りが生じていることを認めました。Seはグルタチオンペルオキシダーゼ(GPx)、Cu、Mn、Znはスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)の各々抗酸化酵素の構成元素であり、生理活性発現上必須の成分ですから、これら微量元素濃度の低下は中・高齢者の免疫能および抗酸化能低下の原因となるため、老化が促進されます。
 また、血中元素と循環・神経・肝および造血機能などの障害による自覚症状が1つまたは複数持つ人との関係では、とくにZn、Cu、Se、Mn量の不足に有意な相関関係を認めました(2025年3月25日掲載の「高齢者のQOL向上と免疫能を高める日本型食生活の解析」参照)。したがってこれらの成分を多く含む食品を持続的に摂取することによって、これら自覚症状の改善が期待されます。
 さらに、日常的な運動やスポーツ活動は大量の酸素・エネルギー消費、発汗などによってミネラルや抗酸化物質の必要性が高まります。とくに、スポーツは筋疲労や精神的ストレスなどによって発生する酸化ストレスが多く、そのため、前述した各種ミネラルおよびビタミンA、C、E、B群やポリフェノールなどを含む抗酸化食品および免疫増強食品を積極的に摂取した方が良いでしょう。
 健康を維持する上でミネラルの重要性は明白ですが、潜在的に減少している人が多いことが分かりました。しかし、測定は殆どされず、ミネラルの一般検査については今後の課題です。(近藤雅雄、2025年8月5日掲載)
PDF:ミネラルの栄養と健康

PDFの内容:
1.ミネラルの分類と栄養学的機能
2.硬組織とミネラル、食事摂取基準で定められている元素の作用
3.生体機能の調節作用
4.酵素反応の賦活作用
5.鉄代謝と栄養
6.ミネラルの生物学的利用度
7.水・電解質の栄養学的意義
8.参考文献
9.各種ミネラルの作用と摂取異常
10.主な元素の発見歴史と名前の由来
   

こころとからだの健康(20) 言葉はこころなり~伝えたい言葉

 国際社会は未だに悲惨な戦争と地球環境の破壊を繰り返しています。その原因の一つとして人間教育の貧困が挙げられます。
 我が国は、「新しい時代を拓く心を育てるために」次世代を育てる心を失う危機、として1998年、中央教育審議会が中間報告、第1章 未来に向けてもう一度我々の足元を見直そう、第2章 もう一度家庭を見直そう、第3章 地域社会の力を生かそう、第4章 心を育てる場として学校を見直そうの4項目からなる答申を出しました。
 戦後80年、日本は自由で民主的な国家として、人々が豊かで安心して暮らせる社会を形成し、世界の平和に貢献しようと努力してきました。そして、教育の重要性を掲げ、幼児期、学童期に人間形成の基盤をなすこころの教育として、「さまざまな体験や体感を通して、感謝のこころを持って、生きる力、いのちを大切にするこころ、他者を思いやるこころといった、人としての基礎を育む」ことを人間教育の基本として学んでいる。因みに、日本は世界の平和指数(治安・安全性)ランキングでは世界163か国中17位(2024年)でした。
 ここでは、私の40年以上にわたる医学・生命科学に関わる教育・研究活動で経験したこころの教育において、学んだことを「次代に伝えたい言葉」として①言葉は人間の原点である、②言葉はこころとからだを健康にする最大の栄養素、③次代に伝えたい言葉、④私の好きな言葉、⑤災害時の言葉と防災、として添付のPDFに綴りました。この中に、1つでもこころに響くものがあれば嬉しいです。(近藤雅雄、2025年7月27日掲載)

こころは言葉によってコロコロ変わるから“こころ”と言う
言葉は人間の原点であり, 人を動かし、国を動かす
言葉はこころとからだを健康にする最大の栄養素である


言葉は人間社会の原点である
 言葉を話すのは人間だけである。言葉は人類の発展に大きく貢献し、書物となり永遠と続く。そして、言葉は人を動かし、国を動かす。言葉には力がある。したがって、地球の平和や環境は言葉によって大いに影響を受ける。言葉はこころと連動している。
 すなわち、こころは言葉の影響を最も受けやすく、威圧的な言葉、汚い言葉、人の悪口、否定的な言葉を使うのを止め、笑顔で、プラスの言葉を口にしていけば、自分も相手もこころがとても良い状態に安定していき、自分のおかれた状況がたとえどんな状態であっても、次第に好転していくと信じることができる。言葉には魂がある(言霊)
 一つしかないいのちであれば、人生を感謝と喜びに満ち、明るく、おおらかに「前へ」プラス思考で生きる。同様に、一つしかない地球であれば、地球に住む国々が仲良く、感謝と喜びに満ち、地球環境をより良くして行く。このような社会を望んでいます。(2025年7月27日掲載)
PDF:伝えたい言葉

研究回想3.研究の道しるべ、持続した発見と社会貢献

 教育・研究者として、その業績数は学術論文、著書、依頼論文、学術報告者、国際会議講演、国内学術会議講演、招待講演、特別講演、教育講演、特許、競争的研究費の獲得、学位(学士、修士、博士)研究・論文指導、民間企業研究指導、国家及び地方公務員・留学生への教育・研究指導、新聞・雑誌・報道・テレビ・映画等マスメディアへの出演・執筆依頼、教材など、公開された印刷物などは全部で1,500件を超える。
 学術論文の内、査読付きが238件、その内訳は、英文90件、邦文148件、国際会議論文63件、論文の国際的価値として総インパクトファクター 250以上、引用件数は国内外にておそらく5,000論文前後に至る。査読付きの学術論文は投稿雑誌の編集委員会にて、必ず2名以上の専門家による審査が入り、オリジナリティがあるかどうか、原著論文として適切かどうかなど、厳しく審査される。その結果、reject(却下)か、accept(許可)か、または修正すれば許可する(acceptable、条件付許可)の3つのどれかの判定が著者に送られてくる。したがって、公開された査読付き論文はすべてオリジナリティがある。主な研究成果をPDFに示しました。

 学生時代に立てた目標は30歳までに自分の道を見つけることでした。そこで、猛烈に仕事をして、30歳時までに「骨髄赤芽球細胞内からδ-アミノレブリン酸(ALA)脱水酵素を特異的に阻害するインヒビターを発見」、「鉛中毒時の酵素異常の発見とその機序の解明」、そして「晩発性皮膚ポルフィリン症の酵素異常の発見」といった世界で初めてを3つ経験しました。いずれも日々の実験の積み重ねから見出した、まったくの偶然の発見でしたが、これが研究者としての自信につながり、何の抵抗もなく、自然と研究者の道を歩むこととなりました。

 新しき事を見出すということはonly oneになること、number oneではなくonly one にこだわりました。その一つとして、私が経験したのは最も基本的な測定(分析)技術の開発でした。他の研究者が開発した測定法を基本に戻って再検討するとうまくいかない事があることを見出しました。それは、鉛中毒の生体影響の指標として用いられてきたALA脱水酵素活性の測定法は1955年に開発されて以来、現代まで何の疑問・疑いを持たず世界中の研究者によって利用されてきました。その方法を基本に戻って測定し直すと新たな問題が沢山出てきた。そこで、測定法を新たに開発し、実験するとこれまでの定説と異なった新たな発見が次々と成された。この内容については、昔「生化学若い研究者の会」で特別講演を行い、若手研究者の興味を誘いました。

 私は、事を成すにはまず基本に戻って十分に準備をすることが大切で、これが新たな発見に繋がることが多いことを経験しました。気が付けば1,500件以上の業績を出したことは感慨深いことです。21歳時からエネルギーを教育・研究と論文執筆に最大限投入し、1日12時間以上様々な学びの好奇心を持って基礎から応用研究を行なってきました。76歳となった今でも、この「健康・栄養資料室」に論文を書き続けています。学ぶことに最大の価値を置き、新たなonly oneのモノ創りを生涯の仕事として位置付けた自分の人生であり、社会への貢献です。

 また、社会貢献の立ち場からは、これまでに学術研究会と学会の創設と運営、学術雑誌の創設と運営、大学新学部の立ち上げ・運営・教育、医療系専門学校の改革・運営・教育、難病の患者会の創設と運営、日本で初めての指定難病制度の立ち上げに関わることができたことは望外の喜びです。(近藤雅雄、2025年7月18日掲載)

PDF:研究の道しるべ、公開された主な研究成果

研究回想2.ポルフィリン研究会の創設と学術雑誌の創刊

 1980年、研究者としてスタートした「生化学若い研究者の会」の夏の学校にて、分科会「ヘムの生合成とその代謝調節」のオーガナイザーを行い、その内容を学術報告書として纏めました。その時に、将来ポルフィリンに関する研究会並びに学術専門雑誌を創ることを夢見ましたが、約10年後、夢が叶えられました。この内容については2025年5月21日掲載の「研究回想」と一部重複しますが、ここでは創設の「思い」、規約や組織、患者会との関わりなどを加筆しました。(下記PDF参照)

1.ポルフィリン研究会創設の思いと経緯
 1970年代、衛生学領域では低濃度鉛曝露によって赤血球ポルフィリン代謝の2番目の酵素δ-アミノレブリン酸脱水酵素(ALAD)活性が鋭敏に減少することから、鉛の生体指標として注目されていました。そこで、順天堂大学医学部衛生学教室千葉百子先生、東京労災病院坂井公先生などと勉強会を発足しました。そして、1986年12月13日に鉛作業者の職業検診時における鉛の曝露指標として赤血球ALAD活性を候補の一つに取り上げ、測定法の検討やその意義について、デ-タの収集や意見交換を行う目的でALAD会が発足、その後、ALAD研究会となりました。
 さらに、聖マリアンナ医科大学衛生学教室の工藤吉郎教授、千葉大学医学部衛生学教室平野英男助教授、大道正義講師、明治薬科大学梶原正宏教授等が加わり、ALADだけでなくヘム生合成経路およびその代謝全般に広がり、国立公衆衛生院の浦田郡平先生を代表世話人としてポルフィリン・ヘム研究会、ALAD-ポルフィリン研究会と名前が変わり、1988年7月16日に漸く「ポルフィリン研究会」として定着しました。そして、1991年12月に研究会が全国組織になるまで、順天堂大学、公衆衛生院、聖マリアンナ医科大学で合計14回、研究会を開催しました。研究会は毎回、報告書を刊行すると共に、梶原先生が赤血球プロトポルフィリン標準物質を作成し、順天堂大学、東京労災病院、聖マリアンナ医科大学、そして国立公衆衛生院との4施設共同研究によって鉛作業者の検診に重要な測定法の標準化を行い、発表しました(産業医学34(3):236-242,1992)。
 これまでに、ポルフィリンに関連する研究者は医学、薬学、工学、理学、農学、環境学などを専門とする分野と多く、これら他分野の専門家が一つの土俵の上で議論する機会はありませんでした。医学に限っても、血液学、皮膚科学、肝臓学・消化器学、小児科学、神経学、衛生学、病理学、救急医学、臨床代謝学、臨床検査学、診断学など多分野でそれぞれ独自の研究が成されていました。そこで、これら専門分野の境界を取り除き、ポルフィリンという共通物質で議論することからいろいろな研究の連鎖・進展が得られると考え、規約を作成し、全国組織として参加を公表しました。その結果、全国から産官学の研究者が数百名結集し、1991年12月14日にわが国で初めてポルフィリンという化学物質を基に多分野の専門家からなる学術研究組織「ポルフィリン研究会」が創設されました。
 その成果の一つとして、多分野の研究者に分担執筆をお願いし、研究会編集による成書、遺伝病・がん・工学応用などへの展開として「ポルフィリン・ヘムの生命科学」を(株)東京化学同人から出版しました(現代化学増刊27、1995年5月10発行) (下写真)。

2.ポルフィリン誌の創刊
 研究会発行の学術雑誌「ポルフィリン, Porphyrins」第1号を1992年7月25日に創刊、これを季刊定期刊行物として2011年、第19巻「Porphyrins」まで発行されました。筆者が出版に関わったのは第14巻までで、第15巻からは東京工業大学大学院大倉研究室内に事務局が移動しました。また、2012年からは組織が変わり、「ALA-Porphyrin Science」として第1巻が刊行され、現在に至っています。(近藤雅雄、2025年6月8日掲載)

PDF:ポルフィリン研究会の創設と研究会誌の創刊
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研究回想1.私の人生を懸けたポルフィリン症研究への思い

概 要
 人生にて、興味を持ち続けた研究テーマは、①生物の根源物質ポルフィリン・ヘムの生合成調節機序に関する研究、②ライフステージにおける栄養素の研究、③環境因子の生体影響およびその指標作成に関する研究、④再生医学に関する研究、そして⑤自然・地球環境に関する研究の5テーマでした。すなわち、人間が生きて行く上で不可欠な「保健」,「医療」,「環境」に関する研究を常に注目してきました。
 このうち、①のポルフィリン代謝(ヘム生合成)の調節機序に関する研究を始めたのは学生時代の21歳、1970年です。当時、ポルフィリンの医学およびポルフィリン症研究は散発的な症例報告はあるものの、臨床統計や疫学データがなく、診断のための検査法、診断基準、発症機序、治療法も未確立でした。しかも希少疾患ということで、医療従事者の間でもほとんど知られていない病気でした。
 1980年代、ポルフィリン症の発症および再発の防止、患者のQOL向上と健康寿命の延伸を期して、患者の会「全国ポルフィリン代謝異常症患者の会(さくら友の会)」や学術研究組織「ポルフィリン研究会」を創設しました。研究会では、ポルフィリンに関する研究成果を学術研究論文誌「ポルフィリン,Porphyrins」(国会図書館寄贈)を季刊定期発行雑誌として刊行しました。
 そして、本格的に診断法の開発、発症機序解明などの一連の研究活動を行い、1990年代から2000年までには各病型の発症機序、鑑別確定診断法、診断基準、臨床統計などの研究をほぼ完成させました。
 そして、2013年には患者会協力のもと、急性ポルフィリン症治療薬の未承認薬「ヘミン製剤」の認可を得、保険適用となり、急性ポルフィリン症の治療の道が広がりました。さらに、2015年、指定難病制度が法律として新たに立ち上がると同時に、ポルフィリン症が指定難病として承認されました。厚生労働省元職員として嬉しく思うと同時にポルフィリン症に対する思いを叶えました。
 ここでは、「ポルフィリン症研究への思い」として以下のPDFにまとめました。(近藤雅雄、2025年5月20日掲載)
PDF:ポルフィリン症研究への思い