東京都市大学人間科学部の平成26年度入学式父母挨拶

 今日は孫が通う中学校の入学式です。
 漸く暖かくなり、桜満開で、まさに入学式には良い天候が続きます。そこで、これまでの入学式の挨拶の中で、忘れられない祝辞は多くありますが、その中から筆者の大学勤務の最期となった平成26年度の東京都市大学の入学式で人間科学部の父母への挨拶(以下のPDF参照)をあげました。
 学部長として満期の6年間、学部の運営・教育・研究業務を行い、中でも学部の改革として新学科及び大学院修士課程の設置構想案、さらに大学の組織・構造改革の提案など、いろいろな改革に向けた活動を行ない、大学及び法人組織への働きがけしたのを覚えています。
 それ以外に、社会的貢献として、難病患者の市民権を得る行動、難病制度の法改正を目指して国会議員及び厚生労働省の要職への陳情や面接、そして議員連盟を作って難病の現状を広く紹介すると同時に全国署名活動を行い60万人以上の署名を集め、厚生労働大臣に大臣室にて手渡したこと。その結果、新たな指定難病制度の法制化を実現することできたことは、大きな成果として、心の中に深く刻まれております。大変忙しい定年前の最後の年でしたが、大学を軸としたこれらの活動が大変充実していたことは幸せでした。(写真は都市大学近藤研究室にて。近藤雅雄、2025年4月8日掲載)
PDF:父母挨拶

「病気と治療1~7」のまとめ:病院と医師の質の向上を願う

 「病気と治療」の連載では望ましくない治療体験を7回に亘って掲載した。
 第1回目の原稿「病気と治療1.脊髄強打による圧迫骨折等脊髄損傷の治療経験」で、筆者は「多くの病院、医師は社会・人間に役立つ医療を提供しているが、一部の病院あるいは一部の医師に不適切な態度・技術‣知識・運営が見られることがある。患者は命を預ける弱者であり、病院、医師に従うしかない。病院、医師の社会に対する責任は重い。」と記載した。

 これまでに約500名の全国の病院医師と、共同研究者として論文や医学会での発表を行なったが、中には臨床研究にまったく関わらなかった名前だけの医師、患者の組織,血液や尿などの検体を採取しただけの医師等、研究への関わり方はさまざまであった。しかし、一緒に議論して研究した医師や共著論文を執筆した医師は「研究の質の向上は治療・教育の質の向上を担保する」、真に優秀な医師であった。
 医師には研究するこころを持っている医師とそうでない医師がいる。研究するこころを持った医師は向上心があり、その治療は優秀なのが多い。研究するこころを持っていない医師には患者に寄り添う医師と寄り添わない医師がいる。患者に寄り添う医師には仁愛のこころがある人が多い。問題は研究するこころを持たず、患者に寄り添わない医師が意外に多いことである。
 医学部に入学した医師の偏差値は高いが、「研究能力や仁愛のこころ」といった面では偏差値は無関係である。近年、研究できない(しない)医師があまりにも多くなった。医学部の医学教育では、医師としての道徳教育を重視してほしい。最高学府である大学医学部の附属病院の医師は同時に医学研究者でもあることを肝に銘ずるべきである。
 こころが病んでいる患者に対する病気の治療には多くの患者の物語があり、そのこころを少しずつ和らいでいくことによって患者の自然治癒力が高まり、病気の治療・回復に向かうことが多い。まず、患者と多く接することが第一に必要なことあって、病気の治療の基本である。
 この資料室で「病気と治療」を書いた理由は、病院医師の治療に対する意識の向上と自己点検・評価並びに必要な改善・改革を行い、病院および医師に望ましくない行為が起こらないような仕組みを作ってほしいという思いからである。特に特定機能病院日本医療機能評価機構の認定を受けた病院では日常的な自己点検・評価と第三者による点検・評価が必要であると思う。以下に、医療従事者に求められる言葉(こころ)と態度を挙げた。

医療従事者に求められる言葉と態度、12の習慣(近藤)

1.医療は経営に重きを置くのではなく、患者に寄り添った優れた治療を優先する
2.保健・医療・福祉の基本は布施行であり、高い志と知・技・心・態が求められる。
3.敬愛の精神を持って、常に謙虚で自己を厳しく律する。言葉の使い方を大切にする。
4.医療従事者、とくに医師の言葉は患者の免疫力・治癒力、さらに生死に大きく影響する。
5.成功者は自分のためではなく、患者のためになることを第一に考える(他者理解)。
6.患者に「治る」「治してあげる」という断定的な言葉を言ってはいけない。治るのは患者の治癒力による。
7.患者に寄り添い、患者の身体に聴診器や手を当て、病気の全体を総合的に判断する。
8.患者に嘘を言ってはいけない。知ったかぶりをしない。わからないことはその場で調べる。
9.患者に治療を行う前には必ず説明し、同意を得るのが基本。また、EBMを順守するのが基本。
10.症例から学ばぬ者は過ちを繰り返す。
11.研究の質向上は治療・教育の質の向上を担保する。
12.臨床研究の課題は身近に多く存在する。常に「研究するこころ」と「患者に感謝するこころ」を持つことを忘れない。
(近藤雅雄、2025年4月6日掲載)

「前へ」の詩:生きるために人生の目的をしっかり持つ

 1949年、団塊世代の最後に生まれ、戦後の急速な経済発展を経験し、小・中・高、大学時代、そして社会人として、仕事と仲間と環境に恵まれ生きてきた。平和な時代であった。
 時代が変わったのは2020年の「パンデミック」、そして、2022年の「ロシアによるウクライナ侵攻」、たった数年間で平和であった時代が大きく変わろうとしていた。
 古希を過ぎ75歳、終の人生を迎えるにあたって、過去の多くの出来事を記録し、後世に遺すことは、次代に生きる人に役立つかもしれない。また、生きるヒントになるかもしれない。しかし、「パンデミックと戦争」そして「ITやAIの急速な進展」による世界への影響、そして日本では「南海トラフ首都直下地震富士山の噴火など」の災害予測と「台湾有事」「関税問題」などと時代は逆行し、次代がどのようになるか想像がつかない方向へと突入している。

 人は誰にでも死は訪れる。死を考えた時、大切な言葉を一つ挙げるならば、それは「前へ」であった。死に行く者も、生きていればさまざまな喜怒哀楽、ストレスが日々変化して訪れる。それをうまくコントロールし、「前へ」突進む努力をする。そのためにも人生の目的を持って努力する。そうすれば、新しい景色を見ることができるであろう。そして、その景色が人類・人間社会にとって本当に幸せなものであるかもしれない。

 人間は、前向きで、素直に社会に貢献する謙虚な姿勢を持ち続けることが大切だ。それを行動に移し、新たな道を拓き、家族と共に生きて行く。そして、「1日でも長く健康で、おおらかに前へ生きる」、が最も基本的で豊かな人生といえる。そこに「感謝する人がいて、そして、感謝される」そういう人生は真に幸せである。
 添付したPDFに「人類と地球の世界平和に向かって「前へ」踏み出そう」という詩を掲載しましたので参照して下さい。 (近藤雅雄、2025年4月4日掲載)
PDF:前へ生きる{詩」

難治性疾患(難病)患者からの学び~難病制度改革と医療法

難病制度改革と医療法

 厚生労働省の職員(研究職)であった筆者は、厚生労働科学研究として37年間、先天異常(遺伝病)、各種難病や中毒の発症機序や診断・治療法の開発等の研究を行ない、患者の立場に立った研究・教育活動を普及してきた。
 しかし、これら難病については、いまだに医師および行政は正しい知識を得ていないのが現状だった。その結果、誤診による禁忌薬の投与などの誤った治療と十分な心身のケアーが得られず、毎年沢山の若い「いのち」を失ってきた。患者にとっては根治療法が開発されない限りいつも時間がない。限られたいのちの時間だけが過ぎていった。
 ヒトは遺伝子の異常を10個以上持って生まれてくると言われている。しかし、ほとんどの人が何の自覚症状もなく健康である。ところが、たった一つの遺伝子の異常が病気となって生まれてくる人もいる。これを先天異常と言うが、健常者と同じくこの世に誕生した大切な「いのち」だ。人間社会において、いのちを大切にするこころは人としての基本である。
 健康の反対が病気だが、これまで健康であった人が、病気になった時に、初めて健康のありがたさを思い、誰もが二度と病気に罹りたくないと思うものである。そしてそれが実現できる。ところが、病気を持って生まれてきた人はどうだろうか。患者は健康への願望、生きることへの願望、仕事への願望、いのちへの思いが、健康な人以上に強く、また、今日の人間社会に欠けている他者を理解し、思い遣るこころ、家族・友人を大切にするこころ、いのちの尊さと感謝の気持ちを強く持ち合わせている。健常者に足りないものを多く持ち合わせている。私たちは難病患者から人間として実に多くのことを学んできた。そして、人は必ず死ぬのだ。これからは、これまでに多くの難病患者から学んだことを基に、人とのコミュニケーションの大切さ、生きる力を表現していきたい。

わが国の指定難病制度

 昭和47年以来、綿々と続いた難病制度には認定方法や治療研究制度など、多くの問題を抱えていた。そこで、筆者らはこの制度を根本から変えるべく署名活動、国会議員への陳情活動(下記のPDF参照)、衆参両議員からなる議員連盟の設立など平成9年から様々な活動を行った。
 その結果、平成26年5月23日に「難病医療法」が成立、その後、「指定難病」が法制化した。
 すなわち、平成21年度、厚生労働省内で難病制度の見直しが行われ、平成26年8月28日に56疾病から110疾病が「指定難病」として追加・決定した。さらに、平成27年3月9日、厚生科学審議会疾病対策部会指定難病検討委員会は新たに44疾患を追加し、総計306疾患が5月中に正式承認・告示がなされ、7月から重症患者に対しての医療費助成が開始された。
 この「指定難病」制度法制化の契機となったのが、筆者を代表とした「ポルフィリン症患者会(さくら友の会)」の活動である。平成20年11月30日に難病認定の署名活動を開始し、全国から集めた総数は600,515筆に至った。この貴重な署名を家内と二人ですべてチェック・整理し、タクシーで厚生労働省へ運んだ。そして長妻昭元厚生労働大臣から始まって代々5名の元大臣に手渡した。私がこの活動に取り組んだ最大の理由は、国内の多くの「難病患者の命を守るための仕組み(法律)を作っておかなければならない」といった使命感だけであった。
 平成21年に民主党政権に移行してから漸く“難病対策の現状と課題について”の本格的な議論が始まった。平成25年に自民党政権に移行してからは、「難病医療法」が5月に成立、平成27年度から施行することが決まり、厚生科学審議会疾病対策部会の「指定難病検討委員会」が中心となり、指定難病の各要件(①治療方法が確立していない、②長期の療養を必要とする、③患者数が人口の0.1%程度に達しない、④客観的な診断基準などが確立している)を満たすかどうかの検討が開始された。昭和47年から平成26年度の約42年間に56疾患が難病として認定されてきたが、平成27年度に約300疾患に拡大し、対象患者をこれ迄の78万人《この中には希少疾患から外れるパーキンソン病(患者数約10万9千人)や潰瘍性大腸炎(患者数約14万4千人)なども含まれている》から150万人に増やし、患者数は人口の0.15%にあたる18万人未満を目安に決められた。
 これら活動の意義として、ポルフィリン症は極めて希な疾病であり、1920年に第1例が報告されてから今日まで約1000例の報告しかないという超希少な疾患であり、誤診や事故が後を絶たなかった。これが難病指定されれば、医師がこの病気を知る良い機会となり、誤診や事故を著しく減らすことにも繋がる。さらに、治療研究が加速することが期待される。そして、何よりも、これまではわけのわからない病気として無視されていたのが、「国が指定した難病」ということで、行政・社会での対応も一変し、真摯に注視されることが期待された。
 指定難病の法制化に関しては厚生労働省職員及び民主党、自民党の国会議員等、多くの要人と面会し、法制化に懸命に取り組んでくれた。ここに深謝する。(近藤雅雄、2025年3月4日掲載、4月4日追記)
PDF:難病制度法制化

紫外線(UV)照射によるポルフィリンからの活性酸素の発生

 標準ポルフィリンに紫外線を照射し、発生する活性酸素ラジカルの種類およびその量をESR(電子スピン共鳴装置)にて検討しました。その結果、酸性条件での発生は少なく、中性条件下での多くの発生を確認しました。すなわち、ヒドロキシルラジカル(・OH)はウロポルフィリン (UP)ⅠおよびⅢ型が、一重項酸素(1O2)はコプロポルフィリン(CP)ⅠおよびⅢ型に多く、スーパーオキシドラジカル(O2-)はプロトポルフィリン(PP), CPⅠ、UPⅠからの発生が認められました。
(出典:市川勇、近藤雅雄:ポルフィリン2(2):93-102,1993.フリーラジカルとポルフィリン代謝に関連する皮膚の老化機構解明に関する基礎的研究コスメトロジー研究報告Vol4/‛96:58-65,1996.)




(近藤雅雄、2025年3月30日掲載)

高齢者のQOL向上と免疫能を高める日本型食生活の解析

研究目的
 わが国が世界的に健康長寿を誇るようになったのには、医学の進歩のみならず、わが国の風土と歴史の中に根付いた日本型食生活の影響が大きく関与していると思われる。しかしながら、死因の3位までの疾患は生活習慣の偏りがその主な原因であると考えられることから、超高齢・少子化の進む中で、高齢者のQOLを高め、これら疾患の罹患を予防し、健康で長生きできるような食生活の提唱が望まれる。

本研究では、以下の5つの課題について検討した。
1.食品中の抗酸化成分の総合評価
2.日本人高齢者の食事摂取状況の解析
3.抗酸化食品ピーマン食摂取による高齢者への介入試験
4.中・高齢者の血液中抗酸化ミネラル濃度の解析
5.老齢動物の抗酸化および免疫能増強の開発

 QOLを高める上で極めて重要な因子である免疫能の向上とその機序解明を目的とした日本型食生活を踏まえた先駆的な栄養学的研究を行った。また、中・高齢者の血液中の免疫能に直接影響を与える抗酸化元素濃度や抗酸化酵素活性などを測定し、酸化ストレスに対する防御機能についての検討を行った。さらに、国民健康・栄養調査の結果をもとに、日本人の年齢別食生活の傾向を把握し、高齢者の食生活の特性に基づいた免疫能調節因子の検索を行った。そして、高齢者の抗酸化および免疫力を増強させる因子の検討を行い、新たな増強因子を発見した。
 以上の結果をもとに、高齢者の免疫能および抗酸化能を高める食品類を選択し、日本型食生活を中心とした高齢者への介入試験を行い、免疫能を高め、高齢者のQOLを高めるような食生活の提唱をする。なお、紙面の都合上、酸化ストレスが免疫細胞に及ぼす影響に対する分子生物学的手法を用いた解析実験に関しては割愛した。

 本内容は農林水産省農林水産技術会議平成14~17年度「日本型食生活の生体調節機能効果の解明」によるプロジェクト研究課題「高齢者のQOL向上のために免疫能の健全性を保持する日本型食生活の解析」で得られた成績の一部を修正して以下のPDFに纏めた。(近藤雅雄、2025年3月25日掲載)
PDF:高齢者の健康増進研究

忘れてはいけない新型コロナウイルス感染とパンデミック

 2019年12月以降に中国武漢市で発生した新型コロナウイルスによる感染症が大流行、世界を震撼させた。世界保健機構(WHO)は新型コロナウイルスをCOVID-19と命名し、2020年3月11日、「新型コロナウイルスはパンデミックとみなすことができる」と宣言した。
 このパンデミックからクラスターという言葉が初めて使われた。集団感染に移行することから個人と個人の距離を十分に開ける政策、アクリル板で遮断する対策、喚起、アルコールによる手指の消毒、マスクの着用が当たり前となり、習慣化した。
 多様なイベント(スポーツやコンサートなど)では大声を出さない、マスクの着用、人数規制などさまざまな対策が施され、典型的なのが2021年の東京オリンピックである。無観客となり、これまでのオリンピックの景色を一変させた。
 このパンデミックの原因、推移、行政対応等は風化させることなく、次代に引き継いでいかないといけない。ここでは①新型コロナウイルス発生の疑義、②迷走する診断法と疫学、③迷走する治療法、④各国の感染対策と予防、⑤わが国の行政対応、⑥教育の現場と社会の混乱、⑦パンデミックの収束、⑧パンデミックその後、公衆衛生の重要性などについて記録した。以下のPDFを参照してください。(2025年3月20日掲載)
PDF:新型コロナウイルス

国際鍼灸専門学校令和元年度コロナ禍,卒業生へのメッセージ

 卒業式のシーズンです。記憶に残る挨拶として、第2回目は国際鍼灸専門学校の令和元年度の卒業式です。この年の卒業式は前年11~12月以降に中国武漢市で発生した新型コロナウイルス感染が世界中に拡散、パンデミックとして大きな問題となったため、開催されませんでした。2019年から3年間、多くの学校で卒業式および入学式などの式典は中止または縮小、3年間式典を経験しないで卒業した生徒も多かった時代です。
 学園では、当初は卒業式を縮小して教職員による手作りの式典を企画し、3月19日まで準備に追われていましたが、感染が猛威を振るったため、残念ながら式典を中止せざるを得ないという苦渋の決断に至りました。卒業生の気持ちを考えると断腸の思いでしたが、未来を担う卒業生の健康を最優先しました。
 そこで、卒業生へのメッセージを作成し、配布しました。学生らには、卒後も、生涯学ぶことに最大の価値を置き、明るく、前向きに頑張って社会貢献することを期待しました。(近藤雅雄、2025年3月20日掲載)
PDF:令和元年度卒業式

鬼木医療学園 国際鍼灸専門学校の平成30年度卒業式祝辞

 卒業式のシーズンになりました。そこで、これまでの挨拶の中で、忘れられない祝辞は多くありますが、その中から2つを選びました。記憶に残る卒業式の挨拶として、1つ目は元校長を務めた国際鍼灸専門学校の平成30年度の卒業式です。
 筆者は校長としての運営・研究業務以外に、生徒には3年生の担任、生理学、病態生理学、栄養学、生命科学の講義、国家試験対策補講、病院やスポーツ、福祉施設などの各種見学の引率、飲み会などと、極めて濃く関わりました。そして、卒業に当たって、生徒らが私たち教職員宛に、教室の黒板に残したメッセージ『先生、事務の方々、3年間本当にお世話になりました。この充実した学生生活を、私たちは一生忘れません』とありました。このメッセージは、私たち教職員のこころに強く響き、次代を担うあん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師(あはき師)の三療国家資格育成への自信となっただけでなく、大きな誇りとして、心の中に深く刻まれた瞬間でした。感動しました。(近藤雅雄、2025年3月19日掲載)

平成30年卒業式祝辞

学校法人の社会的責任と理事長・校長に求められる資質

 学校法人の理事長は学校の設置者であり、学校を管理し、学校の経費を負担する責任を負っています。理事長に求められるものは、最高責任者として相応しい社会的責任を遂行することです。
 一方で、教学の最高責任者は校長です。そこで、高等教育機関のさらなる発展・進化を期して理事長の資質及び学校経営、理事長と校長の役割などについて、①学校法人の社会的責任、②理事長の資質、③理事長と学校長の役割に分け、基本的私見を述べました。
 現役の専門学校校長を退職してから5年が経ちますが(現在75歳)、以下のPDFに書きましたので読んでください。(近藤雅雄、2025年3月17日掲載)
PDF:理事長に求められる資質

人を育てる 「高等教育機関のリーダーに求められる37の習慣」

 高等教育機関とは、初等中等教育の次の段階の教育課程を提供する教育機関の総称で、学校教育法に規定される大学、大学院、短期大学、高等専門学校及び専門学校などが該当します。筆者は大学の学部長及び専門学校の校長としてリーダーを経験しました。

 高等教育機関はグローバルな視点を持って次代の社会貢献に不可欠な人材を育てるよう教育・指導していく義務があります。これら人材育成の要となるのがリーダーの教育方針・姿勢・品性です。人材育成とは才知ある人物、社会に役に立ち貢献できる個人を育てることです。すなわち、コミュニケーション能力が高く、物事をうまく処理できる人材、適正に活用することで活性的な組織を構築することができる個人の育成を指します。これら要求に適う高い人間性を持った次代を担う人材を育成する事が教育の使命です。

 高等教育機関の役割は建学の精神に立脚し、社会・国家・地球、人類の未来・発展に貢献できる人材の育成を行うことが最も基本的な社会的責任です。そのために、志を持って入学する学生に学校・教育生活の最終到達点、総結集として学士力を育て、卒業後はしっかりと国内外の社会に貢献できるよう、教育・研究に最大限のエネルギーを費やし、教員と学生の双方で教えることへの誇りと教わることへの誇りを共有し合うことが大切です。

 筆者が36年間にわたる厚生省・厚生労働省での教育・研究・運営の経験を踏まえ、東京都市大学の人間科学部の開設および初代学部長として就任した時に作成した37の習慣を以下のPDFに示しました。(2025年3月16日)
PDF:人を育てる

こころとからだの健康(19)社会の急速な変貌と大学教育

 戦後の急速な発展に伴い、大家族の「集団」から核家族の「個」の社会へ、住居は木造建造物から鉄筋コンクリートへ、さらに、食生活は日本型食生活から、欧米など世界中の料理を自由に取捨選択できる豊かな自由型食生活へと時代はおおきく急速に変化しました。
 このような「家族」「食」と「住」という生活の根源的な部分だけでなく、日本は世界でもまれな食品ロスが多く、自殺率の高い国となると共に国家や組織に対して無関心で、脆弱な国民が増加してきています。また、格差が増し、超少子・高齢社会という少数単位での生活環境がこころとからだをさらに脆弱化しています。
 こうした現実は、とくに次世代をになう子どもたちの「対人技術の発達の遅れ」など各種脳力の低下が起こり、日本の未来において計り知れないほどの損失が生じるという危惧感を抱きます。
 一方で、遺伝子を用いた治療法の開発や日常生活の中にITAI技術が急速に発展し、今まさに「こころとからだの健康」を重視した教育が必要になっています。
 大学教育が全入時代となった今日、大学の質保証向上に対するさまざまな改革、グローバル化が行われていますが、教養の空洞化が年々大きく拡大し始めているように感じてなりません。人間社会と科学技術の発展との間に大きなラグが生じているのが現状であると思われます。 (近藤雅雄、2025年3月15日発表)
PDF:社会の変貌と大学教育

「漢方薬」の「薬」はくすり,クスリには必ずリスクがある

 漢方薬に関心のある人が多いと思います。西洋医学で治らない病気であれば、中医学を調べようと言うことでしょうか。
 漢方薬も薬(クスリの反対はリスク)ですので必ず副作用はあります。これまでにも多くの事故、副作用事例が報告されています。
 約35年前に経験した実話です。某開業医より漢方薬を処方された患者が腹痛・嘔吐など急性腹症はじめ急性ポルフィリン症と同じような消化器症状、精神・神経症状などが発症したため、確定診断を目的に某国立大学医科学研究所附属病院の医師から検査依頼を受けたことがありました。検査の結果、尿中の5-アミノレブリン酸(ALA)が高値で、ポルホビリノゲン(PBG)は正常でした。また、尿中のポルフィリン排泄パターンおよび血液中のポルフィリンパターン、ALA脱水酵素活性鉛中毒と一致、さらに、血液検査を行った結果、鉛が大量出てきたので急性ポルフィリン症ではなく、急性鉛中毒と診断しました。患者は鉛のキレート療法で治療したそうです。
 鉛を含む漢方薬を処方した開業医は2名いましたが、両者共偶然に同じ某有名私立大学医学部出身でした。2人は大学から厳しく指導されたそうです。
 漢方薬もクスリですので副作用はあります。漢方薬を服用するときには複数の医師や漢方薬・生薬認定薬剤師の資格を持つ薬剤師と相談することをお勧めします。
(近藤雅雄、2025年3月13日掲載)

生命の根元物質,「ポルフィリン・ヘム」の生化学と諸情報

 3.11、東日本大震災から14年。被災された方々並びに関係者にこころよりお見舞い申し上げます。決して風化することのないよう、次世代に伝えてまいります。1日でも早い復興とご健勝を祈っています。

 原油中のポルフィリン類は、生命の起源と関係していると推測されています。その構造は実に頑丈で巨大、しっかりしています。これが細胞内の酵素反応で簡単に生産され、酸素の運搬と貯蔵、酸化還元反応、エネルギーの生産、活性酸素の分解、薬物代謝など、生命維持及び働きの根幹に関わる働きをしています。今回は、このポルフィリンの生化学についての情報をまとめました。

 ポルフィリンは4個のピロールが4個のメチン橋(-CH=)で結合した環状化合物の総称です。26個のπ電子共役系におけるπ電子の遷移に基づいて、紫外~可視波長領域に強い吸収スペクトルを持つ赤色物質で、波長400m付近(Soret帯、吸収極大)の遠紫外線照射により美麗な赤色蛍光を発します。
 ポルフィリン類は長い進化の過程を経て、広く動植物界に分布しています。その大部分は遊離の形ではなく、Fe(ヘム)、Mg(クロロフィル)、Co(ビタミンB12)などのように特定の金属をキレートし、さらに特定の蛋白質と配位的に結合した形で、酸素の着脱や光合成でのエネルギー生産、変換という生命現象の根幹反応に関与しています。
 遊離のポルフィリンおよびその前駆体はこれらが生合成されるときの中間体であり、体内での存在量は極めて微量です。しかし、ポルフィリン症や鉛中毒などのポルフィリン代謝に関わる酵素障害によって体内に著しく増量・蓄積します。(近藤雅雄、2025年3月11日掲載)

 ここでは、「ポルフィリン・ヘムの生化学」として
  1.ポルフィリンの化学構造と命名法
  2.ヘムの化学
  3.ポルフィリンの美麗な赤色蛍光
  4.ポルフィリンの一般的性質
  5.ヘム生合成中間体
  6.ポルフィリンの前駆体
について以下のPDFに記述しました。PDF:ポルフィリン・ヘムの生化学

人類の健康に貢献した元「国立公衆衛生院」の復活を願う

 元国立公衆衛生院は米国ロックフェラー財団の全額寄付によって建立され,昭和13(1938)年3月29日勅令第147号公衆衛生院管制の公布をもって厚生省の創立(1938年1月11日)に遅れること2か月余りの後に同省の直轄機関として設立されました。設立には野口英世が深く関与した記録があります。
 本院はわが国の公衆衛生の向上を期するため,国および地方公共団体などにおける衛生技術者の資質の向上を図るための養成訓練と公衆衛生に関する学理の応用の調査研究を司る教育・研究機関として設置されました。そして、わが国の保健・医療,福祉,環境の分野で多大な貢献をしてきました。
 平成7(1995)年、厚生省は「日本は近代国家として,公衆衛生の時代は終わった」とし,公衆衛生という言葉が省内から消えました。平成14(2002)年4月,旧厚生省は厚生労働省となり,試験研究機関の再編成によって64年という短い歴史を閉じました。
 今、世界は、新型感染症の到来、ロシアによる侵略戦争、地球温暖化など、安心安全な平和社会からどんどん遠ざかっているように見えます。このような時代にこそ、人類の健康に貢献する国立の公衆衛生院が必要とされているのではないでしょうか。先進国では国立の公衆衛生院は国家の中心的役割を果たしています。しかし、日本では残念ながら2002年に無くしてしまいました。
 日本の未来のために、元国立公衆衛生院の復活を期待したい。
(写真は元国立公衆衛生院、平成15(2003)年1月29日,筆者撮影)(2025年3月10日掲載)
PDF:元国立公衆衛生院

健康と病気シリーズ8.病気理解のための「血液生理学」

 「血液の病気」に限らず、病気を知るには、血液の生理作用を理解することが不可欠です。患者が治療効果を理解し、自らの治癒力を向上させるためにも重要です。そこで、拙著「生理学講義」(下記写真)から抜粋しました。

 生体の内部環境は血液によって常に恒常性が保たれています。血液は血管内を循環する流動性の組織で、体重の7~8%(男性で体重の8%、1/13、女性は体重の7%,1/14)存在し、呼吸、循環、調節、栄養、排泄、生体防御など生命維持に不可欠な役割を果たしています。細胞成分は主に赤血球が存在し、その容積は血液全体の約45%を占めます。血液が赤いのはヘモグロビンの赤い色素成分で酸素と結合して全身体細胞に供給する「ヘム」を含むからです。ヘモグロビンのことを血色素とも言います。
 血液は細胞成分と液状成分から成ります。赤血球は酸素の運搬を行い、生命のエネルギー物質の生産に不可欠な細胞で、骨髄で生産されます。白血球は生体防御機能として自然(受動)免疫と獲得(能動)免疫に関与します。血小板は血管が破れた際に直ちに止血し、血液の凝固、血管の修復に重要です。
 さらに、血液中液状成分の血漿の水分量は91%、残り1%は、蛋白質7%、糖質0.1%、脂質1%、ミネラル0.9%、その他生命活動に不可欠な成分を含みます。栄養成分は各種細胞の働きに取り込まれ、不要な水溶性成分は腎臓でろ過され尿となります。
 以下のPDFに「血液の生理学」を示したので参照して下さい。(近藤雅雄、2025年3月9日) PDF:血液の生理学

難病患者と大学病院医師:超稀少疾患研究の推進を望む

 難治性疾患の患者を有名私立大学病院に紹介し、入院した時、5~6人の医師たちにぜひ症例報告をして欲しい旨をお願いしたところ、一人の医師が「本症についてはすでに多くの報告があり、本症を発表してもその価値がない」と述べ、笑われたことを覚えている。多くの医師が同じ考えであろう。医師からすれば、日常の業務が忙しく、これまでに報告がない新しい発見などがあれば率先して公表するであろう。よほど新しい内容がなければ発表しないものだ。

 しかし、本症について調べたが、100万人に数人の発症といった極めて症例数が少ないことから、情報も少なく、十分な臨床統計もないことがわかった。したがって、疫学も勿論ない。本症のような超稀少疾患については症例が見つかれば、これまでに報告されていても、必ず論文として、誰でも検索して見られるように公表することを義務付ける必要があるのではないか。また、医療関係者は患者がいればぜひ国内外の医学会や研究会で報告し、症例報告として記録を残してほしいと願う。患者によって症状や治療の効果も異なるはず。その事実が大切なのである。

 医師や患者も情報を知りたがっている。大学病院の医師は「報告する価値がない」と言っていたが、それが医学の発展を妨げる原因ともなる。情報は多い方が良いのに決まっている。特に超稀少がんなどの難治性疾患においては患者数が少ないことが原因で治療研究が進まないことが深刻化しているのではないか。また、公表しないことは稀少疾患に対する治療上の不都合な真実も疑われかねない。(近藤雅雄、2025年3月8日掲載)

健康情報6.昔,中・高生の間で流行った「ペットボトル症候群」とは

 1992年5月、聖マリアンナ医科大学の研究グループは、糖尿病性ケトアシドーシスの症状となった若い人達の多くがペットボトルの飲料水を飲んでいたことからペットボトル症候群と命名されました。喉の渇きのために砂糖の入ったスポーツドリンク、清涼飲料水を大量に飲み続けることによって起こる急性の糖尿病です。
 また、ペットボトルの飲料水を飲むと血糖値がすぐ上がるので元気となる。しかし、またすぐ血糖値が下がり、今度はイライラしたり、狂暴になったりする。当時、中学や高校では校内暴力が流行った時代で、これをペットボトル症候群と言っていました。
 最近、自動販売機が増えさまざまな飲料水が並べられています。コーヒー飲料など糖質の多い飲料水が多くありますが、これらは缶類が多い。ペットボトルはお茶や水など、糖質の少ない飲料が多くなっています。したがって、ペットボトル症候群が再び流行ることは無いと思いますが、糖質の多い飲み物はカロリーが高いので注意してください。余った糖質は白色脂肪細胞に中性脂肪として貯蔵され、肥満の原因になります。(近藤雅雄、2025年3月6日掲載)

健康と病気シリーズ 2.病気と日本人の死因統計とがん

 病気とはからだの全身または一部分に生理状態の異常をきたし、正常の機能が営めなくなる現象を言う。
 病気には必ず原因があり、それを早期に取り除き、症状を診断、診療ガイドライン(根拠に基づいた最良の治療、標準治療)に従って治療する。この時、病者のこころのケアーは不可欠である。一方で、多くの病気は自然治癒の力(免疫力と抗酸化力が鍵となる)で修復・回復される。
 ここでは、厚生労働省の日本人の死因統計からトップであるがんの動向とがんから学ぶ「いのち」について論文として纏めた。
 そこで、たとえ不治の病であっても、最期まで、生きることをあきらめないこころ、いのちを大切にするこころ、人を思いやるこころ、感謝のこころを失ってはいけない。そして、同じいのちは一つしかないという、いのちの重たさと尊さを学んでほしい。以下のPDF参照(近藤雅雄、2025年2月22日掲載)  PDF:健康と病気2

健康と病気シリーズ1 「健康とは」身体的,精神的,社会的健康

 元気なヒトは“健康”を意識しないのが通常である。それが、病気になったり、病人を見たり、事故に遭ったり、けが人を見たりして初めて健康を意識する。
 若い時に病気を繰返すと免疫力が強化されるので、身体が丈夫になることが多い。その理由は免疫の中枢である胸腺の発育が12歳位でピークを迎えるためだ。細菌やウイルスなどの異物蛋白(抗原)に対する免疫力(抗体産生力)が増し、異物を除去する能力が高まる(免疫獲得)のである。したがって、子どもの頃にケガや病気を繰返しては免疫を獲得したヒトは大人になると丈夫である。
 本稿では健康について、身体的、精神的、社会的健康などさまざまな角度から考察した。
 論文は以下のPDF参照。HP:PDF:健康と病気1(A4)