急性ポルフィリン症とジョージⅢ世:Royal Malady(国王の病気)

 1968年、Macalpineらは英国のジョージⅢ世(写真1738-1820)の病因追及および血縁調査を行い、近世ヨ-ロッパのスチュワ-トハノ-バ、およびプロシアの三大王家の共通の病状を確認し、国王の病気(Royal Malady)と呼んだ。その病状は激しい腹痛に始まり、便秘、嘔吐、四肢の疼痛と脱力が起こり、さらに頻脈、発汗障害、しわがれ声、視力障害、嚥下障害、不眠症、高い興奮性、めまい、頭痛、振戦、昏迷、そして痙攣が引き続いて起こるという一連の腹部、神経、循環器症状および皮膚光線過敏症など多彩な症状がみられたという。また、これらの症状が不定期に憎悪と寛解を繰り返していたということ、さらに赤色尿の記述から、現在医学の知識に照らしてみると彼らの病気はプロトポルフィリノゲン・オキシダ-ゼ(PPO)の異常症である多様性ポルフィリン症(VP)と推測される。米国市民革命の原因となった茶税賦課の決定はジョージⅢ世のポルフィリン症の発作中であったと推定されている。国王・貴族の病気を風刺した演劇が多数知られている。

 日本で1997年11月22日(土)に公開された1994年制作の英国の映画、『英国万歳!』(The Madness of King George)を新宿の映画館で見ました。約2時間でしたが、医学的に大変勉強になりました。内容は、18世紀に起きた実話を基に、国王の“ご乱心“をめぐる悲喜こもごもを活写した痛快な作品。錯乱と奇行を繰り返す王様、慌てる側近、王位を狙う皇太子らの騒動が描かれていく。ポルフィリン症は、日本では2015年に指定難病となりました。(近藤雅雄、2025年5月5日掲載)
PDF:国王の病気