私たちの生命は、呼吸・循環系、消化・吸収系、栄養・代謝系、排泄系、内分泌や感覚・運動・神経系など多数の機能が恒常性を保ち、健康な状態を維持しています。この働きの中心となるのがヘムという赤い物質です。このヘムは、例えば酸素を運搬する赤血球中のヘモグロビンや生命のエネルギー物質アデノシン三リン酸(ATP)を生産するシトクロームなど、生体機能の根幹反応に関与する物質で、生命維持に関わる根源物質です。このヘムは、基本的に体内のすべての組織細胞にて生産され、蛋白質と結合したヘム蛋白質として多様な機能に関与し、その合成には8個の酵素によって遂行されます。この代謝をポルフィリン代謝系またはヘム生合成系と言っています。
私はこれら代謝物や酵素活性の測定法を診断や病因解明を目的に患者さんから採取された微量の生検材料を用いて新規開発し、代謝調節の機序について長年研究をしてきました。その過程で、28歳時にポルフィリン症の患者さんと出会い、生涯の研究テーマの一つとしてこの病気の研究に関わることになりました。その結果、1978~2007年の約30年間に日本で報告されている殆どの患者さんの診断を行ってきました。それと共に、患者さんからの依頼によって「患者の会」を立ち上げ、さらに学術研究組織「ポルフィリン研究会」を立ち上げ、いつも患者さんの立場に立った研究・教育活動を行なってきました。
ここでは、ポルフィリン症の実態と患者会の活動について、以下のPDFに纏めました。
1.ポルフィリン症とは
2.ポルフィリン症という病気の重症度
3.ポルフィリン症は単一な病気ではなく9病型ある症候群である
4.ポルフィリン症の診断基準
5.ポルフィリン症の年代別頻度
6.ポルフィリン症の誘因、誤診、予後
7.ポルフィリン症の過去・現在・未来
8.患者会の二大重点活動
9.署名活動の意義
(平成21(2009)年1月21日執筆)
その後の難病行政
昭和47年10月に難病対策が施行されてから平成26年まで、42年という長い年月を経ました。この間に難病認定されたのはたった56疾病でした。しかし、平成21年度からは厚生労働省内で難病指定の見直しが行われ、平成26年8月28日に56疾病から110疾病が「指定難病」として追加・決定しました。さらに、平成27年5月までに合計306の疾患が承認されました。
(追記:平成27(2015)年9月1日)
PDF:ポルフィリン症:患者の立場に立った研究とその使命