ポルフィリン代謝を攪乱する多くの無機、有機化学物質

 自然界にはV、Ni、Mg、Cu、Zn、Fe、Coなどと結合した金属ポルフィリンが知られている。V、Niポルフィリンはシアノバクテリアから生産されたと推測されている原油中に多く含まれている。
 Mgポルフィリンは植物のクロロフィルとして、CoはビタミンB12として、また、Zn、Feはプロトポルフィリンと配位して生体内に存在する。Cuとポルフィリンとの結合も親和性が高く、このような無機元素との関りが深い。
 一方で、Pb、Cr、Cd、Sn、As、Hg、Al、Tlなどが体内に侵入すると、それぞれ機序は異なるが、ポルフィリン代謝系酵素のほとんどがSH酵素であり、その働きを阻害してポルフィリンの代謝異常を引き起こす。したがって、ポルフィリン代謝関連物質の測定は先端産業および工業用に汎用される各種元素の環境および動植物への影響・評価の指標として有用である。
 筆者らは、Pb、Cr、Cd、Sn、Mn、As、Hg、Al、Tl、Cu、Fe、Ga、In、Sm、Laやフリルフラマイド(AF2)、ダイオキシンヘキサクロロベンゼン(HCB)、ポリ塩化ビフェニル(PCB)、セドルミドカルバマゼピンフェンスクシミドDDCグリセオフルビン(GF)、フェノバルビタール、アリル基含有化合物、放射線、X線、アルコール、トリクロロエチレン、などのポルフィリン代謝系への影響をin vivo、in vitroで明らかにしてきた。酵素障害について下記のPDF参照。(近藤雅雄、2025年5月6日、掲載)

PDF:元素とポルフィリン代謝

言葉はなかったが癒された。私は忘れない「リヴの物語」

 ロングコートチワワ犬(雄、「国際公認血統証明書」)生後2か月が家族となり、息子がリヴと命名した。しかし、12歳10カ月、近くの動物病院にてその小さないのちが消えた。
 悲しみ癒えぬ間にリヴの物語を執筆した。この物語は、日常生活の中でのさまざまな場面での触れ合いによって、私たち家族にたくさんのこころの安らぎと楽しさ、癒し、励まし、笑い、幸せをプレゼントしてくれたことに感謝し、短い生涯を写真と文章で追憶した47ページにわたる犬の物語。

 リヴは散歩や車に乗るのが怖く、1日中家の中にいた。外に出しても、車に乗せても体を震わせて怖がり、すぐに帰る。家の中では走り回り、いつもそばにいて、楽しませてくれた。 リヴとの思い出から、改めていのちの大切さと生きることの大切さ、そして感謝するこころを学ぶ。物語を作成中に、リヴの写真と病歴から、これまでに実に多くのからだとこころのサインを家族に送っていたことに気づく。そして、さまざまなサインに気付かなかったことを悔やむ。  また、犬の死因を究明することは、私たち人間においてもいのちとは、救急医療とは、について考える機会となった。それは、本来まだ生きたであろういのちを救うことができなかったことに対する自分への憤りであった。しかし、そこから「いのちを大切にするこころ、生きるこころ、他者を思いやるこころ」といった、人間としての「こころ」の基本を学ぶ。そして、「健康と病気」について考える良い機会が与えられる。生き物は病気になる時には必ず、何らかのサインを心身から出していることを見逃さないようにし、早め早めに対応することが大切だ。とくに言葉がない動物への日頃の感謝を忘れないことである。

 リヴの死から学んだことは多い。今後残された人生にプラスになるよう、前向きに歩み続けよう。この地球に棲むすべての生き物は、いずれは死を迎える。それが早いか遅いかではなく、いかに生きたかどうかが大切だ。たとえ、短いいのちであっても、一生懸命生きれば、それでよい。家族として、共に歩んだのだ。
 私はこの物語を作成してから、日々を懐かしく、回想している。(近藤雅雄、2025年5月1日掲載)

「前へ」の詩:生きるために人生の目的をしっかり持つ

 1949年、団塊世代の最後に生まれ、戦後の急速な経済発展を経験し、小・中・高、大学時代、そして社会人として、仕事と仲間と環境に恵まれ生きてきた。平和な時代であった。
 時代が変わったのは2020年の「パンデミック」、そして、2022年の「ロシアによるウクライナ侵攻」、たった数年間で平和であった時代が大きく変わろうとしていた。
 古希を過ぎ75歳、終の人生を迎えるにあたって、過去の多くの出来事を記録し、後世に遺すことは、次代に生きる人に役立つかもしれない。また、生きるヒントになるかもしれない。しかし、「パンデミックと戦争」そして「ITやAIの急速な進展」による世界への影響、そして日本では「南海トラフ首都直下地震富士山の噴火など」の災害予測と「台湾有事」「関税問題」などと時代は逆行し、次代がどのようになるか想像がつかない方向へと突入している。

 人は誰にでも死は訪れる。死を考えた時、大切な言葉を一つ挙げるならば、それは「前へ」であった。死に行く者も、生きていればさまざまな喜怒哀楽、ストレスが日々変化して訪れる。それをうまくコントロールし、「前へ」突進む努力をする。そのためにも人生の目的を持って努力する。そうすれば、新しい景色を見ることができるであろう。そして、その景色が人類・人間社会にとって本当に幸せなものであるかもしれない。

 人間は、前向きで、素直に社会に貢献する謙虚な姿勢を持ち続けることが大切だ。それを行動に移し、新たな道を拓き、家族と共に生きて行く。そして、「1日でも長く健康で、おおらかに前へ生きる」、が最も基本的で豊かな人生といえる。そこに「感謝する人がいて、そして、感謝される」そういう人生は真に幸せである。
 添付したPDFに「人類と地球の世界平和に向かって「前へ」踏み出そう」という詩を掲載しましたので参照して下さい。 (近藤雅雄、2025年4月4日掲載)
PDF:前へ生きる{詩」

健康と病気シリーズ10.精神療法として治癒力を高める言葉

 現代医療では精神療法として①行動療法、②認知療法、③対人関係療法、④精神分析、⑤精神力動的精神療法、⑥支持的精神療法の6種類に分類しているが、これらの治療に言葉が大切であることは言うまでもない。
 精神障害の原因は遺伝・生物学的要因(身体的要因)、心理的要因、環境的要因(社会的要因や文化的要因を含む)などが複雑に関わっていると考えられる。そこで、精神療法として、これら要因を取り除くことが出来れば自然治癒は増強すると考えた。そして、がんなど難治性疾患の自発的治癒を目的として言葉による治療をとりあげた。また、筆者が肺炎で入院した病院の現状についても以下のPDFに記した。(近藤雅雄、2025年3月28日掲載)
PDF:健康と病気シリーズ10.精神

高齢者のQOL向上と免疫能を高める日本型食生活の解析

研究目的
 わが国が世界的に健康長寿を誇るようになったのには、医学の進歩のみならず、わが国の風土と歴史の中に根付いた日本型食生活の影響が大きく関与していると思われる。しかしながら、死因の3位までの疾患は生活習慣の偏りがその主な原因であると考えられることから、超高齢・少子化の進む中で、高齢者のQOLを高め、これら疾患の罹患を予防し、健康で長生きできるような食生活の提唱が望まれる。

本研究では、以下の5つの課題について検討した。
1.食品中の抗酸化成分の総合評価
2.日本人高齢者の食事摂取状況の解析
3.抗酸化食品ピーマン食摂取による高齢者への介入試験
4.中・高齢者の血液中抗酸化ミネラル濃度の解析
5.老齢動物の抗酸化および免疫能増強の開発

 QOLを高める上で極めて重要な因子である免疫能の向上とその機序解明を目的とした日本型食生活を踏まえた先駆的な栄養学的研究を行った。また、中・高齢者の血液中の免疫能に直接影響を与える抗酸化元素濃度や抗酸化酵素活性などを測定し、酸化ストレスに対する防御機能についての検討を行った。さらに、国民健康・栄養調査の結果をもとに、日本人の年齢別食生活の傾向を把握し、高齢者の食生活の特性に基づいた免疫能調節因子の検索を行った。そして、高齢者の抗酸化および免疫力を増強させる因子の検討を行い、新たな増強因子を発見した。
 以上の結果をもとに、高齢者の免疫能および抗酸化能を高める食品類を選択し、日本型食生活を中心とした高齢者への介入試験を行い、免疫能を高め、高齢者のQOLを高めるような食生活の提唱をする。なお、紙面の都合上、酸化ストレスが免疫細胞に及ぼす影響に対する分子生物学的手法を用いた解析実験に関しては割愛した。

 本内容は農林水産省農林水産技術会議平成14~17年度「日本型食生活の生体調節機能効果の解明」によるプロジェクト研究課題「高齢者のQOL向上のために免疫能の健全性を保持する日本型食生活の解析」で得られた成績の一部を修正して以下のPDFに纏めた。(近藤雅雄、2025年3月25日掲載)
PDF:高齢者の健康増進研究

忘れてはいけない新型コロナウイルス感染とパンデミック

 2019年12月以降に中国武漢市で発生した新型コロナウイルスによる感染症が大流行、世界を震撼させた。世界保健機構(WHO)は新型コロナウイルスをCOVID-19と命名し、2020年3月11日、「新型コロナウイルスはパンデミックとみなすことができる」と宣言した。
 このパンデミックからクラスターという言葉が初めて使われた。集団感染に移行することから個人と個人の距離を十分に開ける政策、アクリル板で遮断する対策、喚起、アルコールによる手指の消毒、マスクの着用が当たり前となり、習慣化した。
 多様なイベント(スポーツやコンサートなど)では大声を出さない、マスクの着用、人数規制などさまざまな対策が施され、典型的なのが2021年の東京オリンピックである。無観客となり、これまでのオリンピックの景色を一変させた。
 このパンデミックの原因、推移、行政対応等は風化させることなく、次代に引き継いでいかないといけない。ここでは①新型コロナウイルス発生の疑義、②迷走する診断法と疫学、③迷走する治療法、④各国の感染対策と予防、⑤わが国の行政対応、⑥教育の現場と社会の混乱、⑦パンデミックの収束、⑧パンデミックその後、公衆衛生の重要性などについて記録した。以下のPDFを参照してください。(2025年3月20日掲載)
PDF:新型コロナウイルス

こころとからだの健康(19)社会の急速な変貌と大学教育

 戦後の急速な発展に伴い、大家族の「集団」から核家族の「個」の社会へ、住居は木造建造物から鉄筋コンクリートへ、さらに、食生活は日本型食生活から、欧米など世界中の料理を自由に取捨選択できる豊かな自由型食生活へと時代はおおきく急速に変化しました。
 このような「家族」「食」と「住」という生活の根源的な部分だけでなく、日本は世界でもまれな食品ロスが多く、自殺率の高い国となると共に国家や組織に対して無関心で、脆弱な国民が増加してきています。また、格差が増し、超少子・高齢社会という少数単位での生活環境がこころとからだをさらに脆弱化しています。
 こうした現実は、とくに次世代をになう子どもたちの「対人技術の発達の遅れ」など各種脳力の低下が起こり、日本の未来において計り知れないほどの損失が生じるという危惧感を抱きます。
 一方で、遺伝子を用いた治療法の開発や日常生活の中にITAI技術が急速に発展し、今まさに「こころとからだの健康」を重視した教育が必要になっています。
 大学教育が全入時代となった今日、大学の質保証向上に対するさまざまな改革、グローバル化が行われていますが、教養の空洞化が年々大きく拡大し始めているように感じてなりません。人間社会と科学技術の発展との間に大きなラグが生じているのが現状であると思われます。 (近藤雅雄、2025年3月15日発表)
PDF:社会の変貌と大学教育

難病患者と大学病院医師:超稀少疾患研究の推進を望む

 難治性疾患の患者を有名私立大学病院に紹介し、入院した時、5~6人の医師たちにぜひ症例報告をして欲しい旨をお願いしたところ、一人の医師が「本症についてはすでに多くの報告があり、本症を発表してもその価値がない」と述べ、笑われたことを覚えている。多くの医師が同じ考えであろう。医師からすれば、日常の業務が忙しく、これまでに報告がない新しい発見などがあれば率先して公表するであろう。よほど新しい内容がなければ発表しないものだ。

 しかし、本症について調べたが、100万人に数人の発症といった極めて症例数が少ないことから、情報も少なく、十分な臨床統計もないことがわかった。したがって、疫学も勿論ない。本症のような超稀少疾患については症例が見つかれば、これまでに報告されていても、必ず論文として、誰でも検索して見られるように公表することを義務付ける必要があるのではないか。また、医療関係者は患者がいればぜひ国内外の医学会や研究会で報告し、症例報告として記録を残してほしいと願う。患者によって症状や治療の効果も異なるはず。その事実が大切なのである。

 医師や患者も情報を知りたがっている。大学病院の医師は「報告する価値がない」と言っていたが、それが医学の発展を妨げる原因ともなる。情報は多い方が良いのに決まっている。特に超稀少がんなどの難治性疾患においては患者数が少ないことが原因で治療研究が進まないことが深刻化しているのではないか。また、公表しないことは稀少疾患に対する治療上の不都合な真実も疑われかねない。(近藤雅雄、2025年3月8日掲載)

健康情報13.栄養素の豊富な「にがうり」で疲労回復

 季節の変わり目は、気象の変化による持病の悪化や自律神経の乱れなどによってさまざまな症状がでます。そこで、この間を健康で乗り切るための一例を紹介します。夏バテ等の疲労回復に効果がある「にがうり」を紹介します。

 「にがうり(苦瓜)」は、ゴーヤとも呼ばれていますが、このゴーヤとは沖縄地方の方言。ゴーヤには蛋白質、炭水化物、脂質、ビタミンC、ビタミンB1、B2、B6、K、ナイアシン(B3)、パントテン酸(B5)、ビオチン(B7)、葉酸(B9)、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、鉄、亜鉛、銅などの機能性栄養素および食物繊維を豊富に含んでいます。

 ゴーヤは疲労回復、血糖値の調節、脂質代謝の調節、貧血予防、血圧調節、むくみ・便秘の解消、ダイエット、老化防止・美肌、紫外線・シミ対策、肌荒れ・ニキビ予防などに有効であると言われています。とくに、ビタミンCはキュウリの14mgやトマトの15mgに対して5倍以上も含まれ、野菜の中でピーマンと同様、加熱に強いという特性を持っています。また、鉄分はほうれん草の約2.3倍含まれ、葉酸とともに貧血の予防になります。ビタミンB群は生体エネルギー(ATP)の生産に不可欠で、疲労回復、皮膚や粘膜の正常化に、カリウムは腎臓でナトリウムの排泄に働くので血圧の低下にそれぞれ役に立ちます。

 苦み成分としてチャランチンとモモルデシン、コロソリン酸が含まれています。チャランチンとコロソリン酸は植物インスリンとも言われ、糖尿病の血糖値改善に役立つと古くから注目されています。ヒトのインスリンと同様に肝臓や筋肉へのブドウ糖の取り込みを促進し、グリコーゲンの合成を促すことが報告されています。

 動物実験では糖尿病改善効果、抗ウイルス作用、抗炎症作用、コレステロール低下作用、抗がん作用、免疫調節なども報告されています。チャランチンやモモルデシンには活性酸素を還元して無毒化する作用も報告されています。

 食物繊維は100g中水溶性0.5g、不溶性2.1g含まれ、腸内の善玉菌の増殖を促進し、糞便量を増やし、腸内環境を整えることでしょう。便秘改善に役立ちます。サポニンはコレステロールや老廃物の排出を促進し、動脈硬化、糖尿病、がんの予防、胆汁酸の分泌や産生を促します。
 ただし、ゴーヤには血糖低下作用のある成分が含まれていますので、子どもや高齢者、糖尿病患者の食べ過ぎには注意してください。(近藤雅雄、2025年3月8日、掲載)

健康情報12.冬至は「かぼちゃとゆず湯」で乗りきる

 季節の変わり目は、気象の変化による持病の悪化や自律神経の乱れなどによってさまざまな症状がでます。そこで、この間を健康で乗り切るための一例を紹介します。

 冬至とは24節気の一つで、1年で昼が最も短く、太陽の光が弱まって、夜が長い日になります。そして、冬至の日には冬至かぼちゃや冬至粥(小豆入りのお粥)を食べると風邪や中風(現在の脳出血、脳梗塞に当たるもの)にならないという言い伝えがあります。
 かぼちゃは本来夏の野菜です。切ったり、傷を付けたりしなければ長期保存が出来るので、夏の太陽を浴びたかぼちゃを大事に保存し、風邪が流行したり緑黄色野菜が不足したりする冬期にかぼちゃを食べるという先人の教えもあります。

 かぼちゃは「南瓜」とも書き、別名「唐茄子」、「南京」、「ボウブラ」とも呼ばれますが、原産地は中央アメリカです。日本には戦国時代の末期頃にポルトガル人によってカンボジア経由で持ち込まれました。このときにカンボジアがなまって「かぼちゃ」になったそうです。かぼちゃは野菜の中でも栄養価が高い優れた野菜であり、β-カロテン、ビタミンC,ビタミンEといった抗酸化ビタミンを大量含んでいます。したがって、体内に蓄積した酸化毒(活性酸素)の除去と感染症予防には不可欠な野菜です。寒い日にはかぼちゃを食べて風邪を予防しましょう。次は柚子(ゆず)です。

 ゆず湯というのは、お湯に入り、病気を治す湯治(とうじ)=冬至という語呂合わせからきているそうです。また、柚子(ゆず)=「融通(ゆうずう)」がききますように、という願いも込められているそうです。柚子の高貴な香りと酸味は邪気を避け、運を呼び込む前の厄払いの目的でも使われています。
 「ゆず湯に入ると、一年間風邪をひかない」と昔から言われています。柚子には血行を促進して冷え性を和らげ、身体を温めて風邪を予防する働きがあります。果皮、果肉、種のすべてに効能があり、果皮にはビタミンCやクエン酸が含まれていて美肌効果があります。果肉にはヘスペリジンというポリフェノールが柑橘類の中では極めて多くミカンの20倍、レモンの3倍で、血管の強化、血流、高血圧、脂質代謝、肩こりや冷えの改善などの効果があります。種にはペクチン、ピネン、リモネン、ナリンジンなどが含まれ糖・脂質代謝調節、抗炎症作用など多様な効果が知られています。
 捨てるところがない柚子はまさにSDGs (Sustainable Development Goals)に適した柑橘類の王様といえます。(近藤雅雄、2025年3月8日掲載)

健康情報11.季節の変わり目は「キムチ」で健康強化

 季節の変わり目は、気象の変化による持病の悪化や自律神経の乱れなどによってさまざまな症状がでます。日本には四季があり、冬から春、春から夏、夏から秋、秋から冬と4階の変化を感じます。この間を健康で乗り切るための「キムチ」の例を紹介します。

例えば梅雨(抗酸化食品キムチ)
 5月の連休が終わると、次に来るのはじめじめした梅雨、その次に来るのが暑い夏。この季節を乗り越えるための食品の一つとして「キムチ」を紹介します。
 キムチの原材料によって栄養成分は異なりますが、よく使われる野菜(白菜や大根)にはたくさんのビタミンやミネラルが豊富に含まれています。そのために米中心の食生活に不足しがちなビタミンBの吸収を高めたり、腸炎、結腸炎などの疾病を抑制する働きや体内の脂肪を減らして動脈硬化や肥満を予防したり、活性酸素を消去したりする効果があります。
 キムチは梅雨に限らず、1年中の食べ物ですが、季節の移り変わりにはとくに免疫力を高めるのに効果的な食材です。その理由として、キムチ唐辛子のトウガラシはシシトウ、パプリカ・ピーマンの仲間で、暑さに強く、真夏でも実がつきます。そして、ピーマンと同様ルテオリンなどの強力な抗酸化ポリフェノールを多く含みますので、抗酸化能および免疫能の増強に効果的な食品といえます。(近藤雅雄、2025年3月8日掲載)

健康情報9.「りんご」は病気の予防と健康増進に不可欠

 りんごは不思議な果物です。りんごに含まれているビタミンCは100g中に4mgで、食品の中ではさほど多いわけではありません。しかし、リンゴにはビタミンCを効率よく体内に取り込むのを助ける成分が含まれているため、含有量から予測される以上に血液中のビタミンCが増えると考えられます。国立がん研究センターが行った5年間の調査によれば、サプリメントでビタミンCを1日50mg摂取したグループの血液中ビタミンCの増加量は13.0%で、500mg摂取したグループでも増加量は38.5%でした。したがって、リンゴ摂取で血液中のビタミンCが34%増加したことを、サプリメントに直すと1日約500mgのビタミンCを摂取したことと同等になります。このことは、サプリメントよりも食品から摂取する方が効率的であるといえます。
 ビタミンCは、抗酸化力が強く、さまざまな生活習慣病の予防に有効です。脳卒中、脳梗塞、がん、壊血病などの予防、ストレス解消、色素沈着の防止、白内障予防などに有効であると報告されています。さらに、りんごには良質な食物繊維が含まれ、血液中の中性脂肪を減らすのに効果的です。このりんごの水溶性食物繊維(リンゴペクチン)を摂取するとアレルギーの引き金と考えられているヒスタミンを下げる効果が明らかになっています。また、りんごは肌荒れや「にきび」の原因となる便秘を解消する力が強く、かつ、アラビノオリゴ糖はビフィズス菌を特異的に増殖させることも見出されています。さらに、カリウムなどのミネラルが豊富であり、血圧上昇を抑えます。また、ポリフェノールもたくさん含まれています。りんごが赤くなると医者が儲からなくなるといわれますが、まさに、りんごはさまざまな病気の予防、健康増進に不可欠な果物です。(近藤雅雄、2025年3月7日掲載)

健康情報7.野菜・果物同時摂取で病気の予防と健康増進

 病気の90%以上は酸化ストレスによって発症すると言われています(日本抗酸化学会)。そこで、野菜と果物の同時摂取による病気の予防と健康増進を目指して調査研究しました。
 これまでの栄養研究は単独の食品や栄養素に関するものばかりでした。しかし、実際に私たちが食事をするとき、私たちの体内では複数の栄養素によるさまざまな相互作用が生じ、単独栄養素の作用が強められたり打ち消されたりしていると考えられます。すなわち、単独の栄養成分(因みに健康食品が相当します)を摂取するより、食品そのものを摂取することによって相乗効果、相殺効果が生まれ、体に不足している必要な成分が利用されていきます。
 さて、現代人の食生活調査を行った結果、野菜と果物摂取量が全年齢で不足していることがわかりました。厚生労働省、文部科学省、農林水産省は野菜1日350g以上、果物は200g以上摂取することが望ましいと提言しています。そこで、多くのメーカーが野菜ジュースなどの開発を行い市販していますが、そのほとんどが大量の糖質(蔗糖)を含み、肥満や糖尿病などの生活習慣病を加速させる不健康飲料ばかりです。
 しかし、野菜の中で抗酸化成分が優れている「赤ピーマン」と「にんじん」、そして、果物ではさまざまな病気の予防・健康増進に効果がある「りんご」を日常的に摂取している人は多くが健康であることがわかりました。
 さらに、これら野菜および果物の同時摂取は相殺効果、相加・相乗効果も加わって栄養状態が改善され、からだに不足している抗酸化力、免疫力が一層高まり、日常不足しがちな食物繊維、カルシウム、カリウムが増え栄養状態が改善されます。
 野菜や果物の同時摂取は量よりも質も大切です。

参考文献
1.近藤雅雄:第6回健康食品フォーラム報告書「食育と健康食品」p.26-41, 2005
2.近藤雅雄ほか:高齢者の食生活と免疫強化、日本抗加齢医学会雑誌、Vol.2No.3, 2006
3.近藤雅雄:食品成分による高齢者の免疫機能調節、食品技術総合辞典、朝倉書店、p.94-99, 2008
4.近藤雅雄ほか:高齢者のQOL向上のために免疫能の健全性を保持する日本型食生活の解析、食品の安全性および機能性に関する総合研究、平成14-17年度、農林水産省農林水産技術会議資料
(近藤雅雄、2025年3月7日掲載)

PDF:ベジフルP

健康情報6.昔,中・高生の間で流行った「ペットボトル症候群」とは

 1992年5月、聖マリアンナ医科大学の研究グループは、糖尿病性ケトアシドーシスの症状となった若い人達の多くがペットボトルの飲料水を飲んでいたことからペットボトル症候群と命名されました。喉の渇きのために砂糖の入ったスポーツドリンク、清涼飲料水を大量に飲み続けることによって起こる急性の糖尿病です。
 また、ペットボトルの飲料水を飲むと血糖値がすぐ上がるので元気となる。しかし、またすぐ血糖値が下がり、今度はイライラしたり、狂暴になったりする。当時、中学や高校では校内暴力が流行った時代で、これをペットボトル症候群と言っていました。
 最近、自動販売機が増えさまざまな飲料水が並べられています。コーヒー飲料など糖質の多い飲料水が多くありますが、これらは缶類が多い。ペットボトルはお茶や水など、糖質の少ない飲料が多くなっています。したがって、ペットボトル症候群が再び流行ることは無いと思いますが、糖質の多い飲み物はカロリーが高いので注意してください。余った糖質は白色脂肪細胞に中性脂肪として貯蔵され、肥満の原因になります。(近藤雅雄、2025年3月6日掲載)

健康情報5.珈琲は各種がん,糖尿病などのリスクを下げる

 コーヒーの苦味が嫌いな方もいますが、実はコーヒーはからだにとても良い飲み物なのです。皆さんがよくご存知のカフェインには、興奮作用のほかに抗疲労、抗肥満、口臭予防などの効能があります。
 最近、クロロゲン酸という成分が注目されています。クロロゲン酸は、3,4-ジヒドロキシ桂皮酸とキナ酸とのエステルです。桂皮酸はベンゼン環を持ち、熱で分解され芳香を放ちます。また、キナ酸は酸味と弱い苦味を持ち、加水分解されやすいことから、このクロロゲン酸は、コーヒー特有の褐色の色や苦味、香りの元だといわれています。
 クロロゲン酸成分は、赤ワインのアントシアニン、お茶のカテキン、そしてココアのカカオポリフェノールなどと同じくポリフェノールの仲間です。その強い抗酸化作用によって、がんや糖尿病、動脈硬化の予防に有効だそうです。
 コーヒーの飲用(1日3杯)は肝がん、子宮体がん、大腸がんや結腸がん、脳腫瘍のリスクを下げるとの報告があります。
 こうした効果はコーヒーに含まれる炎症を和らげる成分やクロロゲン酸やカフェインによるインスリン抵抗性の改善作用によるものと考えられています。
 からだをゆっくりと休め、心地よい芳醇が漂うレギュラーコーヒーを一杯召し上がって自分の時間を楽しんでみてはいかがですか。(近藤雅雄、2025年3月6日掲載)

健康情報4.ルイボスティーによる病気の予防と健康効果

 平成12(2000)年2月17日から21日まで聖マリアンナ医科大学の工藤吉郎教授と共にプライベートで鹿児島と宮崎に住むポルフィリン症患者(活性酸素が原因で起こる多彩な症状を呈する病気)の調査に行きました。患者の皆さんは高齢にもかかわらず大変お元気なので鹿児島在住の多様性ポルフィリン症(VP)の患者さんにその秘訣を伺うと、ルイボスティ-を紹介されました。患者さんは「これを飲むと皮膚症状や血圧などが改善され、さらに糖尿病にも効く」と言っていました。
 そこで、ネットで調べるとルイボスとは南アフリカの喜望峰山脈地帯でのみ自生するマメ科の属する針葉樹で、学名はアスパラサス・リネアリスとありました。南十字星が輝くこの地の澄み切った空気と灼熱の太陽の下、化学肥料を一切使用せず、自然栽培され、海抜450m以上の高原地帯でのみ育生される非常に珍しいハーブティーであるということです。カルシウムやカリウム、マグネシウムなどからだにいいミネラルや活性酸素を除去するフラボノイドを大量に含んでいるため、南アフリカやヨーロッパでは古くから不老長寿のお茶として愛飲されているそうです。
 ここで、興味を惹かれたのは、南アフリカという場所です。17世紀に一人のVP患者(活性酸素によって光線過敏症と腹部・神経症状を共に有する病型)のオランダ人宣教師が入国してから、VPが一気に広がり、現在では白人千人に対して3名という世界でも珍しく多い国です。筆者は、このルイボスティーはポルフィリン症をはじめ国民の多くが捜し求めていた活性酸素によって発症する多くの病気の予防薬または治療薬と思いました。ルイボスティーはカフェインがゼロで安く、苦味が少なくまろやかなので小さな子供も安心して飲めます。
 加えて、玉ねぎの皮(茶色の部分)を乾燥させ、その一掴みをやかんに入れ、沸騰させ、5~10分後、皮を取り除き普通のお茶と同じように飲む。この時にルイボスティ-を1包入れると更に効果が出るそうです。鹿児島の患者さんはこれを長年飲み続けているそうですが、健康長寿です。なによりも、自分たちがからだに良いことをしていると自覚されていることがプラシーボ効果となってさらに良い方向に作用しています。これが元気の秘訣です。(近藤雅雄、2025年3月6日掲載)

健康と病気シリーズ7.運動の効果と自然治癒力の強化

 2024年5月、京都府立医科大学循環器内科の西真宏らは健康寿命と一日の歩数の関係を調査し、健康寿命延伸に繋がる目標歩数を提唱しました。それによると一日の目標値は9,000歩、自覚的な健康状態を改善するための目標値は11,000歩/日という。健康寿命に大きな影響を与えるうつ病などのこころの病気、腰痛や骨折など筋骨格系の病気、脳神経疾患などで注目されています。
 ここでは、高齢者の健康と病気と運動として、1.運動の効果、2.運動による自然治癒力の強化、3.私の運動療法、4.運動をしてはいけない疾患について、以下のPDFにまとめましたので参照してください。(2025年3月5日掲載)
PDF:健康と病気シリーズ7運動

健康と病気シリーズ6.高齢者の健康を目的とした食生活

 高齢者の区分は65歳から74歳までを前期高齢者、75歳以上を後期高齢者としている。高齢期は加齢に伴って体内諸臓器の機能低下や疾病に対する抵抗力の減退など、身体的・精神的変化について注視することが大切である。栄養面では食事量の減少に伴う栄養状態の悪化が起こり、体力の低下原因となるため、食生活は重要だ。
 今年76歳、からだの機能と構成はすべて生き物から得られる栄養素から成り、生命を維持している。そこで、健康増進、QOLの向上、フレイル予防を目的として「食のリズム」の確立を目指した。
 食事の内容は健康状態、病気や年齢・性などの違いなどによって多少変わるが、基本的に動物性食品と油脂分、糖質の過剰摂取を控える。具体的には牛肉などの動物性蛋白の過剰摂取は控えたい。①食生活の内容について以下のPDFを参照されたい。また、②「高齢期の栄養とその管理」についてもPDFに示したので参照されたい。
PDF:健康と病気シリーズ6食生活
PDF高齢期の栄養とその管理

健康と病気シリーズ5.高齢者の生活習慣とフレイル予防

 生命系にはさまざまなリズムがあります。とくに病気療養中は生体機能を整えるために日々の生活リズムを守ることが大切です。また定年後の高齢者は毎日が日曜日となり、生活のリズムが急激に変わります。つまり、エピジェネティクスの理論に従って環境を最善に保つと良い遺伝子が働き、悪い遺伝子が抑制します。このような生活が健康増進または自然治癒力強化、そして老化の指標の一つと考えられている「フレイル」予防の基本となります。
 そこで、ここではこれまでの生活習慣を見直し、自分(高齢者)に合った生活習慣の強化を図った筆者の例を参考に以下のPDFに掲載しました。ご参考にしてください。

PDF:健康と病気シリーズ5生活習慣の強化

健康と病気シリーズ4.治療と治癒,自発的治癒の強化 

 がんや生活習慣病は遺伝子の病気であり、 「健康と病気」は遺伝子によって支配されているといわれてきた。しかし、近年、遺伝子は単なる生命の設計図にすぎず、生後の健康を決定するのは環境であり、環境が遺伝子の働きを変え、その行動を調節するというエピジェネティクスの理論がプル―ス・リプトンによって提唱された。つまり、健康を支配しているのは遺伝子だけではなく生後の生活環境が大きく影響する。したがって、健康には日常の食事・運動・休養が重要であり、病気の治療・予防・回復には食事療法や精神療法などの自発的治癒が重要となる。
 患者が病から治るのは患者の治癒力による。
 一方、わが国の現代医療が包括的医療、チーム医療というならば、その発展・遂行には伝統医療に食事療法、運動療法、精神療法、養生訓(貝原益軒) PDF:健康と病気シリーズ4.自発的治癒