高齢者のQOL向上と免疫能を高める日本型食生活の解析

研究目的
 わが国が世界的に健康長寿を誇るようになったのには、医学の進歩のみならず、わが国の風土と歴史の中に根付いた日本型食生活の影響が大きく関与していると思われる。しかしながら、死因の3位までの疾患は生活習慣の偏りがその主な原因であると考えられることから、超高齢・少子化の進む中で、高齢者のQOLを高め、これら疾患の罹患を予防し、健康で長生きできるような食生活の提唱が望まれる。

本研究では、以下の5つの課題について検討した。
1.食品中の抗酸化成分の総合評価
2.日本人高齢者の食事摂取状況の解析
3.抗酸化食品ピーマン食摂取による高齢者への介入試験
4.中・高齢者の血液中抗酸化ミネラル濃度の解析
5.老齢動物の抗酸化および免疫能増強の開発

 QOLを高める上で極めて重要な因子である免疫能の向上とその機序解明を目的とした日本型食生活を踏まえた先駆的な栄養学的研究を行った。また、中・高齢者の血液中の免疫能に直接影響を与える抗酸化元素濃度や抗酸化酵素活性などを測定し、酸化ストレスに対する防御機能についての検討を行った。さらに、国民健康・栄養調査の結果をもとに、日本人の年齢別食生活の傾向を把握し、高齢者の食生活の特性に基づいた免疫能調節因子の検索を行った。そして、高齢者の抗酸化および免疫力を増強させる因子の検討を行い、新たな増強因子を発見した。
 以上の結果をもとに、高齢者の免疫能および抗酸化能を高める食品類を選択し、日本型食生活を中心とした高齢者への介入試験を行い、免疫能を高め、高齢者のQOLを高めるような食生活の提唱をする。なお、紙面の都合上、酸化ストレスが免疫細胞に及ぼす影響に対する分子生物学的手法を用いた解析実験に関しては割愛した。

 本内容は農林水産省農林水産技術会議平成14~17年度「日本型食生活の生体調節機能効果の解明」によるプロジェクト研究課題「高齢者のQOL向上のために免疫能の健全性を保持する日本型食生活の解析」で得られた成績の一部を修正して以下のPDFに纏めた。(近藤雅雄、2025年3月25日掲載)
PDF:高齢者の健康増進研究

ヘムを中心とした細胞・組織内活性酸素除去システムとは

 意外と知られていないのが生体の「三原色」です。例えば怪我などで皮下内出血したときに、まず「赤色のアザ」ができますが。時間が経つと「青色のアザ」となり、最後に「黄色」となって消えていきます。この色の変化に興味を持ちました。この3つの変化はストレスによっても組織で起こることが分かりました。この黄色い色素はビリルビンといって細胞を各種ストレスから守っていたのです。
 今日、私たちの普段の生活から多様なストレスを受け、細胞内に活性酸素が発生します。この活性酸素はヘム分解酵素遺伝子を発現し、ヘム分解酵素(ヘムオキシゲナーゼ,HO-1)を誘導し、赤い色素“ヘム”を分解して青い色素“ビリベルジン”を生産します。このビリベルジンは還元酵素によって黄色い色素“ビリルビン”に変わります。実は、このビリルビンが細胞内の活性酸素を除去し、細胞を活性酸素から守っていたのです。これまで、ビリルビンは黄疸の原因物質として悪者扱いでしたが、実は大変重要な働きをしていたのです。その他、ヘム蛋白であるカタラーゼやペルオキシダーゼも活性酸素を分解する酵素として有名です。この壮大な活性酸素除去システムが、ヘムを中心として行なわれていたのです。
以下のPDFを参照ください。(近藤雅雄、2025年3月12日掲載)
PDF:生体色素と三原色

健康と病気シリーズ9.ALAによる健康増進と病気治療

 長い間、5-アミノレブリン酸(ALA)の人工合成は難しく、回収率や純度を挙げることが不可能でした。
 それが、コスモ石油(株)の田中徹博士が光合成菌を使い、大量培養に成功してから、ALAの大量生産が可能となりました。この発見によって、多方面への研究が行われるようになりました。

 その最初の研究は2004年、筆者の職場であった国立健康・栄養研究所で行われ、その後、東京都市大学総合研究所内に移動し、そこでSBIアラプロモ(株)研究所が設立されました。現在はSBIアラファーマ(株)として川崎のナノ医療イノベーションセンター内の研究所で研究が行われています。
 ALAは健康食品、医薬品、化粧品、また、動物の飼料や植物の肥料などといった様々な分野で注目されています。ALAは脳腫瘍や膀胱がんなどがんの診断・治療、植物では光合成を促進すると共に収量・品質向上、健苗育成、ストレス耐性、耐塩性・耐冷性向上、都市および砂漠の緑化、ポリフェノールの増量など、また、健常者への投与はヘム合成を促進すると共に免疫力増強、運動機能向上、健康機能向上、疲労回復向上などとして保健・医療・環境など多様な分野で応用されています。

 なお、ALAは急性ポルフィリン症や鉛中毒時に体内に蓄積するALAと全く同じものです。したがって、これらの患者さんが摂取すると病気が悪化することがあります。注意してください。(近藤雅雄、2025年3月9日掲載)
 ALA関係のパワーポイントは500枚近く作成しましたが、その一部15枚を以下のPDFに示しました。ご参照ください。 PDF:健康と病気9.ALA

健康情報13.栄養素の豊富な「にがうり」で疲労回復

 季節の変わり目は、気象の変化による持病の悪化や自律神経の乱れなどによってさまざまな症状がでます。そこで、この間を健康で乗り切るための一例を紹介します。夏バテ等の疲労回復に効果がある「にがうり」を紹介します。

 「にがうり(苦瓜)」は、ゴーヤとも呼ばれていますが、このゴーヤとは沖縄地方の方言。ゴーヤには蛋白質、炭水化物、脂質、ビタミンC、ビタミンB1、B2、B6、K、ナイアシン(B3)、パントテン酸(B5)、ビオチン(B7)、葉酸(B9)、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、鉄、亜鉛、銅などの機能性栄養素および食物繊維を豊富に含んでいます。

 ゴーヤは疲労回復、血糖値の調節、脂質代謝の調節、貧血予防、血圧調節、むくみ・便秘の解消、ダイエット、老化防止・美肌、紫外線・シミ対策、肌荒れ・ニキビ予防などに有効であると言われています。とくに、ビタミンCはキュウリの14mgやトマトの15mgに対して5倍以上も含まれ、野菜の中でピーマンと同様、加熱に強いという特性を持っています。また、鉄分はほうれん草の約2.3倍含まれ、葉酸とともに貧血の予防になります。ビタミンB群は生体エネルギー(ATP)の生産に不可欠で、疲労回復、皮膚や粘膜の正常化に、カリウムは腎臓でナトリウムの排泄に働くので血圧の低下にそれぞれ役に立ちます。

 苦み成分としてチャランチンとモモルデシン、コロソリン酸が含まれています。チャランチンとコロソリン酸は植物インスリンとも言われ、糖尿病の血糖値改善に役立つと古くから注目されています。ヒトのインスリンと同様に肝臓や筋肉へのブドウ糖の取り込みを促進し、グリコーゲンの合成を促すことが報告されています。

 動物実験では糖尿病改善効果、抗ウイルス作用、抗炎症作用、コレステロール低下作用、抗がん作用、免疫調節なども報告されています。チャランチンやモモルデシンには活性酸素を還元して無毒化する作用も報告されています。

 食物繊維は100g中水溶性0.5g、不溶性2.1g含まれ、腸内の善玉菌の増殖を促進し、糞便量を増やし、腸内環境を整えることでしょう。便秘改善に役立ちます。サポニンはコレステロールや老廃物の排出を促進し、動脈硬化、糖尿病、がんの予防、胆汁酸の分泌や産生を促します。
 ただし、ゴーヤには血糖低下作用のある成分が含まれていますので、子どもや高齢者、糖尿病患者の食べ過ぎには注意してください。(近藤雅雄、2025年3月8日、掲載)

健康情報12.冬至は「かぼちゃとゆず湯」で乗りきる

 季節の変わり目は、気象の変化による持病の悪化や自律神経の乱れなどによってさまざまな症状がでます。そこで、この間を健康で乗り切るための一例を紹介します。

 冬至とは24節気の一つで、1年で昼が最も短く、太陽の光が弱まって、夜が長い日になります。そして、冬至の日には冬至かぼちゃや冬至粥(小豆入りのお粥)を食べると風邪や中風(現在の脳出血、脳梗塞に当たるもの)にならないという言い伝えがあります。
 かぼちゃは本来夏の野菜です。切ったり、傷を付けたりしなければ長期保存が出来るので、夏の太陽を浴びたかぼちゃを大事に保存し、風邪が流行したり緑黄色野菜が不足したりする冬期にかぼちゃを食べるという先人の教えもあります。

 かぼちゃは「南瓜」とも書き、別名「唐茄子」、「南京」、「ボウブラ」とも呼ばれますが、原産地は中央アメリカです。日本には戦国時代の末期頃にポルトガル人によってカンボジア経由で持ち込まれました。このときにカンボジアがなまって「かぼちゃ」になったそうです。かぼちゃは野菜の中でも栄養価が高い優れた野菜であり、β-カロテン、ビタミンC,ビタミンEといった抗酸化ビタミンを大量含んでいます。したがって、体内に蓄積した酸化毒(活性酸素)の除去と感染症予防には不可欠な野菜です。寒い日にはかぼちゃを食べて風邪を予防しましょう。次は柚子(ゆず)です。

 ゆず湯というのは、お湯に入り、病気を治す湯治(とうじ)=冬至という語呂合わせからきているそうです。また、柚子(ゆず)=「融通(ゆうずう)」がききますように、という願いも込められているそうです。柚子の高貴な香りと酸味は邪気を避け、運を呼び込む前の厄払いの目的でも使われています。
 「ゆず湯に入ると、一年間風邪をひかない」と昔から言われています。柚子には血行を促進して冷え性を和らげ、身体を温めて風邪を予防する働きがあります。果皮、果肉、種のすべてに効能があり、果皮にはビタミンCやクエン酸が含まれていて美肌効果があります。果肉にはヘスペリジンというポリフェノールが柑橘類の中では極めて多くミカンの20倍、レモンの3倍で、血管の強化、血流、高血圧、脂質代謝、肩こりや冷えの改善などの効果があります。種にはペクチン、ピネン、リモネン、ナリンジンなどが含まれ糖・脂質代謝調節、抗炎症作用など多様な効果が知られています。
 捨てるところがない柚子はまさにSDGs (Sustainable Development Goals)に適した柑橘類の王様といえます。(近藤雅雄、2025年3月8日掲載)

健康情報11.季節の変わり目は「キムチ」で健康強化

 季節の変わり目は、気象の変化による持病の悪化や自律神経の乱れなどによってさまざまな症状がでます。日本には四季があり、冬から春、春から夏、夏から秋、秋から冬と4階の変化を感じます。この間を健康で乗り切るための「キムチ」の例を紹介します。

例えば梅雨(抗酸化食品キムチ)
 5月の連休が終わると、次に来るのはじめじめした梅雨、その次に来るのが暑い夏。この季節を乗り越えるための食品の一つとして「キムチ」を紹介します。
 キムチの原材料によって栄養成分は異なりますが、よく使われる野菜(白菜や大根)にはたくさんのビタミンやミネラルが豊富に含まれています。そのために米中心の食生活に不足しがちなビタミンBの吸収を高めたり、腸炎、結腸炎などの疾病を抑制する働きや体内の脂肪を減らして動脈硬化や肥満を予防したり、活性酸素を消去したりする効果があります。
 キムチは梅雨に限らず、1年中の食べ物ですが、季節の移り変わりにはとくに免疫力を高めるのに効果的な食材です。その理由として、キムチ唐辛子のトウガラシはシシトウ、パプリカ・ピーマンの仲間で、暑さに強く、真夏でも実がつきます。そして、ピーマンと同様ルテオリンなどの強力な抗酸化ポリフェノールを多く含みますので、抗酸化能および免疫能の増強に効果的な食品といえます。(近藤雅雄、2025年3月8日掲載)

健康情報10.ニンジンに含まれるβ-カロテンの抗がん作用

 ニンジンには抗酸化物質であるβ-カロテンが大量含まれ、がんの予防に有名です。β-カロテンはプロビタミンAとも呼ばれ、ビタミンAの安全な供給源です。
 ビタミンAを過剰に摂取すると障害がでることが知られていますが、β-カロテンは多少過剰に摂取しても身体に蓄えられ、必要に応じてビタミンAに変換されるため障害が起きません。しかし、β-カロテンだけを健康食品から大量摂取すると逆にがんの発症リスクがあることが報告されています。つまり、ニンジンとして摂取すれば、相乗・相殺効果が現れ、抗がん作用も高まります。とくに高齢者ではニンジンとキャベツや赤ピーマン、リンゴと一緒に摂取すると免疫増強、抗酸化作用や抗がん作用、老化防止の効果がさらに高まることでしょう。(近藤雅雄、2025年3月7日)

健康情報9.「りんご」は病気の予防と健康増進に不可欠

 りんごは不思議な果物です。りんごに含まれているビタミンCは100g中に4mgで、食品の中ではさほど多いわけではありません。しかし、リンゴにはビタミンCを効率よく体内に取り込むのを助ける成分が含まれているため、含有量から予測される以上に血液中のビタミンCが増えると考えられます。国立がん研究センターが行った5年間の調査によれば、サプリメントでビタミンCを1日50mg摂取したグループの血液中ビタミンCの増加量は13.0%で、500mg摂取したグループでも増加量は38.5%でした。したがって、リンゴ摂取で血液中のビタミンCが34%増加したことを、サプリメントに直すと1日約500mgのビタミンCを摂取したことと同等になります。このことは、サプリメントよりも食品から摂取する方が効率的であるといえます。
 ビタミンCは、抗酸化力が強く、さまざまな生活習慣病の予防に有効です。脳卒中、脳梗塞、がん、壊血病などの予防、ストレス解消、色素沈着の防止、白内障予防などに有効であると報告されています。さらに、りんごには良質な食物繊維が含まれ、血液中の中性脂肪を減らすのに効果的です。このりんごの水溶性食物繊維(リンゴペクチン)を摂取するとアレルギーの引き金と考えられているヒスタミンを下げる効果が明らかになっています。また、りんごは肌荒れや「にきび」の原因となる便秘を解消する力が強く、かつ、アラビノオリゴ糖はビフィズス菌を特異的に増殖させることも見出されています。さらに、カリウムなどのミネラルが豊富であり、血圧上昇を抑えます。また、ポリフェノールもたくさん含まれています。りんごが赤くなると医者が儲からなくなるといわれますが、まさに、りんごはさまざまな病気の予防、健康増進に不可欠な果物です。(近藤雅雄、2025年3月7日掲載)

健康情報7.野菜・果物同時摂取で病気の予防と健康増進

 病気の90%以上は酸化ストレスによって発症すると言われています(日本抗酸化学会)。そこで、野菜と果物の同時摂取による病気の予防と健康増進を目指して調査研究しました。
 これまでの栄養研究は単独の食品や栄養素に関するものばかりでした。しかし、実際に私たちが食事をするとき、私たちの体内では複数の栄養素によるさまざまな相互作用が生じ、単独栄養素の作用が強められたり打ち消されたりしていると考えられます。すなわち、単独の栄養成分(因みに健康食品が相当します)を摂取するより、食品そのものを摂取することによって相乗効果、相殺効果が生まれ、体に不足している必要な成分が利用されていきます。
 さて、現代人の食生活調査を行った結果、野菜と果物摂取量が全年齢で不足していることがわかりました。厚生労働省、文部科学省、農林水産省は野菜1日350g以上、果物は200g以上摂取することが望ましいと提言しています。そこで、多くのメーカーが野菜ジュースなどの開発を行い市販していますが、そのほとんどが大量の糖質(蔗糖)を含み、肥満や糖尿病などの生活習慣病を加速させる不健康飲料ばかりです。
 しかし、野菜の中で抗酸化成分が優れている「赤ピーマン」と「にんじん」、そして、果物ではさまざまな病気の予防・健康増進に効果がある「りんご」を日常的に摂取している人は多くが健康であることがわかりました。
 さらに、これら野菜および果物の同時摂取は相殺効果、相加・相乗効果も加わって栄養状態が改善され、からだに不足している抗酸化力、免疫力が一層高まり、日常不足しがちな食物繊維、カルシウム、カリウムが増え栄養状態が改善されます。
 野菜や果物の同時摂取は量よりも質も大切です。

参考文献
1.近藤雅雄:第6回健康食品フォーラム報告書「食育と健康食品」p.26-41, 2005
2.近藤雅雄ほか:高齢者の食生活と免疫強化、日本抗加齢医学会雑誌、Vol.2No.3, 2006
3.近藤雅雄:食品成分による高齢者の免疫機能調節、食品技術総合辞典、朝倉書店、p.94-99, 2008
4.近藤雅雄ほか:高齢者のQOL向上のために免疫能の健全性を保持する日本型食生活の解析、食品の安全性および機能性に関する総合研究、平成14-17年度、農林水産省農林水産技術会議資料
(近藤雅雄、2025年3月7日掲載)

PDF:ベジフルP

健康情報5.珈琲は各種がん,糖尿病などのリスクを下げる

 コーヒーの苦味が嫌いな方もいますが、実はコーヒーはからだにとても良い飲み物なのです。皆さんがよくご存知のカフェインには、興奮作用のほかに抗疲労、抗肥満、口臭予防などの効能があります。
 最近、クロロゲン酸という成分が注目されています。クロロゲン酸は、3,4-ジヒドロキシ桂皮酸とキナ酸とのエステルです。桂皮酸はベンゼン環を持ち、熱で分解され芳香を放ちます。また、キナ酸は酸味と弱い苦味を持ち、加水分解されやすいことから、このクロロゲン酸は、コーヒー特有の褐色の色や苦味、香りの元だといわれています。
 クロロゲン酸成分は、赤ワインのアントシアニン、お茶のカテキン、そしてココアのカカオポリフェノールなどと同じくポリフェノールの仲間です。その強い抗酸化作用によって、がんや糖尿病、動脈硬化の予防に有効だそうです。
 コーヒーの飲用(1日3杯)は肝がん、子宮体がん、大腸がんや結腸がん、脳腫瘍のリスクを下げるとの報告があります。
 こうした効果はコーヒーに含まれる炎症を和らげる成分やクロロゲン酸やカフェインによるインスリン抵抗性の改善作用によるものと考えられています。
 からだをゆっくりと休め、心地よい芳醇が漂うレギュラーコーヒーを一杯召し上がって自分の時間を楽しんでみてはいかがですか。(近藤雅雄、2025年3月6日掲載)

健康情報3.日本茶(緑茶)による病気予防と健康効果

 日本茶にはご存知のようにビタミンを豊富に含み、とくにビタミンCが多く含まれているため、風邪の予防や美肌効果があると言われてきました。また、カテキンが多く含まれているためがんや動脈硬化など、生活習慣病の予防に効果があると言われています。カテキンの名前の由来は「勝て‐菌に」と言われているように殺菌力に優れています。カテキンは日本茶の苦味成分であるポリフェノールの一種で、虫歯の予防やアレルギー抑制、花粉症などにも効果があると言われています。日本人が元気なのはお茶を飲む習慣があるからかもしれません。
 一方、お茶にはタンニンが含まれていますので食事中に飲むと鉄、亜鉛、カルシウム、マグネシウムなどのミネラルの吸収が妨げられますので注意が必要です。また、コーヒーと同様カフェインが含まれていますので、寝る前に飲むと交感神経が興奮して眠れなくなることがあります。
 お茶を飲む場合は疲れたときに一服、甘い和菓子と一緒に召し上がると効果抜群です。また、お茶の葉だけに含まれているテアニンは、こころとからだをリラックスさせ、ストレスを解消させる効果があります。お茶は飲むタイミングに気を付ければ百薬の長といえます。
 しかし、この話は浸出液のことではなく、茶葉のことです。これだけたくさんの栄養素を含んでいるので、その摂り方に注意してください。(近藤雅雄、2025年3月6日掲載)

健康と病気シリーズ7.運動の効果と自然治癒力の強化

 2024年5月、京都府立医科大学循環器内科の西真宏らは健康寿命と一日の歩数の関係を調査し、健康寿命延伸に繋がる目標歩数を提唱しました。それによると一日の目標値は9,000歩、自覚的な健康状態を改善するための目標値は11,000歩/日という。健康寿命に大きな影響を与えるうつ病などのこころの病気、腰痛や骨折など筋骨格系の病気、脳神経疾患などで注目されています。
 ここでは、高齢者の健康と病気と運動として、1.運動の効果、2.運動による自然治癒力の強化、3.私の運動療法、4.運動をしてはいけない疾患について、以下のPDFにまとめましたので参照してください。(2025年3月5日掲載)
PDF:健康と病気シリーズ7運動

健康と病気シリーズ6.高齢者の健康を目的とした食生活

 高齢者の区分は65歳から74歳までを前期高齢者、75歳以上を後期高齢者としている。高齢期は加齢に伴って体内諸臓器の機能低下や疾病に対する抵抗力の減退など、身体的・精神的変化について注視することが大切である。栄養面では食事量の減少に伴う栄養状態の悪化が起こり、体力の低下原因となるため、食生活は重要だ。
 今年76歳、からだの機能と構成はすべて生き物から得られる栄養素から成り、生命を維持している。そこで、健康増進、QOLの向上、フレイル予防を目的として「食のリズム」の確立を目指した。
 食事の内容は健康状態、病気や年齢・性などの違いなどによって多少変わるが、基本的に動物性食品と油脂分、糖質の過剰摂取を控える。具体的には牛肉などの動物性蛋白の過剰摂取は控えたい。①食生活の内容について以下のPDFを参照されたい。また、②「高齢期の栄養とその管理」についてもPDFに示したので参照されたい。
PDF:健康と病気シリーズ6食生活
PDF高齢期の栄養とその管理

健康と病気シリーズ5.高齢者の生活習慣とフレイル予防

 生命系にはさまざまなリズムがあります。とくに病気療養中は生体機能を整えるために日々の生活リズムを守ることが大切です。また定年後の高齢者は毎日が日曜日となり、生活のリズムが急激に変わります。つまり、エピジェネティクスの理論に従って環境を最善に保つと良い遺伝子が働き、悪い遺伝子が抑制します。このような生活が健康増進または自然治癒力強化、そして老化の指標の一つと考えられている「フレイル」予防の基本となります。
 そこで、ここではこれまでの生活習慣を見直し、自分(高齢者)に合った生活習慣の強化を図った筆者の例を参考に以下のPDFに掲載しました。ご参考にしてください。

PDF:健康と病気シリーズ5生活習慣の強化

高齢者の健康寿命の延伸を目指して~加齢の機序と抗加齢

 健康で生きられる期間を「健康寿命」と言いますが、2016年の日本人の健康寿命は男性71.14歳(2020年の平均寿命は81.64歳)、女性74.79歳(同87.74歳)です。女性の方が男性よりも約6年長生きですが、不健康状態が約2.5年、すなわち介護を要する期間が長い。そして、共に約10年以上、不健康状態が見られます。この原因の一つが酸化ストレスですので、高齢者の健康寿命の延伸とQOL(生活の質)の向上を図るためには、改めて健康増進の三原則「栄養・運動・休養」を見直すことが大切です。そこで、アンチエイジングを目的に、エイジング(加齢、老化)に影響を与える要因を明らかにし、それを除去する方法について検討しました。
PDF:加齢の病態生理~アンチエイジング2

胃がん発生と風邪の予防には紅茶の摂取とうがいが効く

 紅茶によるヘリコバクターピロリ菌殺菌効果が優れ胃がんの発生予防に良い。
紅茶は発酵過程でいろいろな酵素作用を受け、クロロフィルは分解され、カテキン類は酸化縮合し赤色系のテアフラビンや橙褐色系のテアルビジンを生じ、紅茶特有の紅色を呈します。
 紅茶の浸出液には緑茶、コーヒー、烏龍茶同様多少カフェイン(30mg/100g)やタンニン(0.1g/100g)を含むので食事中や寝る前は控えた方が良い。タンニンは鉄分の小腸での吸収を阻害する。とくに鉄欠乏性との関係がある人は午前あるいは午後の休息中に飲用する。カフェインは交感神経を刺激し、副腎からのアドレナリン分泌を促進するので、夜は飲まない方が良いです。また、交感神経は睡眠ホルモンであるメラトニンの脳松果体からの分泌を抑制するため眠れなくなることがあります。
 紅茶の健康効果は沢山ありますが、ここでは2つ挙げました。

1.胃がんの予防
 胃がん発症の一次予防としてはピロリ菌除去と塩分を控えることが大切ですが、紅茶飲用による予防も可能かもしれません。

2.風邪の予防
 紅茶(発酵茶)には緑茶に含まれる抗酸化物「カテキン」が発酵過程でテアフラビン(紅茶ポリフェノール)となり、これがインフルエンザウイルスに対して効果があると言われています。紅茶でうがいをしてはどうでしょうか。風邪ウイルスの感染予防として期待できかもしれません。現代のコロナ禍時代は口腔ケアの時代とも言えますね。

 いずれにしてもこれらの詳細は下記のPDFを参照してください。 PDF:紅茶と健康

食生活による生活習慣病,がん,花粉症,認知症の予防

 スイーツを好む人が全世代で増加している。とくに子どもの時に好きになると厄介だ。嗜好は大人になってもあまり変わらない。生活習慣病の予防や健康増進といった観点からも早めに改善したい。さて、表題に挙げた疾病の予防は抗酸化に関わる物質(ビタミンA, C, E、ポリフェノール、セレンなどを含む食品)、ビフィズス菌などの善玉菌を含む食品、食物線維を多く含む野菜、発酵食品、納豆・オクラなどのネバネバ食品などの摂取が基本となる。また、旬なものを摂取する。

心臓病  LDLコレステロールを減少させるにはさばの水煮缶(マルハ)にEPA(1.87g/缶)含まれ、1g/1日、1缶/1日。EPAは熱に弱いので、サラダなどで摂取すると良い。大根(イソチアシネート)、たまねぎ(イソアリイン:涙を出す成分)と一緒に摂取するとより効果的だ。

高血圧(1/3人) 抗酸化物質を摂取する。100g当たりのポリフェノール量はりんご220mg、赤ワイン180mg、チョコレート840mg。72%以上のカカオが含まれているチョコレートを1日25g以内、摂取してはどうか。食べ過ぎは腎臓病と関係するので止める。減塩、リンゴや根菜類などのカリウムの多い食品を摂取する。また、合谷を指圧すると良いそうだ。

糖尿病(Ⅱ型95%、1/5人) トマト(赤い色素リコピンが豊富で、ビタミンEの100倍以上の抗酸化作用がある)は血糖値を下げ、ジュースにして摂取する。新鮮なオリーブオイルをさじ1杯加え、レンジで温めて飲むと4.5倍リコピンの吸収率が高まる。血糖降下剤と同じ効果があり、血糖値が160㎎/dlなら110㎎/dlに低下する。
が ん みかんの皮を熱湯消毒し、天日干しで数日間乾燥させる。その後、粉砕して食べる。精油のリモネン、フラボノイドのヘスペリジン、カロテノイドのβ-クリプトキサンチン、水溶性食物繊維のペクチン類など作用メカニズムの異なるさまざまながん予防物質が見つかっている。ビタミンDやキノコ類など注目されている。

認知症 カマンベールチーズ(白いカビ様の部分)にオレイン酸アミド、デヒドロエルゴステロールが含まれ、認知症の原因と言われている脳内のβアミロイド量を減らす。同時に赤ワインを2~3杯程度、または、ビールを飲むと効果的だ。ビールの苦み成分に(ホップ由来)イソα酸が含まれ、発がん抑制効果、アルツハイマー病予防効果があるそうだ。

花粉症 原因となるIgE抗体を減少させる食材はれんこん(タンニン、ムチン含む)に含まれ、1日40g、皮ごと輪切りや細かくしてポタージュスープなどで摂取する。2週間効果がある。また、レンコンをすって綿棒で鼻に塗付しても効果がある。

便 秘 食物繊維の1日の必要量は男性20g、女性18gだが、それを満たしている人は少ない。そこで、100g当たりの食物繊維量の多いレタス1.1g、ごぼう5.7g、柿1.6gに新鮮なオリーブオイルをかけ、1日2回、朝と夕方摂取すると良い。野菜としての必要量は一日350gとなる。野菜ジュースは以外と糖質量が多く含まれているので注意する。ビフィズス菌などの善玉菌が多く入ったヨーグルトもおススメだ。個人差があるがリンゴもよい。

(掲載日:2019年4月2日、2025年3月5日修正、近藤雅雄)

こころとからだの健康 (15) 脳を元気にする食と栄養素

「こころとからだの健康(10)脳に良い食品、機能性食品とその成分」の改訂版である。
 脳は大脳、間脳、脳幹および小脳から構成され、心身(こころとからだの働き)の司令塔である。とくに、大脳皮質は感覚・運動の統合、意志、創造、思考、言語、理性、感情、記憶を司り、前頭連合野は人間中枢とも言うべき重要な働きを行っている。脳を元気にするためには脳に必要な栄養素の摂取と適度な有酸素運動の実施および良い睡眠をとることが基本である。
 近年、アルツハイマー病やうつ病などの疾病が社会問題となっている。2015年、国際アルツハイマー病協会は認知症の新規患者数は毎年約990万人、2050年には1億3200万人に達し、現在(約4680万人)の3倍になると“世界アルツハイマー報告書2015”に発表した。高齢社会においてその数は急激に増加している。認知症には①アルツハイマー型、②脳血管性、③レビー小体型、④ピック病、⑤混合型、⑥その他などがあるが、この内、70%近くがアルツハイマー病であり、酸化ストレスが病気の進行に大きく寄与している。また、最近、疲労の原因は脳の眼窩前頭野で疲労感として自覚することによると言われ、これも酸化ストレスが関わっている。
 そこで、本論文では情報化・高齢化の時代に認知症やうつ病などの脳の障害を予防し、いつまでもイキイキした脳を維持するために必要な食品および有効成分について文献調査を行った。

Ⅰ.脳が元気になる食品
 人は美味しいものを食べると自然と笑顔となるが、これは脳が元気になったのではない。逆に、濃い味付けや甘いものなどは習慣化し、脳はじめ多くの生体機能にダメージを与えるので注意する。自らの健康は自らが守ることを意識し、脳に良い食品を意識的に摂取することが大切である。

Ⅱ.脳の活性化が期待される主な有効物質
 脳の機能保持には脳の構成材料、脳代謝に不可欠な栄養素および酸化ストレスに対する抗酸化物質の摂取を日常的に意識して摂取することが望ましい。抗酸化物質として、ポリフェノールは植物の色素や苦味の成分であり、アントシアン、タンニンやカテキンなどのタンニン類、ケルセチンやイソフラボンなどのフラボノイド類からなる。フラボノイドは植物に広く存在する色素成分でクロロフィルやカロチノイドと並ぶ植物色素の総称である。広義には赤、紫、青を発するアントシアニンもフラボノイドに分類される。フラボノイドを豊富に含んでいる食品としてはチョコレート、ココア、緑茶、紅茶、赤ワインなどが知られ、注目されている。
 これら抗酸化物質の作用としては活性酸素を除去し老化抑制、抗凝固、血圧降下、消臭、血管保護および血流増加、動脈硬化や心臓病の予防、免疫力増強、抗菌・抗ウイルス・抗アレルギー、血管保護、抗変異原性、発癌物質の活性化抑制など、多様な作用が推測されている。ビタミンC・E、クエン酸を含む食品と併用すると抗酸化作用の相乗効果を示す。
 なお、抗酸化物質についてはいずれも食品として摂取することが望ましく、サプリメントとして摂取する場合は過剰摂取による問題などがあり、十分に配慮することが大切である。(近藤雅雄、平成29年3月25日投稿)
内容の詳細をPDFに記載したので参照して下さい。
PDF:脳を元気にする食と栄養素2017.3.25

5-アミノレブリン酸(ALA)による免疫増強とその機序

1.はじめに
 現代のストレス社会ではヘムオキシゲナーゼによってヘムの分解が促進するため、ヘム量が不足する。ヘムはアミノレブリン酸(ALA)からミトコンドリア内で生産でされる生体赤色素であり、呼吸やエネルギー生産、神経、内分泌、免疫の機能保持など、生命維持に不可欠な根源物質である。そこで、免疫機能の中枢である胸腺に対して、ALA・ヘムとの関連を検討した。

2.研究方法
 雌雄高齢マウス(約35~45週齢;BALB/ cAJcl,日本クレア(株))に体重1kgあたり2~10mgのALAを投与するように1日の飲水量に配合し7日間自由摂取させた(各群5匹)。実際の摂取量は飲水量から計算した。飼料はCE-2(日本クレア(株))を自由摂取させた。飼育終了後、胸腺重量、胸腺細胞数、スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)活性、グルタチオンペルオキシダーゼ(GpX)活性、ヘム合成関連物質の測定およびジーンチップによる遺伝子発現解析、リンパ球の幼若化能およびサブセットなどを測定した。

3.結果
1)胸腺免疫機能に及ぼす影響
 ALA投与によって胸腺重量および胸腺細胞数が有意に増量し、その影響は高齢マウスで著しく、さらに雌に比べて雄の方が著しいことを見出した。ALAにより細胞の分化・増殖が亢進したものと示唆された。胸腺細胞のリンパ球(CD4, CD8)サブセットが雌雄マウス共に増加傾向を示した。さらに、ALA投与によって活性酸素を消去するSOD活性が有意に増加した。

2)ヘム合成に及ぼす影響
 血液細胞および胸腺細胞共にALAを代謝する酵素が次々と活性化され、ヘム合成量が増加した。この結果は、ALA投与によって胸腺の機能が回復・亢進することを示している。胸腺重量の増加は病理標本を作成・検討した結果、胸腺内リンパ球数の増加を認めた。

3)胸腺遺伝子発現に及ぼす研究
 胸腺細胞からt-RNAを抽出し、遺伝子解析を行った。その結果、ALA投与によって934個の遺伝子の発現量に変化が見られた。さらにトランスクリプトミクス解析からSOD遺伝子の発現などが確認された。

4.おわりに
 胸腺は加齢により萎縮し、それと共に免疫機能が低下することが分かっているが、ALA投与によって萎縮抑制のみならず、若年期の重量にまで回復することを証明した。さらにSOD活性の回復による抗酸化機能の増強が確認されたことは極めて重要な知見である。つまり、ALAは高齢者の免疫力増強と若返りに効能があることを示している。
 これまでに胸腺の萎縮を抑制または回復させる因子は発見されておらず、ALAは免疫機能に影響を与える新しい因子として、今後大いに注目されるであろう。
 一方で、健常者においては性差・年齢にかかわらず一日に約0.5~3mgのALAが尿中に排泄されている。同様な結果はマウスでも認められることから、ALA投与による生体影響についてはさらなる科学的検証が必要である。
 現在、ALAが健康食品や医薬品として商品化されているが、ポルフィリン代謝異常症を有する人は絶対に用いないでください。  (近藤雅雄:平成28年11月25日掲載)

PDF:ALAと免疫3

高齢期の健康に影響を与える成人期の健康・栄養問題とは

 成人期は就職、社会貢献、結婚、子育て、子どもの自立、親の介護など、生涯において様々な環境因子・ストレスによる影響が最も大きい激動期である。この時期は、生活が多忙になり不摂生や無理をし易く、食べすぎや飲みすぎ、不規則な食事時間、欠食、栄養素のアンバランス、運動不足、肥満などと併せて、生活習慣病が発症するなど、身体的にも社会的にも大変重要な時期であり、高齢期への健康に大きく影響を与える。したがって、健康寿命の延伸とQOLの向上を図るための方策を早めに考え、成人期の特徴、生活習慣を変える効果的な方法などについて栄養学的に理解することが大切である。

1.成人期の生理的特徴
 1)生理的変化と生活習慣の変化

2.成人期の栄養アセスメントと栄養ケア
 1)成人期の栄養の特徴
 2)成人の食事摂取基準
 3)生活習慣病の予防
 4)肥満とメタボリックシンドローム
 5)主な生活習慣病の一次予防
(近藤雅雄:平成28年1月15日執筆掲載)
ここでは、上記の目次にしたがって執筆内容をPDFに掲載した。
  PDF:高齢期の健康に影響を与える成人期の栄養