基礎栄養学では生命の基礎である栄養の基本的概念と意義、健康の保持・増進、疾病の予防・治療における栄養の役割、エネルギーと栄養素の代謝とその生理的意義などを理解することを目標として、栄養学の歴史的背景から栄養の意義、栄養素の生理的作用、栄養素の体内相互変換やその機能、栄養と健康および疾患との関わり、栄養と食生活の関係、体構成成分としてのエネルギー源の役割、摂食行動から消化・吸収、栄養素の体内運搬など、これらの基本的概念を理解することにある。本書ではこれらの項目をわかり易く「コンパクト」にまとめた。
本書は管理栄養士・栄養士養成施設で学ぶ学生は勿論のこと、健康、医療などヒトの生命に関わる領域を勉強している学生の教科書としても十分用い得る内容である。とくに、管理栄養士はこれら分野の幅広い知識と技術を駆使して病院、学校、企業、その他社会的な場面で人々の健康の保持・増進、疾病の予防や治療・予後などの指導・管理にあたってほしいと願う。
さて、2000(平成12)年4月に栄養士法が改正され、管理栄養士は保健・医療専門職の国家免許資格として定められた。業務についても従来の「複雑困難な栄養の指導等」から「傷病者に対する療養のために必要な栄養の指導、特別の配慮を必要とする給食およびこれらの施設に対する栄養改善上必要な指導等」と明文化された。 この趣旨を踏まえ、管理栄養士養成施設の教育カリキュラムの検討が行われ、2002(平成14)年に「管理栄養士国家試験出題基準(ガイドライン)」が発表され、2006(平成18)年3月には新しいガイドラインが策定された。さらに、2010(平成22)年12月には保健、医療、介護、福祉などの分野における学術の進歩や、制度の変化に伴う管理栄養士業務の進展から国家試験の出題基準が改訂された。本書はこの改訂に沿って基礎栄養学の「教育目標」および管理栄養士国家試験「出題のねらい」に示された内容に合致するように各項目や記載内容に十分配慮して作成した。
本書は管理栄養士等養成校の学生は勿論のこと、保健・医療・福祉などに関わる領域を勉強している学生、一般社会人にもわかり易く「コンパクト」にまとめた。本書を読まれた読者は、ヒトの生涯に関わる栄養問題を学修し、保健・医療・福祉・文化・環境などの幅広い分野との関連性を理解し、社会にしっかりと貢献して欲しいと願う。 また、本書学習におけるまとめを作成し、本資料室2019年8月5日に掲載したので、併せて読んで頂けると嬉しい。(近藤雅雄ほか編著:コンパクト基礎栄養学、朝倉書店、2013年3月25日)
