ネズミの目から赤いプロトポルフィリンが涙液中に出現

 ハーダー腺は、主に哺乳類、爬虫類、鳥類などの動物に見られる眼窩内に存在する腺で、眼窩の筋肉や涙腺と隣接し、涙や保護物質を分泌する腺です。涙液の油層成分を分泌する役割があり、特に水棲動物では眼球を保護する働きがあります。人間ではマイボーム腺がこの役割を担いますが、ウサギなど一部の動物ではハーダー腺が主要な油層分泌腺として機能します。
 ハ-ダ-腺は特にげっ歯類に良く発達し、光受容、内分泌、免疫など、さまざまな機能が想定されています。特にラットで発達、不規則な形をし、「紅涙」として目やにや涙として現れることがあります。なぜ目から赤い色素を分泌するのかについてはわかっていませんでした。
 最近になって、英国の研究グル-プがヘムを合成する酵素活性が他の組織臓器に比べて極めて低いために、基質であるプロトポルフィリンが大量に蓄積し、涙液中に出現することがわかりました。これらのことは、ハ-ダ-腺のポルフィリン・ヘム合成の調節が他の組織と異なっていることを示唆し、その起源および分子進化などの点で非常に興味が持たれています。(近藤雅雄、2025年5月4日掲載)

卵は新鮮な程,紫外線照射により美麗な赤色蛍光を発する

 卵を割らずに鮮度を評価する方法としては、以下のような方法が知られています。
1.水の中に入れると、新鮮な卵は水に沈んで横向きに倒れる。しかし、古くなった卵は、水に浮いたり、底で垂直に立ったりする。
2.10%の濃い食塩水に卵を沈めると、新鮮な卵はすぐに沈む。しかし、古い卵は、水に浮いてくるか、時間が経ってから沈む。
3.光に透かすと、新鮮な卵は、卵黄が小さく、白身が濃厚で白く濁っているように見える。鮮度が落ちた卵は、卵黄が大きく、白身が薄くて透明感がある。
などが知られていますが、卵の殻にポルフィリンが付着していることは意外と知られていません。

卵の殻に紫外線を照射するだけで卵の鮮度が分かる
 卵の殻には、消費者の購買意欲をそそるような色付き卵(褐色、ピンク色、青色など)が市販され、私たちの目を楽しませてくれます。これら色付き卵や白い卵の殻に暗室で紫外線(400nm付近の遠紫外線)を照射するととても美麗な赤色蛍光を発する(下の写真参照)。この蛍光は色付きに限らずすべての卵類は新鮮な程強く、逆に古いほど弱いことがわかりました。つまり、赤い蛍光物質はプロトポルフィリンと言ってヘム生合成の中間体です。
 鶏などの鳥類では、血漿中のプロトポルフィリンが卵管を介して卵殻(カルシウムと結合)に移動(排泄)するのではないかと推測されます。
 ポルフィリンは巨大なπ電子を持っていて、長い間太陽や蛍光灯などに曝されたり、空気で酸化されるとエネルギーを放出し、壊れていきます。したがって、鮮度が良いほど、紫外線を照射により赤色蛍光を発する。逆に古い卵は、赤色蛍光が弱い。
 白い卵の白色レグホンや赤玉鶏、名古屋コーチン(名古屋種)烏骨鶏アロウカナ、ウズラなどの卵類を調べましたが、新鮮な程卵が赤く美麗な輝きを放しました。その原因を分析したところすべてプロトポルフィリンでした。鳥類図鑑ではアロウカナの青い色素の原因はビリベルジンと書いてあったのを記憶していますがそれは間違いです。因みに、ポルフィリンに銅がキレートすると青色になります。
 卵のご提供を賜りました愛知県農業総合試験所に感謝します。(近藤雅雄、2025年5月3日掲載)

令和2年度,国際鍼灸専門学校の在校生・新入生へのメッセージ

国際鍼灸専門学校の在校生並びに新入生の皆様
 昨年(2019)11~12月以降に中国武漢市で発生した新型コロナウイルス感染が世界中に広がり、パンデミック(世界的大流行)として大きな社会問題となっています。国内の教育機関もこの影響を受け、3学期は休校が相次ぐと同時に慌しい3学期となってしまいました。そして、大変残念ながら、3月31日をもって国際鍼灸専門学校退職に当たり、在校生及び新入生の皆様にご挨拶する機会を逸してしまいした。
皆さんへのメッセージを以下のPDFに認(したた)めました。(近藤雅雄:令和2年3月28日著)
PDF:在校生メッセージ(国鍼2020.3)

ポルフィリン-ALA学会から「学会賞」に続き「功績賞」を受賞

 4月22日、31年間通った元国立公衆衛生院(港区白金台)を久し振りに訪問しました。その後、当院の隣にある東京大学医科学研究所で開催された第6回ポルフィリンーALA学会の年会において、「功績賞」を受賞致しました。「功績賞」の盾には『ポルフィリンーALA研究領域において、長年にわたり多大な功績をあげられました。よってここに功績賞を贈呈いたします』と刻まれていました。2003年の「学会賞」に続き2度目の受賞でした。この受賞は大変名誉なことで、お世話になった学会の役員・会員、1000人近くの共同研究者・研究協力者、そして恩師浦田郡平先生に感謝致します。また帰途、敷地内で衛生院時代の同僚である磯野威さんと偶然に出会ったことは嬉しかったです。

本学会設立の経緯
 私は元国立公衆衛生院にて、31年間、厚生行政に関わる研究・教育活動を行いました。その間、今から30年前の1986年にALA(δアミノレブリン酸)の代謝を行うALAD(ALA脱水酵素)が亜鉛酵素であることが分かり、臨床医学、公衆衛生学・衛生学・産業衛生学、生化学、植物学、栄養学など多分野から注目され、そこで、職場の仲間と共にALAD研究会を創設しました。4年後の1990年には、研究領域を拡大・全国組織として、ポルフィリン研究会と名称変更・規約を作成し、国立公衆衛生院にて第1回の総会を開催すると同時に査読付論文掲載雑誌「PORPHYRINS」を定期的刊行物(季刊)として出版を始めました。当時は年に2回研究発表会、4年に1回国際学会を行っておりました。
 その後、時代は変わり、2011年にALA研究会を主宰する先生方とポルフィリン研究会を主宰する先生方のご努力によって、両研究会が統合され、「ポルフィリン‐ALA学会」が誕生し、今日まで発展・充実してきました。

 写真の建物は元国立公衆衛生院:2002年(平成14)4月に、旧厚生省の付属試験研究機関の再編成によって64年間の歴史を閉じました。建物は現在もそのままの状態で残っています(2016年4月22日、筆者撮影)。この建物は米国ロックフェラー財団の全額寄付によって建てられ、竣工当時は国会議事堂の次に高い建物で大変眺望が良かったそうです。
 日本建築学会が編集した日本建築物総覧(1980年)には特筆に値する建築物14000件および特に重要な2000件の中に本院建物は含まれ、同会長名による「近代日本の進歩と地域景観に寄与した」として、永く保存されたき旨の依願状を受けています。
 私は、本院で31年間、教育・研究活動に身を投じて行ってきた一人、重要文化財に近いものとして永く保存されることを願っています。本院は日本の公衆衛生学発祥の地です。(近藤雅雄:平成28年4月25日掲載)

大学教養講座「人間と自然・地球環境」に関する基本的話題

 地球上に人類が誕生して以来、近年の急速な人間文明の進歩、産業・科学技術の発達が人間生活に多様な利便性、合理性を与えるようになった反面、私たちの住む地球環境に、本来持っている自浄作用、維持能力を超えた様々な弊害(地球環境問題)をもたらすようになった。
 私たちにとってかけがえのない地球環境に与える直接的、間接的な原因等、環境影響の度合いは様々である。今やそれらの原因の中から、人間と自然・地球環境とのかかわりを学び、この美しい地球を次代に引き継ぎ、人類の持続可能な文明・社会を形成していくための方策を、具体的に自分の課題として考える時代に突入している。内容は以下のPDF参照。 (近藤雅雄:平成27年9月20日掲載)
PDF:人間と地球環境27.9.20

人口減少を抱える日本の深刻な問題「地球人口と日本」

 地球に住む人間の数は、1950年に25億2,935万であったのが、2000年には2.4倍の61億1,537万人、2050年には91億4,998万人(2010年69億869万人)と年々増加している。しかし、日本では諸外国に比して、減少している。
 人口問題として、人口の増加は食糧問題、飲料水問題、住む土地の狭小などの侵略の問題、貧困などの格差の問題、地球温暖化、公害、地球資源劣化などの地球環境の問題など、多くの問題を抱えている。一方、人口の減少は国の経済力の低下や防衛の脆弱性や易侵略性を抱え、国として大きな問題となる。 (近藤雅雄:平成27年9月9日掲載) 以下のPDF参照
PDF:地球と日本と人口