ポルフィリン症は昭和61年までに世界で10病型が報告され、わが国では6病型が報告されています。その内、皮膚型4病型のポルフィリン代謝の異常機構と早期診断法の開発を行いました。
まず、ポルフィリン症は発症すると早期に重篤化することが多いため早期診断が極めて重要です。そこで、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて、生体内に存在するポルフィリン類を短時間で分別定量できるスクリーニング法の開発を行いました。同時に、皮膚型ポルフィリン症、自験例60例から血液・糞便中び肝・骨髄細胞内のポルフィリン代謝関連物質の測定法の開発を行いました。
また、皮膚型ポルフィリン症の中で最も発症頻度の高い晩発性皮膚ポルフィリン症(PCT)の発症に関わるアルコール、鉄、エストロゲンなどの薬物を実験動物ラットに投与し、本症発症の機序について検討しました。
さらに、わが国におけるポルフィリン症報告例をできる限り集計し、得られた約500例について臨床統計と疫学的考察を行い、実態解明を行いました。
これら研究の成果を以下に示します。
1.ポルフィリン症の早期発見法の開発に関する研究
1)HPLCを用いて尿、血液、糞便中のポルフィリンをすべて測定できる高感度自動微量分析法を開発、臨床応用し、各種ポルフィリン症及び血液・肝疾患患者の鑑別診断を可能にしました。
2)尿、血液中ポルフィリンのスクリーニング法を開発し、早期診断を可能にしました。
3)ヘム合成関連酵素の微量精密酵素活性測定法を新規開発し、患者生検肝組織からの測定を可能にしました。
2.皮膚型ポルフィリン症のポルフィリン代謝異常の解明
1)PCT患者33例を見出し、患者の生検肝及び血液中の新たな酵素異常を見出しました。また、赤血球ウロポルフィリノゲン脱炭酸酵素活性が低下しているPCT患者2例を初めて見出しました。さらにPCTの発症に関わる因子やヘキサクロロベンゼンを各々実験動物に投与し検討した結果、PCTとは代謝異常が異なることが分かりました。
2)赤芽球性プロトポルフィリン症患者12例を見出し、この内、極めて遺伝的素質の強い1家系の白血球フェロキラターゼ活性を測定し、著明に低下していることを初めて見出した。また、わが国で初めて肝性赤芽球性ポルフィリン症を見出し、代謝異常を明らかにしました。
3)多様性ポルフィリン症患者6例を見出し、生検肝組織中のδ-アミノレブリン酸合成酵素活性が著明に上昇していることを見出しました。また、典型的なポルフィリン排泄パターンを見出しました。
4)先天性赤芽球性ポルフィリン症(CEO)患者7例を見出し、代謝異常を明らかにしました。
3.ポルフィリンの臨床統計
大正9年に初めて報告されてから昭和61年12月までの全報告例を詳細に検討・集計し、わが国におけるポルフィリン症の実態を明らかにしました。(近藤雅雄、1987年3月31日公開、2025年10月26日更新)



