朝倉書店から「コンパクト公衆栄養学」を出版しました

 公衆栄養の歴史は明治以後が対象となるが、栄養行政と密接に関連しながら並行して進展してきた。すなわち、古くは、戦前・戦後の栄養欠乏時代から過剰対策へ、昭和53年「国民健康づくり運動」、さらに高齢化社会対策昭和63年「アクティブ80ヘルスプラン」、平成12年「=健康日本21」、平成17年「健康フロンティア戦略」、「食育基本法の施行」、平成21年日本人の食事摂取基準(2010年版)」など、未来に向け急速に変化する国民の健康問題がその時代の変遷とともに政策として打ち出され、それに対応する公衆栄養活動が行われてきた。
 それと同時に、栄養士教育面では平成10年「21世紀の管理栄養士等のあり方検討会報告」において管理栄養士業務の在り方、国家試験の在り方などの検討が行われた。平成12年4月に栄養士法の一部改正が行われ、管理栄養士は登録資格から免許資格とされ、その業務についても従来の「複雑困難な栄養の指導等」から「傷病者に対する療養のために必要な栄養の指導、特別の配慮を必要とする給食及びこれらの施設に対する栄養改善上必要な指導等」と明文化された。
 この趣旨を踏まえ、管理栄養士養成施設の教育カリキュラムの検討が行われ、平成18年3月からは新しい管理栄養士国家試験出題基準)に従った受験体制が確立した。本書は新ガイドラインに沿って公衆栄養学の「教育目標」及び管理栄養士国家試験「出題のねらい」に準拠して作成した。
 公衆栄養学では、社会の変遷に対して、常に謙虚に過去・現代および将来を見据え、現状における最も重要な問題を正しく捉えることが必要である。栄養士として、人間社会において最も基本的である相手の立場になって考え、行動し、地域社会とのふれあいを通して、人間の生活の質(QOL)をいかに高めるかを、保健・医療・福祉・文化・環境などの幅広い学際的な分野へ自ら参加するアプローチを学び、社会に貢献する仕事に就いて欲しいと願う。
 本書は管理栄養士等養成校の学生は勿論のこと、保健・医療・福祉などに関わる領域を勉強している学生、一般社会人にもわかり易く「コンパクト」にまとめた。栄養学に興味を持つ人であればぜひ本書を推薦する。(近藤雅雄ほか編著、コンパクト公衆衛生学、朝倉書店、2010年4月20日発行)