社会人の評価の一つとして、謙虚さや誠実さなどといった「人格・品性」があります。これは、人としての基本である「相手を思いやるこころ」,「いのちを大切にするこころ」,「感謝するこころ」、そして、社会の一員としての「責任あるこころ」を指します。人は生涯、社会人としてさまざまな人間と関わりますが、この関係を上手に保ち、人生を豊かにするためには年齢を問わず「相手を思いやる」こと、そして「自分に勝つ」ことが大切です。
1.社会人としての評価
教育・研究分野で経験した多くの事例の中から、未だに記憶に残る3つを以下に示します。
1)研究協力の事例
国際的に有名な教授からサンプルとその情報の提供依頼があり、科学の発展のためにこころよく受け入れました。教授はそれを用いて研究し、優れた論文発表を行いました。しかし、サンプル提供などに関する謝辞や研究成果の報告などは一切ありませんでした。国際的には有名な学者として活躍していますが、人間的には首をかしげる研究者でした。
2)会議の事例
ある職場の運営会議で、議長が資料を作成・配布し、審議を始めたところ、20人の委員の内一人が誤字を指摘し、「このような、誤字のある資料を基にまともな議論はできない」と言う理由で会議が流会しました。
一人の人間によって会議が破壊された例ですが、誤字は一つだけで、内容は全く問題はありません。その委員は被害者意識、組織への不満が強く、会議等、組織活動を平気で声高に破壊する人でした。この様な人は意外と多いです。議長は逆らわず、誤字を反省し、後日開催された会議では完璧に無事終了しました。
3)人事の事例
某私立大学の教授が突然トップ人事によって某研究所の新所長となりました。新所長は、一方的に研究所の研究内容の変更と同時に研究者の入れ替えを行いました。また、研究部長から主任研究員(部長が大学教授、主任研究員が講師に相当)、またその逆など、降格や昇格の人事を行いました。権力を振るい組織を私物化したのです。結局、旧所長を含め10名以上の優秀な研究者が辞職しました。真面目で優秀な研究者の夢・生活が破壊された大きな悲劇です。本来あってはならないことですが、研究者は自分で新たな職場を見つけ転出しました。
以上、3つの事例は教育・研究分野では比較的良く遭遇します。彼らは偏差値の高い、一流大学出身の優秀な学者であり教育・研究者です。しかし、人間的には我儘で自己中な人たちです。特に、権力を振るう人に自己中が多いようです。そのような人は相手の心の痛みを理解せず、すべて自分が正しいと思い込んでいます。例え間違っていても、それを認めず、後ろを振り返ることはありません。常に前を向いています。
人間の評価は、血筋、偏差値、難関大学出身、業績、勲章など学歴や肩書といった表面的なラベルではなく「他者理解力」、感謝するこころがあるかどうかといった「内面的な豊かさ」に基づく「人格・品性」が大切です。
社会には多様な職種がありますが、関わる人がすべて人格者だとは限りません。組織は人によって運営される以上、さまざまな問題が起こります。組織で重要なのはリーダーの人格・品性です。人間として基本的に重要な「他者理解」(相手の視点や立場に立って考えること)できるか否かが組織の発展に大きく関与します。
2.社会人としての生き方
長い人生、人は多様な人間と関わります。その関係を正しく保つためには「信念」「他者理解」「感謝」のこころを持つと同時に、「自分に勝つ」こころを持つことが大切です。「自分に勝つ」とは、怠け心や誘惑を抑え(克己心)、目標に向かって強い意志で行動し続けることです。誰でも迷い、苦労し、悪い誘惑、困難、恐怖、哀しみ、怒りなどを経験します。その時は落ち着いて、自分を見つめ直し、自信を持って、ゆっくりと前へ踏み出します。そして、良き人脈を沢山構築し、それぞれの関わる社会・家族に迷惑をかけず、思いやりと責任を持つことです。
おわりに
「人は財産(人財)である」と言われます。「人材(スタッフ)募集」をよく見かけますが、スタッフは英語でSTAFFと書きます。優秀な人であれば人財となります。しかし、STUFFとなると、単なる物(粗大ゴミ)であり、人罪となります。昔、学生によく「社会に役立つ人材(人財)となれ!」と講義で励ましたことを思い出します。相手への思いやりを持った良い人間関係を確立すればそれは人財となり、その後の人生を豊かにします。人は一人で生きて行くことは難しいので、多くの人と良い関係を築きたいものです。(近藤雅雄、2026年5月26日掲載)
以下に、自分を取り巻く環境に対する生き方についてPDFで示しました。ご参照ください。
PDF:自分を取り巻く環境は自分で創る、自分に勝つ



