平成27年6月26日(金)から毎月第4金曜日に島根県済生会江津総合病院の堀江裕(ほりえゆたか)名誉院長の高い志のもと、浜松町ビルディング(東芝ビルディング)1階の「芝浦スリーワンクリニック(望月吉彦院長)」内に日本で初めてポルフィリン症専門外来が開設されました。
堀江先生に感謝
堀江先生とは「ポルフィリン症」という疾患を通して診断・治療などの共同研究だけでなく、学術研究会や患者会(さくら友の会)の創設・運営など、30年以上ご一緒させていただいている友人です。ポルフィリン症の指定難病や学術会議のシンポジウム開催などでよく国会議員の先生方への陳情にもご一緒させていただきました。
今回はポルフィリン症の専門外来開設の準備および診療にご一緒させていただきました。堀江先生はポルフィリン症の名医としての知名度が高く、患者さんは先生の診療をぜひ受けたいと言って日本全国から集まって来ます。先生のお人柄なども重なって、皆様感謝の意を表して先生の診療を受けています。
そのような中で、堀江先生の隣でポルフィリン症乃至その疑いのある患者さんの診断のお手伝いをさせていただいています。私にとって貴重な経験で、堀江先生とご一緒に、同じ目標をもってボランテアができることを大変光栄に思っています。
ポルフィリン症専門外来の診療にご一緒させていただいて
患者さんはポルフィリン症の疑いなどとして不安そうにポルフィリンの検査データを持って診察室に入り、その場で堀江先生と共に検査データ並びに採取した尿や血液の中にポルフィリンが含まれているかどうかの蛍光判定等のお手伝いをさせていただいています。
そこで感じることは、患者さんにとっては難病であるポルフィリン症の疑いと診断されて、今後どうして生きていけばよいのかなどといった不安、小さなお子様であれば、その子の将来に対する不安、育児の不安など、大変なストレスを抱えてこられる方がほとんどですが、堀江先生の的確な判断によって、ポルフィリン症の疑いと他院で言われてきた患者さん、あるいはお子様がその場にてポルフィリン症ではないと診断された時の感激に何度か遭遇致しました。また、ポルフィリン症と診断された方も、日常の生活習慣などの指導など的確な判断を下され、患者さんからは堀江先生から生きる力を頂いたと感謝し、診察室を後にします。
患者さんの殆どが誤診
ポルフィリン症は皮膚型と急性型に分類されますが、どちらも非常に多彩な症状を示す疾患で、多くの医師が一つや二つの症状がポルフィリン症に類似している、あるいは尿または血液中のポルフィリンの数値が多少高い。と言ってポルフィリン症の疑いがある、またはポルフィリン症であるという診断が下されます。しかし、そのほとんど(90%以上)はポルフィリン症ではありません。しかし、ポルフィリン症を疑ってみることはポルフィリン症の早期診断に繋がります。早期診断が下されば、その後の対応によって健常者と同様の日常生活を送れる場合が多いことが分かっています。ポルフィリン症は診察する医師が正しい知識を持っていれば、確定診断にこぎつけることは可能であり、正しい指導によって患者さんのQOLが著しく高まることは確かです。
決定的な誤診例
20年位前に、山口県で急性ポルフィリン症と診断された思春期の娘さんが、15年後、結婚して30歳となって子どもがほしいからと言って相談に来られたことがあります。そこで、検査した結果、ポルフィリン症ではありませんでした。明らかな誤診でした。その人にとって見れば、それまでの15年間、医師の診断・治療・指導を忠実に守り、大変な思いをして生活されて来たことを知って、医師の診断に対する責任を痛切に考えたことがあります。また、医師の指導が十分でなく、死の転帰をされた患者さんなど、誤診並びに不適切な診察を多く見てきております。
診療拒否例
通常、ポルフィリン症の場合はその多彩な症状から確定診断されるのに長くかかることは多く知られています。さらに、患者さんのかかりつけの病院または大病院にはポルフィリン症を知る人はいないということで、診療を拒否される場合が多く存在します。さらに、ポルフィリン症の患者さんに対して、厄介な病気であるということで、あからさまに不愉快な態度をとり、病院から追い出そうとする医師がいることは真に残念ですが、事実です。医師はどのような病気の患者さんであろうと共に寄り添う姿勢が大切です。
今後の課題~医師へのお願いと後継者
現在、ポルフィリン症の専門外来を通して、ポルフィリン症という稀少疾患について正しく診察して頂くよう、医師への啓発を含め、教育・研究活動を続けています。しかし、堀江先生も私も定年を迎え、高齢期になっていることから、今一番急ぐことは、ポルフィリン症研究の後継者を育てることです。
今回のポルフィリン症専門外来の開設の大きな目的の一つは、指定難病であるポルフィリン症に対する研究者並びに医師の後継者が出てくることです。多くの医師に、堀江先生の活動に注目して頂き、ポルフィリン症に対する興味を持っていただきたいと願っています。この専門外来がいつまで続くか未定ですが、この専門外来の意義を理解し、稀少疾患を抱えた患者さんへの治療に対する高い志を持った医師が沢山出現してくることを切に願っています。
(近藤雅雄:平成27年7月29日掲載)