病気と治療8.総合病院における「チーム医療」推進を期待

 厚生労働省は「チーム医療の推進について(案)」を7つ挙げています。その内の一つ、『チーム医療とは、「医療に従事する多種多様な医療スタッフが、各々の高い専門性を前提に、目的と情報を共有し、業務を分担しつつも互いに連携・補完し合い、患者の状況に的確に対応した医療を提供すること」と一般的に理解されている。』とあります。しかし、私が3度の入院中で経験した現状とは異なっていました。

 この健康・栄養資料室「病気と治療7」で述べたように、私が肺炎で大学病院(特定機能病院医療機能評価機構認定病院)の血液内科に入院した時は主治医や担当医の記載がないまま、6人の病棟医師(内2人が研修医)によって治療が行われました。治療を計画、実行する責任者は誰だか不明です。そして、医師を中心として看護師、薬剤師、理学療法士が治療に関わりましたが、その連携はありませんでした。まず、医師について、末梢神経障害を訴えましたが、残念ながら聞きとめる医師はいませんでした。医師は患者の言葉(ナラティブ)を聞き、治療に当たるのですが、全く基本的なことが行われていないことに驚きです。また、薬の副作用を何度も訴えましたが、担当医師、看護師は対応せず、当直の医師(内分泌内科)が対応しました。
 薬剤師については、持病薬を病室に持って来ましたが、副作用との関係を聞いても説明できず、また薬の複合的副作用について説明できる薬剤師はいませんでした。薬を持ってきただけで薬剤管理指導料を取る。また、理学療法士が勝手に病室に3回来ましたが、雑談しただけで、リハビリ指導料を取る。さらに看護師については本資料室「病気と治療5,7」に示したようにチーム医療とは言えない作業でした。これでは、患者の心身をさらに傷つけ、そして高額の医療費による生活の困窮など、明らかな医療過誤です。残念ながら、これが大学病院に限らず、多くの病院の現実と思われます。

チーム医療への期待
 病院には患者の立場にたったこころの医療(他者理解、仁愛)を期待します。チーム医療は、安心・安全な高度医療を提供するため、主治医を中心とし、医師、看護師、薬剤師、理学療法士、管理栄養士など、さまざまな専門職がそれぞれの専門性を活かし、情報や目的、治療法を共有しながら連携を密にし、患者一人ひとりに最適な医療を提供することです。
 「チーム医療」によって、患者の心理的・社会的な側面を含めた多面的な支援が可能となり、患者のQOL向上と自然治癒力の向上が期待できます。そのためのリカレント教育(または研修)が必要ですが、患者が安心して、より良い療養生活が送れるようチェック体制の強化、医療環境の充実、ガバナンス強化、情報の共有・連携など、チーム医療の推進、総合的な医療体制の構築・強化を期待します。(近藤雅雄、2025年10月15日掲載)