ポルフィリン代謝経路はALAからPPにFe2+がキレートしてヘムが生産されるまでの経路をいう。この代謝には8個の酵素とその代謝産物が発生する。ヘム合成異常はポルフィリン代謝の特徴から障害酵素までの中間代謝物が過剰生産・蓄積し、これが組織の機能を障害するだけでなく、ヘム生産の減少に基づくヘム蛋白の多様な機能に重大な影響を与える。したがって、ポルフィリン症などのポルフィリン代謝異常症では生体のさまざまな機能障害に基づく、多彩な臨床症状を診るのが特徴で、診断が難しい理由となっている。
ポルフィリン代謝関連物質の測定はポルフィリン症の確定診断や鉛作業者の職業病検診に重要である。そこで、ポルフィリン代謝関連物質の内、中間代謝産物を中心に、そのプロフィール、基準値、異常値を示す疾患、臨床的意義、検査のすすめ方などに関する諸情報をまとめた。測定(検査)の具体的方法については本資料集「ポルフィリン症の鑑別診断法:生化学診断および酵素診断、2025年4月21日掲載」を参照されたい。
民間の臨床検査会社ではポルフィリン代謝産物の検査は需要とコストの関係から行なわれていない。鉛中毒予防規則の一環としてポルフィリン代謝のごく一部の検査が行われているだけである。ポルフィリン症の確定診断は不可能である。海外では行われている。また、ポルフィリン症の専門家は極めて少なく、多くの医師はデータに誤りがあっても、その誤りを指摘・確認できないことが多く、診断を困難にしている。そこで、以下の症状などが診られた場合には必ずポルフィリン症を疑い鑑別検査を行うことを勧める。診断は厚生労働省が出した指定難病ポルフィリン症の“診断基準”に従う。
1.原因不明の光線過敏症で、皮膚露出部に水疱形成、瘢痕形成、色素沈着、皮膚の脆弱性などを診る場合。または日光被曝直後の皮膚の激しい痛み、腫脹、発赤が診られる場合。
2.原因不明の激しい腹痛、嘔吐、便秘(または下痢)、イレウスなどの症状や多彩な神経症状が診られる場合。
3.1と2の両者が混在して診られる場合。
4.肝機能障害と光線過敏症が合併している場合。
5.家族歴がある場合は不顕性遺伝子保有者の早期診断を行う。
ここでは正確な早期診断の実施を期待して、民間検査機関(殆どが米国の検査会社に外注している)が行っているポルフィリン代謝関連物質の測定項目を中心に、その意義を以下のPDFにまとめた。なお、鉛作業者の場合は労働安全衛生法による鉛中毒予防規則に従って測定する。(近藤雅雄、2025年4月25日掲載)
PDF:ポルフィリン代謝産物の概要:測定とその意義