本邦36例目の先天性赤芽球性ポルフィリン症の症例報告

尿中ポルフィリン分析によって確定診断されたCEP

 指定難病ポルフィリン症急性ポルフィリン症皮膚ポルフィリン症に分類される。先天性赤芽球性ポルフィリン症(CEP)は1911年にGüntherによって報告されて以来、世界で約200 例しか報告されていない極めて稀な疾患である。遺伝形式は常染色体劣性遺伝であり、9病型から成るポルフィリン症の中で最も激烈な皮膚光線過敏症を呈する難治性疾患である。本邦では1920年にはじめて東北で報告されて以来、2010年までに35例しか見出されていない
 CEPはウロポルフィリノゲンⅢ合成酵素遺伝子の異常によって、本酵素の活性が正常の2~20%に減少しているため、生体内では利用されないⅠ型ポルフィリンの過剰生産・蓄積・排泄が起こり、その結果、皮膚症状をはじめとする多彩な症状が出現する。われわれは、高速液体クロマトグラフィーを用いたポルフィン異性体分析法を新規開発し、元慈恵医科大学皮膚科、上出良一教授(現在、ひふのクリニック人形町院長)より皮膚ポルフィリン症が疑われた患者の検査依頼があり、尿中ポルフィリン解析によって、36例目の新たなCEP患者を見出した。詳細は以下のPDFを参照されたい。

 現在、日本国内の臨床検査会社ではポルフィリンの異性体分析が行われていない。したがって、これら疾患の診断が困難な状況が長年続いている。例えば、Dubin-Johnson症候群では測定5分以内で尿中のコプロポルフィリンの1型とⅢ型異性体の比率が正常と逆転する(文献:近藤雅雄ほか、医学のあゆみ、144(7)631-632,1988)ことから、確定診断可能であるが、筆者が厚生労働省を退職した2007年以降測定の報告はない。診断に重要な検査であり、早急な整備が望まれる。(近藤雅雄、2025年5月8日掲載)

PDF:先天性赤芽球性ポルフィリン症症例