猫がアワビの胆を食べて光線過敏症を起こし耳が落ちた

 「和漢三才図会」(正徳3年、1713年)に鳥貝の腸を食べると猫の耳が落ちるという奇妙な記述があります。また、アワビの肝臓を与えると激しいかゆみのため耳をひっかき取ってしまうという報告もありますが、猫ばかりでなくヒトにおいても、「東京医事新誌」(1899年)にアワビの内臓を食べると顔面の浮腫を伴う皮膚炎が生じることが報告されています。また、食品中のクロロフィル分解産物が健康障害を起こすことが知られています。
 これらの理由は1977年になって、クロロフィルがクロロフィラ-ゼという酵素によって分解されたフェオホルバイドaによる光線過敏症であることが明らかにされました。アワビの中腸腺に遠紫外線を暗い部屋で照射すると強い美麗な赤色蛍光を発しますが、これはピロフェオホルバイドaによるものであり、フェオホルバイドaの数十倍の活性を有します。これらは野沢菜漬、高菜漬などの塩蔵漬け菜中にも認められます。紫外線で赤色蛍光を発するのはポルフィリンクロロフィルとその分解物フェオホルバイドなど、意外と多く知られています。
 また、フェオホルバイドは、緑茶やクロレラなどの緑色野菜を加工した食品に含まれる可能性があり、とくに蒸しの浅い玉露や抹茶ではフェオホルバイドの生成量が多いことが報告されています。これらの食品を摂取する際は、量に注意してください。(近藤雅雄、2025年5月5日掲載)