著書28~30.1971年~2021年の半世紀に亘る教育・研究活動

 1971年、厚生省国立公衆衛生院の栄養生化学部に採用され、公衆衛生学に関する多様な教育・研究活動が始まりました。国立公衆衛生院は公衆衛生学に関する教育と研究の総合機関でした。私は全国の衛生試験所や保健所、病院など公的機関で働く医師、看護師、栄養士、環境関係の技術者などに公衆衛生の最先端を教育・研究指導を行う総合機関として従事することに誇りを持って教育・研究に励んできました。そして、国民に対しては最良の保健・医療・福祉を提供する使命を常に持ち続けて厚生科学研究に励んできました。私は「研究の質の向上は教育の質の向上を担保する」を自分に言い聞かせ、非常に充実した教育・研究生活を送ることができました。
 そして、生命の根元物質である「ヘム」を中心に、さまざまな領域の研究を行うと同時に、国立公衆衛生院の特別課程や研究課程で教育・研究指導すると共に大学医学部、文系学部、理工系学部などで、講演や講義を行い、「教育と研究」の普及活動を行ないました。しかしながら、2002年3月、厚生省の機構改革によって残念ながら私を育ててくれた国立公衆衛生院は廃止されました。しかし、公衆衛生院の精神は退職した今も変わりなく、教育・研究活動を続けています。在職中に31年間の研究業績を次のキャリアアップとなるよう「国立公衆衛生院での研究のあゆみ」、1999年6月1日発行,164ページ、出版 (写真参照;著書28)として総括し、纏めました。
 国立公衆衛生院の廃止に伴い独立行政法人国立健康・栄養研究所へ出向を命ぜられ、5年間栄養生化学に関する研究を行いました。ここでも環境に順応し、精力的に研究活動を行ない、栄養学・食品学および免疫学を取り入れた多様な研究成果を出し、論文発表しました。そして、国立公衆衛生院時代から継続すると36年間、厚生省および厚生労働省の研究職として厚生行政に関わる教育・研究を行い、57歳で早期退職しました。
 その後、65歳までの8年間、五島育英会東横女子学園短期大学教授、武蔵工業大学教授兼学部長として採用されました。2年後、この2校が統合し新たに東京都市大学と校名変更され、新大学の教授兼学部長として6年間、教育・運営を行いました。また、大学の総合研究所の客員教授を8年間兼務し、自分の研究室を創り、研究を継続しました。この間に、研究の集大成として「教育・研究業績集」、2015年3月31日,151ページ(写真参照;著書29)を出版しました。
 また、大学在任中に、約40年間にわたる「遺伝性ポルフィリン症」研究の総仕上げを行うと同時に、厚生労働省と国会に働きかけて、わが国の難病制度を改め、新たに指定難病制度として法律化されました。これらの詳細については著書「指定難病、日本のポルフィリン症」に示しましたが、わが国で初めてこの病気の診断・検査法の開発、診断基準、発症機序、治療法、予後、臨床統計などについて、単行本として出版しました。
 これですべての仕事は終わるかと思いきや、長生学園にて研究指導を依頼され、さらに、国際鍼灸専門学校の学校長として任命され、70歳まで運営と教育・研究に専念することができました。
 そこで、1971~2021年の約50年間の教育・研究に関わる1400件以上の論文・著書などを公開してきた社会活動の総括として、本書「教育と研究 業績集1971年~2021年」として纏めました(写真参照;著書30)。そして、70歳以降も執筆活動は続け、ネットで「近藤雅雄の健康・栄養資料室」として原稿を掲載し続けています。
 「教育と研究 業績集1971~2021年」の目次は以下のPDFして下さい。(近藤雅雄、2022年3月31日掲載、2026年3月22日更新)
PDF:業績集目次

研究回想4.ALAによる保健・医療・環境・農業研究の回想

 1990年代に、コスモ石油株式会社中央研究所の田中徹博士が光合成菌を使い、ポルフィリンの前駆物質δ(5)-アミノレブリン酸(ALA)を製造する「発酵法」を開発してから、ALAの低コスト大量生産が可能となりました。この偉大な発見によって、研究用試薬としてだけでなく、多方面への研究に利用されるようになりました(これまで、ALAの人工合成は回収率が悪く、高価でした、そのためにポルフィリン・ヘムの研究はなかなか進みませんでした)。
 2000年代に入り、コスモ石油は5-アミノレブリン酸(ALA)の植物への影響に関する研究を本格的にスタートしています。そして、2004年10月にはALA含有製品製造販売会社が設立され、国内販売に続き海外販売も本格的に展開しています。
 同時期、コスモ石油の研究員数名が筆者の職場であった国立健康・栄養研究所にALAのカプセルを持参したので、私はそれを濃度を変えて服用し、自らの血液および尿中のポルフィリン代謝物を測定し、安全性と有効性を確認しました。その後、田中氏と宮成節子氏と3人で新大久保のなまず屋(2008年に閉店)で会食し、さまざまなALAの夢を語ったことを昨日のように覚えています。そして、数年でしたが、健康と病気に関する研究が行われました(下記PDF参照)。

 2007年、小生が研究所を退職して大学に移動。翌年、コスモ石油(株)SBIホールディングス(株)との合弁会社SBIアラプロモ(株)が設立されました。そして、田中氏と河田聡史氏が研究所の場所を探していた時、丁度小生が勤務する東京都市大学の総合研究所内に貸研究室が空いていたことから、ここにALA研究所を開設しました(大学では健康医科学研究室として開設)。そこで、筆者が2002年、国立公衆衛生院を退職した時に自宅の庭に建てた「健康科学研究所」の実験台、ALA測定専用カラム、紫外線照射器、実験器具、ポルフィリン代謝物分析の本、外部研究資金などをALA研究所に寄附し、夢を託しました(これを機に小生の研究所は閉鎖)。そして、田中氏の卓越した研究能力と精力的な企画・運営・指導、そして優秀な研究所スタッフの努力によって、ALAは健康食品、医薬品、化粧品、また、動物の飼料や植物の肥料などといったさまざまな分野で急速に注目されていきました。今では、脳腫瘍や膀胱がんなどがんの診断・治療、植物では光合成を促進すると共に収量・品質向上、健苗育成、ストレス耐性、耐塩性・耐冷性向上、都市および砂漠の緑化など、また、健常者に対しては免疫力増強、運動機能向上、疲労回復向上などとして保健・医療・環境など多様な分野で応用されるようになりました。
 一方、2011年3月11日の東北の大震災以降、突然、世田谷の大学総合研究所内から神戸に移転しました。その後、SBIファーマ(株)が立ち上がり、研究所は神戸から川崎(ナノ医療イノベーションセンター(iCONM)4F)に移り、組織も大分変わったようです。共に人生をかけた研究でした、頑張って欲しいと願っています。
 なお、ALAは指定難病急性ポルフィリン症鉛中毒の発症時に体内に過剰に蓄積するALAと同じものです。したがって、これらの患者さんの摂取は、事例はありませんが病気が悪化するかもしれません。また、発症に関わるかもしれません。服用は控えてください。
 下記PDFにALA研究を回想し、成果の一部をPDFに纏めました。(近藤雅雄、2025年9月15日掲載)
PDF:ALA研究とその成果

研究回想3.研究の道しるべ、持続した発見と社会貢献

 教育・研究者として、その業績数は学術論文、著書、国際会議講演、国内学術会議講演、招待講演、特別講演、教育講演、依頼論文、学術報告者、特許、競争的研究費の獲得、学位(学士、修士、博士)研究・論文指導、民間企業研究指導、国家及び地方公務員・留学生への教育・研究指導、新聞・雑誌・報道・テレビ・映画等マスメディアへの出演・執筆依頼、教材など、公開された印刷物などは全部で1,500件を超える。
 学術論文の内、査読付きが238件、その内訳は、英文90件、邦文148件、国際会議論文63件、論文の国際的価値として総インパクトファクター 250以上、引用件数は国内外にておそらく5,000論文前後に至る。査読付きの学術論文は投稿雑誌の編集委員会にて、必ず2名以上の専門家による審査が入り、オリジナリティがあるかどうか、原著論文として適切かどうかなど、厳しく審査される。その結果、reject(却下)か、accept(許可)か、または修正すれば許可する(acceptable、条件付許可)の3つのどれかの判定が著者に送られてくる。したがって、公開された査読付き論文はすべてオリジナリティがある。主な研究成果をPDFに示しました。

 学生時代に立てた目標は30歳までに自分の道を見つけることでした。そこで、猛烈に仕事をして、30歳時までに「骨髄δ-アミノレブリン酸(ALA)脱水酵素インヒビターの発見」、「鉛中毒時の酵素異常の発見とその機序の解明」、そして「晩発性皮膚ポルフィリン症の酵素異常の発見」といった世界で初めてを3つ経験しました。いずれも日々の実験の積み重ねから見出した、まったくの偶然の発見でしたが、これが研究者としての自信につながり、何の抵抗もなく、自然と研究者の道を歩むこととなりました。

 新しき事を見出すということはonly oneになること、number oneではなくonly one にこだわりました。その一つとして、私が経験したのは最も基本的な測定(分析)技術の開発でした。他の研究者が開発した測定法を基本に戻って再検討するとうまくいかない事があることを見出しました。それは、鉛中毒の生体影響の指標として用いられてきたALA脱水酵素活性の測定法は1955年に開発されて以来、現代まで何の疑問・疑いを持たず世界中の研究者によって利用されてきました。その方法を基本に戻って測定し直すと新たな問題が沢山出てきた。そこで、測定法を新たに開発し、実験するとこれまでの定説と異なった新たな発見が次々と成された。この内容については、昔「生化学若い研究者の会」で特別講演を行い、若手研究者の興味を誘いました。

 私は、事を成すにはまず基本に戻って十分に準備をすることが大切で、これが新たな発見に繋がることが多いことを経験しました。気が付けば1,500件以上の業績を出したことは感慨深いことです。21歳時からエネルギーを教育・研究と論文執筆に最大限投入し、1日12時間以上様々な学びの好奇心を持って基礎から応用研究を行なってきました。76歳となった今でも、この「健康・栄養資料室」に論文を書き続けています。学ぶことに最大の価値を置き、新たなonly oneのモノ創りを生涯の仕事として位置付けた自分の人生であり、社会への貢献です。

 また、社会貢献の立ち場からは、これまでに学術研究会と学会の創設と運営、学術雑誌の創設と運営、大学新学部の立ち上げ・運営・教育、医療系専門学校の改革・運営・教育、難病の患者会の創設と運営、日本で初めての指定難病制度の立ち上げに関わることができたことは望外の喜びです。(近藤雅雄、2025年7月18日掲載)
PDF:研究の道しるべ、公開された主な研究成果

研究回想2.ポルフィリン研究会の創設と学術雑誌の創刊

 1980年、研究者としてスタートした「生化学若い研究者の会」の夏の学校にて、分科会「ヘムの生合成とその代謝調節」のオーガナイザーを行い、その内容を学術報告書として纏めました。その時に、将来ポルフィリンに関する研究会並びに学術専門雑誌を創ることを夢見ましたが、約10年後、夢が叶えられました。この内容については2025年5月21日掲載の「研究回想」と一部重複しますが、ここでは創設の「思い」、規約や組織、患者会との関わりなどを加筆しました。(下記PDF参照)

1.ポルフィリン研究会創設の思いと経緯
 1970年代、衛生学領域では低濃度鉛曝露によって赤血球ポルフィリン代謝の2番目の酵素δ-アミノレブリン酸脱水酵素(ALAD)活性が鋭敏に減少することから、鉛の生体指標として注目されていました。そこで、順天堂大学医学部衛生学教室千葉百子先生、東京労災病院坂井公先生などと勉強会を発足しました。そして、1986年12月13日に鉛作業者の職業検診時における鉛の曝露指標として赤血球ALAD活性を候補の一つに取り上げ、測定法の検討やその意義について、デ-タの収集や意見交換を行う目的でALAD会が発足、その後、ALAD研究会となりました。
 さらに、聖マリアンナ医科大学衛生学教室の工藤吉郎教授、千葉大学医学部衛生学教室平野英男助教授、大道正義講師、明治薬科大学梶原正宏教授等が加わり、ALADだけでなくヘム生合成経路およびその代謝全般に広がり、国立公衆衛生院の浦田郡平先生を代表世話人としてポルフィリン・ヘム研究会、ALAD-ポルフィリン研究会と名前が変わり、1988年7月16日に漸く「ポルフィリン研究会」として定着しました。そして、1991年12月に研究会が全国組織になるまで、順天堂大学、公衆衛生院、聖マリアンナ医科大学で合計14回、研究会を開催しました。研究会は毎回、報告書を刊行すると共に、梶原先生が赤血球プロトポルフィリン標準物質を作成し、順天堂大学、東京労災病院、聖マリアンナ医科大学、そして国立公衆衛生院との4施設共同研究によって鉛作業者の検診に重要な測定法の標準化を行い、発表しました(産業医学34(3):236-242,1992)。
 これまでに、ポルフィリンに関連する研究者は医学、薬学、工学、理学、農学、環境学などを専門とする分野と多く、これら他分野の専門家が一つの土俵の上で議論する機会はありませんでした。医学に限っても、血液学、皮膚科学、肝臓学・消化器学、小児科学、神経学、衛生学、病理学、救急医学、臨床代謝学、臨床検査学、診断学など多分野でそれぞれ独自の研究が成されていました。そこで、これら専門分野の境界を取り除き、ポルフィリンという共通物質で議論することからいろいろな研究の連鎖・進展が得られると考え、規約を作成し、全国組織として参加を公表しました。その結果、全国から産官学の研究者が数百名結集し、1991年12月14日にわが国で初めてポルフィリンという化学物質を基に多分野の専門家からなる学術研究組織「ポルフィリン研究会」が創設されました。
 その成果の一つとして、多分野の研究者に分担執筆をお願いし、研究会編集による成書、遺伝病・がん・工学応用などへの展開として「ポルフィリン・ヘムの生命科学」を(株)東京化学同人から出版しました(現代化学増刊27、1995年5月10発行) (下写真)。

2.ポルフィリン誌の創刊
 研究会発行の学術雑誌「ポルフィリン, Porphyrins」第1号を1992年7月25日に創刊、これを季刊定期刊行物として2011年、第19巻「Porphyrins」まで発行されました。筆者が出版に関わったのは第14巻までで、第15巻からは東京工業大学大学院大倉研究室内に事務局が移動しました。また、2012年からは組織が変わり、「ALA-Porphyrin Science」として第1巻が刊行され、現在に至っています。(近藤雅雄、2025年6月8日掲載)

PDF:ポルフィリン研究会の創設と研究会誌の創刊
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鉄芽球性貧血の新たなポルフィリン代謝異常の発見と病態解析

 鉄芽球性貧血は,血清鉄,フェリチンおよびトランスフェリン飽和度の高値と環状鉄芽球(核周囲に鉄で満たされたミトコンドリアを伴う赤芽球)の存在を特徴とする多様な一群の貧血疾患です。遺伝性鉄芽球性貧血と後天性鉄芽球性貧血に大別されます。最も頻度の高い遺伝性鉄芽球性貧血はX連鎖性鉄芽球性貧血(XLSA)で、現在までに100種類程度のδ-アミノレブリン酸合成酵素(ALAS2)の変異が確認され指定難病(286)に認定されています。鉄-硫黄クラスター形成不全などによりミトコンドリアでの鉄代謝に異常が生じ、ALAS2活性の著明な低下によるヘム合成不全を起こします。
 われわれは鉄芽球性貧血患者46例のポルフィリン代謝について検討しました。その結果、ALAS2活性の低値に対してポルホビリノゲン脱アミノ酵素(PBGD)活性の高値等の酵素異常とポルフィリン代謝物の異常、とくにプロトポルフィリンの増量を世界に先駆けて見出しました。さらに、遊離赤血球プロトポルフィリン(FEP)量が1mg/dl RBC以上を示した4例の患者には指定難病ポルフィリン症(254)の一病型である赤芽球性プロトポルフィリン症(EPP)と同様の皮膚の光線過敏症を合併していることを見出しました。
 そこで、ALAS2活性の低下にも関わらず、FEPが増量することに注目し、FEP値の変化と他のポルフィリン代謝関連因子、肝機能、血液検査データとの相関関係を追及しました。その結果、FEPとALAS2活性およびフェロキラターゼ活性には有意な相関(p<0.05)が認められました。また、ALAS2活性とアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)(p<0.01)およびASTとフェリチン、血清鉄(p<0.05)に有意な相関を認めました。さらに、因子分析の結果、FFPの変化が、尿中δ-アミノレブリン酸(ALA)、ウロポルフィリン、コプロポルフィリン(CP)Ⅰ、CPⅢ、ALAS2活性、網状赤血球数、フェリチン、AST、ALT、平均赤血球ヘモグロビン量(MCH)の変化と関連性のあることが明らかとなりました。とくにFEPの変化はフェリチンとMCHの関連性が大きいことが示唆されました。さらに、ASTやALTにも関連性も見出されたので、ALAS2活性の異常は赤芽球内鉄代謝、肝機能および肝内ポルフィリン代謝との関連性が示唆されました。
 さらに、最近ALAS2活性およびFEP量の両者が異常高値を示し、EPPと同様の皮膚光線過敏を診る新しい型の遺伝性ポルフィリン症、X連鎖優性プロトポルフィリン症(XLPP)が見出されましたが、ALAS2活性の上昇並びに本研究にて示したALAS2活性の減少の両者においてFEPの増量を見ることは興味深く、各種赤血球造血性疾患の病態機序を追及する上で重要な知見と思われます。(論文:近藤雅雄、網中雅仁:ALA-Porphyrin Science 2(1,2)19-26.2013から引用しました)(近藤雅雄、2025年5月11日掲載)
PDF:鉄芽球性貧血とポルフィリン代謝

ポルフィリン代謝を攪乱する多くの無機、有機化学物質

 自然界にはV、Ni、Mg、Cu、Zn、Fe、Coなどと結合した金属ポルフィリンが知られています。V、Niポルフィリンはシアノバクテリアから生産されたと推測されている原油中に多く含まれています。
 Mgポルフィリンは植物のクロロフィルとして、CoはビタミンB12として、また、Zn、Feはプロトポルフィリンと配位して生体内に存在します。Cuとポルフィリンとの結合も親和性が高く、このような無機元素との関りが深い。
 一方で、Pb、Cr、Cd、Sn、As、Hg、Al、Tlなどが体内に侵入すると、それぞれ機序は異なりますが、ポルフィリン代謝系酵素のほとんどがSH酵素であり、その働きを阻害してポルフィリンの代謝異常を引き起こします。したがって、ポルフィリン代謝関連物質の測定は先端産業および工業用に汎用される各種元素の環境および動植物への影響・評価の指標として有用です。
 これまでに、Pb、Cr、Cd、Sn、Mn、As、Hg、Al、Tl、Cu、Fe、Ga、In、Sm、Laやフリルフラマイド(AF2)、ダイオキシンヘキサクロロベンゼン(HCB)、ポリ塩化ビフェニル(PCB)、セドルミドカルバマゼピンフェンスクシミドDDCグリセオフルビン(GF)、フェノバルビタール、アリル基含有化合物、放射線、X線、アルコール、トリクロロエチレン、などのポルフィリン代謝系への影響がin vivo、in vitroで明らかになっています。(近藤雅雄、2025年5月6日掲載、2025年9月8日更新)
PDF:元素とポルフィリン代謝

ネズミの目から赤いプロトポルフィリンが涙液中に出現

 ハーダー腺は、主に哺乳類、爬虫類、鳥類などの動物に見られる眼窩内に存在する腺で、眼窩の筋肉や涙腺と隣接し、涙や保護物質を分泌する腺です。涙液の油層成分を分泌する役割があり、特に水棲動物では眼球を保護する働きがあります。人間ではマイボーム腺がこの役割を担いますが、ウサギなど一部の動物ではハーダー腺が主要な油層分泌腺として機能します。
 ハ-ダ-腺は特にげっ歯類に良く発達し、光受容、内分泌、免疫など、さまざまな機能が想定されています。特にラットで発達、不規則な形をし、「紅涙」として目やにや涙として現れることがあります。なぜ目から赤い色素を分泌するのかについてはわかっていませんでした。
 最近になって、英国の研究グル-プがヘムを合成する酵素活性が他の組織臓器に比べて極めて低いために、基質であるプロトポルフィリンが大量に蓄積し、涙液中に出現することがわかりました。これらのことは、ハ-ダ-腺のポルフィリン・ヘム合成の調節が他の組織と異なっていることを示唆し、その起源および分子進化などの点で非常に興味が持たれています。(近藤雅雄、2025年5月4日掲載)

ヘム合成系酵素の概要:基準値,生理的変動,臨床的意義等

 ヘムはグリシンとスクシニルCoAを縮合してδ-アミノレブリン酸(ALA)を生産するALA合成酵素から始まって、最終的に鉄導入酵素によってプロトポルフィリンに二価鉄が入り、ヘムが生産される。この間に6つの酵素反応が関与する。生産されたヘムはそれぞれの組織におけるアポ蛋白に配位して様々なヘム蛋白質(ヘモグロビン、ミオグロビン、チトクロームP-450、NO合成酵素、グアニル酸シクラーゼ、カタラーゼなど)となり、生体の呼吸システム、エネルギー生産システム、薬物代謝、血流調節、情報伝達システム、酸化ストレス防御システムなどを行う。すなわち、ヘムは生命維持に不可欠な機能の中心的な役割を果たしている。
 ヘム合成に関わる8つの酵素活性の測定は遺伝性ポルフィリン症の鑑別診断、不顕性遺伝子保因者(キャリア)や鉛中毒などのポルフィリン代謝異常症の診断に重要である。測定材料は、主に血液細胞、肝細胞、皮膚などの各種培養細胞など極微量の生検材料が用いられるが、症例数が少ないだけでなく、測定法および活性値が統一されていない。したがって、判定には必ず対照値を必要とする。

 酵素活性の測定方法はALA脱水酵素およびポルホビリノゲン脱アミノ酵素の両活性を除いて極めて煩雑である。わが国の医療現場ではヘム合成に関する8個の酵素についての活性測定は未だに行われていない。そこで、ポルフィリン代謝異常症の酵素異常を理解するために、この代謝(ヘム合成系またはポルフィリン代謝系という)に関連する酵素の概要として酵素活性の臨床的意義、基準値、異常値、生理的変動などの基本的事項を下記PDFに纏めた。酵素の活性測定法については本資料集の「ポルフィリン症の鑑別診断法:生化学及び酵素診断法(2025年4月21日掲載)」に記載した。(近藤雅雄、2025年4月24日掲載)

PDF:ヘム合成系8酵素の概要

ヘムは生命の根源物質であり生体恒常性の根幹に関与する

 私たちの身体には270種類の組織があり、37兆2千億個の細胞数(Eva Bianconi et al, Annals of Human Biology,40(6):463-71,2013)がお互い仲良く連絡し合って、生命・個体を維持しています。これら細胞の生命活動の中心となるのがヘムで、造血、代謝、解毒、神経、内分泌、免疫、抗酸化、抗加齢、運動などのさまざまな生体機能の根幹反応に関与する赤い色素物質です。例えば、血液中のヘモグロビンは“ヘム”とグロビンが結合したヘム蛋白として酸素を運搬する。血色素とも言います。これらヘムは各組織臓器でさまざまな蛋白質と結合し、ヘム蛋白質として生体の恒常性(ホメオスタシス)機能に重要な働きをしています。またヘムはストレス蛋白質であるヘム分解酵素によって分解されビリルビンに変換されますが、このビリルビンが各種ストレスによって発生した細胞内の活性酸素を分解します。図に関しては以下のPDFを参照して下さい。(近藤雅雄、2025年4月1日掲載)
PDF:ヘムと生体恒常性維持機能

晩発性皮膚ポルフィリン症の新たな酵素異常と発症機序

 晩発性皮膚ポルフィリン症(porphyria cutanea tarda, PCT)は肝のウロポルフィリノゲン脱炭酸酵素(UROD)活性の減少に基づくポルフィリン代謝異常症であり、ウロポルフィリン(UP)が体内に大量蓄積・増量し、それが原因で皮膚光線過敏症や肝障害を発症します。また、肝臓がんに移行するリスクが高いことが報告されています。しかし、PCTとがんについては、C型肝炎との合併率が高かったことからPCTに特異的にがんが発現するかどうかは不明です。
 PCTは遺伝的素因や何らかの体内因子に加えて、外からの因子、例えば、長期の飲酒、男性では前立腺癌治療のためのホルモン療法、女性では避妊を目的としたピルにそれぞれ関わるエストロゲン、あるいはC型肝炎HIVウイルス感染および肝への鉄沈着などが誘因となって発症しますがその機序は不明です。
 そこで、PCT患者が診断のために採取された約5mgの微量生検肝を試料として、ポルフィリン代謝関連物質の測定を世界に先駆けて行いました。
 その結果、PCTの肝障害発症機序として、長期飲酒などによって体内のマグネシウム(Mg)量が減少すると共に何らかの機序で肝に鉄が蓄積されます。この鉄は肝UROD活性を阻害するため肝にUPが肝臓に大量蓄積します。鉄やUPなどの強力な酸化物はコラーゲン生産を誘発し、肝障害が起こる原因となると推測されます。
 したがって、PCTの治療は、肝組織に蓄積した鉄およびUPの除去を目的とした瀉血療法の他に、MgやSeおよび抗酸化物質の投与についても治療の一選択肢と考えられます。詳細は以下のPDFを参照して下さい。(近藤雅雄、2025年3月21日掲載)
PDF:PCTの新たな酵素異常の発見

急性ポルフィリン症の神経細胞内ヘム合成系酵素の異常

 指定難病である急性ポルフィリン症急性間歇性ポルフィリン症(AIP)、ALAD欠損性ポルフィリン症(ADP)、遺伝性コプロポルフィリン症(HCP)、多様性ポルフィリン症(VP)の4病型が知られています。
 本疾患では共通して生命維持に不可欠なヘムの生産量が低下すると共にδ-アミノレブリン酸(ALA)やポルフィリンが過剰生産され、消化器、精神・神経、循環器、内分泌、泌尿器、代謝、運動など、多様な障害を起こします。
 症状は腹部症状、神経症状、精神症状が三徴をなし、腹部症状では腹痛、嘔吐、便秘(または下痢)が三徴をなします。症状は発作的に起こり、数日,数週間あるいはさらに長く続きます。これら腹部自律神経症状に加えて痙攣、意識障害、精神症状などの中枢神経障害、筋力低下、知覚異常などの末梢神経障害、そして、赤色尿が出現します。
 我われは末梢神経障害を呈したAIP患者の極期と症状が回復した寛解期の肝、腓腹神経、腎、骨髄、リンパ球など、微量採取された生検材料を用いて世界で初めてALA合成酵素(ALAS)、ALA脱水酵素(ALAD)およびポルホビリノゲン脱アミノ酵素(PBGD)の3つの酵素活性を測定しました。その結果、すべての組織でPBGD活性の50%低下を認めましたがALAS活性の上昇は肝以外認められませんでした。また、別のAIP患者の坐骨神経組織においても同じ結果でした。
 この結果は、極期のAIP患者の神経障害はALAS活性が亢進していないことから、PBGD活性の減少に基づく影響ではない。すなわち、肝で大量生産されたALAなどポルフィリン代謝産物による影響が明らかです。したがって、肝のポルフィリン代謝を正常化すれば治療可能であることは明らかです。また、PBGD活性の減少はAIPの診断に重要ですが、発症における直接的な原因とはならないことも明らかにしました。これらの結果は他の急性ポルフィリン症も同じ肝だけの障害であることを示唆しています。(近藤雅雄、2025年3月21日掲載)
PDF:急性ポルフィリン症の神経細胞内酵素異常の発見

骨髄赤芽球細胞内のALA脱水酵素インヒビターの諸性質

 ヘムは生命の根源物質であり、8つの酵素によって次々に代謝され、最終的に細胞ミトコンドリア内で合成されます。その第2番目の代謝を司るのがδ-アミノレブリン酸脱水酵素(ALAD)であり、δ-アミノレブリン酸(ALA)からピロール物質ポルホ(フォ)ビリノゲンの生産を促進するヘム合成の鍵酵素です。1977年、この酵素活性が骨髄赤芽球細胞のみにて加齢に従って著明に減少するのを見出し、それと逆相関してALAD活性を特異的に阻害する蛋白質を発見しALADインヒビターと命名しました。このインヒビターの活性は人でも見つかっていますが、種差があります。
 ALADインヒビター活性がカルシウムによってその阻害力が強力になることから、特に老人にとっては貧血の原因となるでしょう。また、亜鉛やビタミンBによってインヒビター活性は阻害されることから、ヘム(ヘモグロビン)合成を促進するにはこの2つの栄養素は必須となります。
 この報告は約50年前ですが、血液学においてヘモグロビン合成上、重要なことなので紹介しました。当時の論文や講演のプレゼンターション方法なども今と異なっていたことも併せて紹介しました。以下のPDFを参照してください。(近藤雅雄、2025年3月21日掲載)
PDF:骨髄赤芽球細胞内の ALA 脱水酵素インヒビターの発見とその諸性質

ヘムを中心とした細胞・組織内活性酸素除去システムとは

 意外と知られていないのが生体の「三原色」です。例えば怪我などで皮下内出血したときに、まず「赤色のアザ」ができますが。時間が経つと「青色のアザ」となり、最後に「黄色」となって消えていきます。この色の変化に興味を持ちました。この3つの変化はストレスによっても組織で起こることが分かりました。この黄色い色素はビリルビンといって細胞を各種ストレスから守っていたのです。
 今日、私たちの普段の生活から多様なストレスを受け、細胞内に活性酸素が発生します。この活性酸素はヘム分解酵素遺伝子を発現し、ヘム分解酵素(ヘムオキシゲナーゼ,HO-1)を誘導し、赤い色素“ヘム”を分解して青い色素“ビリベルジン”を生産します。このビリベルジンは還元酵素によって黄色い色素“ビリルビン”に変わります。実は、このビリルビンが細胞内の活性酸素を除去し、細胞を活性酸素から守っていたのです。これまで、ビリルビンは黄疸の原因物質として悪者扱いでしたが、実は大変重要な働きをしていたのです。その他、ヘム蛋白であるカタラーゼやペルオキシダーゼも活性酸素を分解する酵素として有名です。この壮大な活性酸素除去システムが、ヘムを中心として行なわれていたのです。
以下のPDFを参照ください。(近藤雅雄、2025年3月12日掲載)
PDF:ヘムを中心とした細胞・組織内活性酸素除去システム

公害認定に関わる慢性砒素被曝者の症状と新たな生体指標

本原稿は、専門誌「ポルフィリン」7巻1号:51-57頁,1998年7月に掲載された筆者らの論文「慢性砒素被曝経験者のポルフィリン代謝異常」を修正して掲載しました。

 某国立大学附属病院にて、某県にあった「某砒素(As)鉱山」地域で生まれ育った38歳女性(A氏)が23年前に常染色体優性遺伝の急性間歇性ポルフィリン症(AIP)と診断され、兄もその病気で死亡したと伝えられていた。その後、A氏は妊娠を希望し、某私立医科大学附属病院に相談し、病気の発症予防のための管理を依頼した。そこで、病院より病状把握のため血液、尿、糞便を採取し、筆者にポルフィリン代謝関連物質の検査を依頼されました。
 その結果、生化学および酵素診断によって、20年以上経って初めてAIPではないことが判明しました。同時に、砒素中毒に特異的な、新たなポルフィリンの代謝異常を見出しました。その原因を究明するためにA氏の家族歴、生活習慣・環境因子などの調査を行いましたところ、砒素被曝経験(中学卒業迄の15年間、鉱山地域の井戸水を飲用していた)があることが分かりました。そこで、同じ地域に住む2名を加え、合計3名のポルフィリン代謝について検討した結果、その代謝異常が砒素中毒に特異的であったことから、慢性砒素中毒の新たな生体指標となることが推測されました。(近藤雅雄:2025年2月26日掲載)
PDF:砒素中毒における新たな生体指標

著書19~21.医学書「指定難病 日本のポルフィリン症」3部作

 ポルフィリン症について、利用目的の違いによって1.ポルフィリン症のすべて、2.臨床研究編、3.臨床医編の3部(冊)を出版しました。
 まず、1部はポルフィリン症の診断・治療、患者の権利、指定難病・未承認薬獲得までの経緯など医学・医療の総合的書物として纏めました。すなわち、ポルフィリン症の歴史、病因、診断法、診断基準、治療法、疫学・臨床統計、予防法、生活実態などについて、40年以上に亘るポルフィリン症の研究成果を独自の視点から科学的に纏めました。また、未承認薬や指定難病の承認の経緯などについて纏めました。(B5版、321ページ)

 構成は「Ⅰ.医学編」と「Ⅱ.患者編」に分け、医学編(第1章)ではポルフィリン症の医学と題し、遺伝性ポルフィリン症が「指定難病」認定のきっかけとなった調査研究として、2009年、厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業)の「遺伝性ポルフィリン症の全国疫学調査ならびに診断・治療法の開発に関する研究」研究班(研究代表者:筆者)を中心に纏めた診断基準および治療指針を編集・修正して記載すると同時にポルフィリン・ヘム生合成機序ならびにその調節機序、遺伝性ポルフィリン症の発症機序などについて纏めました。患者編(第2~5章)では患者を中心とし、第2章は患者さんの権利獲得に向けた活動(指定難病、未承認薬承認)を中心に書きました。第3~5章は患者さんの治療後の現状、診療体制の問題点、患者さんの生活習慣改善、健康維持に関する諸情報を纏めました。

 本書が医師などの医療関係者、医学研究者等々の目に留まり、ポルフィリン症患者の診断の向上並びに臨床研究の発展に繋がることを期待しています。そして、何よりも患者さんのQOLの向上と健康寿命の延伸、そして、患者さん方が未来に向かって安心・安全な社会活動が送れるよう、病気が根治可能な社会となることを願っています。
 そして、2部については、2023年4月、「ポルフィリン症2」(B5、200ページ)としてポルフィリン症の診断と治療について、臨床研究用に纏めました。
また、3部については「ポルフィリン症3」(B5,252ページ)として臨床医用に診断と治療に直ちに利用できるよう纏めました。(近藤雅雄、2023年4月11日掲載)

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鉄欠乏性貧血~ヘム合成とミネラルバランスに関する新知見

 鉄欠乏性貧血は発展途上国のみならず先進諸国においても非常にポピュラーな疾患で、すべての年代での発症が認められます。この原因として、発展途上国では栄養欠乏が、先進諸国では栄養バランスの悪い食事が、各々指摘されています。鉄欠乏状態が続くと,まず貯蔵鉄が減少し,次に血清鉄,最終的にヘモグロビン量が減少し,貧血の発症に至ります。貧血になると免疫機能が損なわれ、心身の様々な機能が低下します。
 途上国においてはヨード、ビタミンA、鉄、亜鉛の4大微量栄養素欠乏症の中で、鉄欠乏性貧血症は、最も対策の遅れている健康問題の一つです。我々は血液学的検査と症状から12例の典型的な鉄欠乏性貧血患者を見出し、本症の病態生理として新たにヘム合成とミネラルバランスに関する知見を得ました。そこで、貧血の原因、症状、予防と治療を加えて報告します。(参考文献:Kondo M et al. Iron deficiency anemia, in PORPHYRINS 14(2) 99-104, 2005) (近藤雅雄、2021年11月8日掲載)
PDF:鉄欠乏性貧血症

植物へのALA投与は抗酸化ミネラルとフラボノイドを増やす

 近年、活性酸素が原因で起こる各種疾病からの予防及び健康維持・増進を目的としたフラボノイドの抗酸化能が注目されています。フラボノイドには約7000種ともいわれる多数の化学物質が報告され、その抗酸化能も異なります。そこで、約32種類の抗酸化物質についての抗酸化能を検討した結果、ルテオリンというポリフェノールが細胞内外にて極めて抗酸化能が高いことが分かりました。我々は、各種フラボノイドの高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析法の開発を行うと同時に、各種植物のルテオリン量を調査した結果、ピーマンなどのベルペッパーに多く含まれていることを見出し、ピーマン中の各種フラボノイドの定量分析を行いました。 
 さらに、最近注目されている肥料ペンタガーデン(5-アミノレブリン酸(ALA)配合肥料:株式会社誠和アグリカルチャ)を投与し、栽培したピーマンのフラボノイドおよびミネラル量に及ぼす影響について検討を行ったところ、抗酸化作用を有するポリフェノール類の増量並びに多くの必須ミネラル、とくに免疫や抗酸化作用を有するミネラル類が増量することを見出しました。

 ALAはクロロフィルやヘム合成に不可欠な鍵となるアミノ酸であり、このALAを配合したペンタガーデンまたはペンタキープには植物生長促進効果、光合成促進、バイオマスの増大、糖度の上昇、硝酸含量の低減、ビタミン含量の向上、低温・低照度耐性、耐塩性などの様々な機能が知られ農林業、施設園芸、野外圃場、都市や砂漠の緑化など多方面で利用されています。

 最近、筆者も家庭園芸に用いたところ、花はより鮮やかに、葉はより緑に、また野菜や果物はより大きく、糖度も増し、各種栽培には欠かせない肥料として楽しんでいます。
 ペンタガーデンの“ペンタ“の意味はギリシャ語で5を指し、5番目の炭素にアミノ基を持ったレブリン酸と言うことで、5-アミノレブリン酸と言い、このアミノ基が植物の成長に大変重要であることからペンタシリーズが開発されたものと推測されます。近藤雅雄(2019年6月10日掲載)
 以下のPDFを参照して下さい。
PDF:ペンタガーデンは植物中の各種必須ミネラル及び抗酸化物質フラボノイドを増量させる

ポルフィリン症研究の歴史と世界および日本の第1例報告

 ポルフィリン症は「病気の主座がポルフィリン代謝の異常にある一群の疾患」と定義します。ポルフィリン症はポルフィリン・ヘム合成の中間代謝物が過剰に体内に蓄積することによって発症する遺伝性の指定難病で、患者は皮膚、消化器、精神・神経、循環器、運動器、内分泌等の多彩な機能障害および症状を呈することが特徴です。
 ポルフィリン症は医聖ヒポクラテスにより既に紀元前460年頃に記載されていることが報告されていますが、今日的には1874年Schultzによる先天性赤芽球性ポルフィリン症(congenital erythropoietic porphyria, CEP)と思われる症例報告が初めてです。その後、1912年、有機化学者のH. Fischerによってポルフィリンの本格的な研究がスタートし、患者のぶどう酒様の尿の中から赤い色素を分離し、その構造を決定してからポルフィリンの生化学、臨床医学が急速に進展しました。本症の原因は長い間不明でしたが、1950年代には米英の研究者により、ヘム合成に関与する各酵素が発見され、ポルフィリン・ヘムの生合成経路が解明されました。その後、1960~1970年代には各種遺伝性ポルフィリン症の発見および酵素異常が次々と明らかにされ、1995年までにすべてのポルフィリン代謝系酵素cDNAのクローニングが完成し、ポルフィリン遺伝子異常の解明が一気に進んだ。現在では生化学的、分子生物学的、臨床医学的に総合的なアプロ-チが成されるようになりました。
 ここでは、ポルフィリン症の基礎と臨床の研究が一体化して歩んできた歴史的事実と、ポルフィリン症の各病型について世界および日本で初めて発見された症例を紹介します。(近藤雅雄、2017年3月5日掲載)
PDF:ポルフィリン症研究の歴史と世界及び日本の第1例報告

先天性代謝異常症である「ポルフィリン症」の総説(英語)

Porphyrias are a group of disorders, which induce excess production of porphyrins, as well as cause their accumulation in the tissues. They also increases the excretion of metabolites, as a result of inherited or acquired deficiencies in the activities of the enzymes of the heme biosynthetic pathway. There are 8 types of porphyria. Like other congenital metabolic disorders, this disorder is very rare, has attracted attention for a long time because of its specific symptoms. Porphyria manifests a wide variety of symptoms, including cutaneous, psychoneurotic, gastrointestinal, and endocrine; endogenous and exogenous environmental factors influence the manifestation of these symptoms. Therefore, acute porphyria may be fatal because of false and/or delayed diagnosis. A poor prognosis may be anticipated. Therefore, it is important that we have accurate knowledge of porphyria. This article reviews on the abnormal porphyrin metabolic disorder.
以下のPDFを参照して下さい。(近藤雅雄、2017年1月8日掲載)
PDF:Porphyrias

ALAを合成する酵素の新しい測定法とミトコンドリア内様態

 δ-アミノレブリン酸(ALA)を生産する酵素、ALA synthase(ALAS)はsuccinyl-CoAとglycineを基質として活性測定されることが世界的に広く知られています。このALASはヘム合成(ポルフィリン代謝)の律速酵素として最も重要な酵素です。
 肝性ポルフィリン症などのヘム合成系の酵素障害があるとALAS活性が増量してALAの生産を高めることが指摘され、ポルフィリン代謝異常で最も中心的役割を果たす酵素です。しかしながら、実際に肝臓のポルフィリン代謝障害を起こす晩発性皮膚ポルフィリン症の肝ALAS活性は増加しないことが広く知られ、この矛盾を説明することがこれまでにできませんでした。
 そこで、肝性ポルフィリン症患者の生検肝微量組織からα-ketoglutarateとglycineを基質としてALAS活性を測定した結果、succinyl-CoAとglycineを基質とした値よりも高値が得られ、ポルフィリン代謝をより反映していることを見出しました。すなわち、肝ALAS活性の測定にはこれまでの方法と異なって、α-ketoglutarateとglycineを基質として測定した値の方がより肝性ポルフィリン症の病態を反映していることが示唆されると同時に肝ALAS酵素の作用機序がほぼ分かりかけてきました。
 その内容は2015年9月の学術雑誌ALA-Porphyrin Scienceに掲載されました。以下のPDFを参照して下さい。(近藤雅雄、2015年11月10日掲載)
PDF:肝性ポルフィリン症の肝ALAS活性