研究を始めた1970年代、ポルフィリン測定の検査会社はありませんでした。ポルフィリン症の診断は大変遅れ、診断に何年もかかり、または誤診される確率が非常に高く、発症してからの致死率も急性ポルフィリン症の場合には80%を超えていました。
これまで誰も成し遂げなかった、ポルフィリン代謝関連産物(8つの酵素活性とポルフィリン代謝関連物質合計25種類の測定法の開発を行い、1970年代後半、世界に先駆けて血液および尿10µℓ、肝組織10mgや骨髄・皮膚・神経・腎細胞、培養細胞と言った微量生検試料を用いて、生体内に存在する全ポルフィリン類(約20種類あります)をほんの数10分で測定できる自動微量迅速精密分析定量法を、高速液体クロマトグラフィーを用いて開発しました。測定法(検査法、診断法)が完成すると次は診断基準となります。多症例の患者さんが必要となるので、国内からポルフィリン症患者さん並びにその疑いのある人から測定しました。同時に、対照値として、血液、尿、糞便においては健常者を対象とした各種健診時に採血、検便、採尿した試料を集め、年齢・性別に分けてポルフィリン代謝産物や血液中の酵素活性の健常値を決定しました。
1978年~2007年2月の約30年間、「ポルフィリン症の疑い」として、あるいは診断が付かない疾病などの病態解析のためにポルフィリン代謝関連物質の検査依頼があった総検体(試料)数は6,000以上になりました。この内、遺伝性ポルフィリン症として確定鑑別診断したのは、215例でした。
2007年以降、ポルフィリン症の生化学的検査をする研究者はいなくなり、確定診断に必須なポルフィリン代謝関連物質の測定を行う研究・検査機関も殆ど無くなりました。検査は米国に検体を送っているのが現実です。現在、研究者や検査機関は増えることなく、患者の報告数も減少しています。さらに、ポルフィリン症関係の学術図書、論文・記事が急激に少なくなりました。2015年に「指定難病」に承認されたのを機会に、ポルフィリン症研究の研究者および検査機関が増えることを願っています。(近藤雅雄、2025年5月1日、掲載)
PDF:患者の立場に立った教育・研究活動