学術研究報告書「ヘムの生合成とその代謝調節」を出版

 ポルフィリンは4個のピロール核が4個のメチン橋で結合された環状化合物を言い、遊離のまま、または鉄、マグネシウム、銅、コバルト、バナジウムなどの金属原子と錯塩を作って微生物、動植物界に広く存在する。高等動物では大部分鉄との錯塩であるヘムとしてヘモグロビン、ミオグロビン、チトクローム系、カタラーゼなど、ヘム蛋白質の作用基として酸素の運搬、細胞内呼吸、薬物代謝など、生命維持に必須な生化学反応が行われるための決定的役割を果たすため、その生合成と分解の調節機構を中心とした研究が多くの国内外の研究者によって精力的に行われている。

 本書は1980年、第20回「生化学若い研究者の会」の夏の学校(志賀高原、丸池サンバレー)にて開催された分科会「ヘムの生合成とその代謝調節」を個人的にまとめたものである。
 ヘムの生合成から分解までの一連の代謝調節機構を中心に生化学を志す若手研究者向けに、本研究分野における研究の独創性、将来性、あるいは実験的な研究方法などといった点を総合的にまとめ、興味ある人はさらにその興味の発展・充実に、また、興味のない人でも生体機能の根幹をなす重要な代謝調節について、本問題領域を理解し、知識として得ることは自己の興味の対象としている分野との関連性が必ず生まれてくるものと信じて、若手研究者に無料で配布した。
 生化学を志す若手研究者に少しでも本書が役立てれば幸いである。これを期として、わが国で近い将来ヘムの領域をまとめた成書が刊行されることを期待する。(近藤雅雄編著者:1981年7月発行)

 「生化学若い研究者の会」は、生命科学(生化学・分子生物学・バイオテクノロジーなど)に関する分野に興味を持つ若手研究者が集う自主団体。日本生化学会後援のもと、1958年から活動を行っている学会若手の会として、最も由緒のある会の一つ。全国の大学院生を中心に、学部生・企業人・大学関係者など幅広い人々が集まり交流を行っている。(2025年5月22日、「生化学若い研究者の会」から引用した)


PDF:ヘムの生合成とその代謝調節