ポルフィリン症の診断は将来的には遺伝子診断が普及し、それに伴って遺伝性ポルフィリン症の簡易的な遺伝子診断法が開発され、現在の新生児マスクリーニング検査の拡大版として普及されることを望む。診断が確立されれば、症状発現と代謝異常とが相関するので、症状の重症度評価並びに予後判定に、ポルフィリン代謝物の測定が必須となってくる。
また、ポルフィリン代謝によって生産されるヘムは生命の根幹の生化学反応に関わる生命維持に不可欠な色素である。そのため、ポルフィリン代謝関連物質の測定は遺伝性ポルフィリン症だけでなく、後天性のポルフィリン代謝異常症の病態解析や治療および予後判定などに重要な指標となるので、将来的にも測定は必要不可欠である。さらに、ポルフィリン代謝系酵素はさまざまな環境因子によって鋭敏に影響を受けるため、その代謝物の測定感度の高さから微量の検出で評価できるので、放射能や大気汚染物質、医薬品、農薬、有機溶剤、鉛、水銀、タリウム、砒素あるいは希土類元素など各種元素などの各種薬物や環境物質の生体影響の指標としても有用である。
現在、遺伝子診断並びにポルフィリン代謝物の測定は難解で時間と技術を要し、高価な機器を用いなければならない。これを安価で、誰にでもできるよう簡素化することが望ましい。
将来、尿、血液、糞便中のポルフィリンや尿中ポルホビリノゲンを検出する試験紙法(例えばpH試験紙やウイルス検出キットのようなもの)などの開発やポルフィリン症の発見率の向上や発症予防・予後判定、及び環境因子の生体影響評価等に応用できるものが開発されるのを期待している。(近藤雅雄、2025年4月26日掲載)