ヘムはグリシンとスクシニルCoAを縮合してδ-アミノレブリン酸(ALA)を生産するALA合成酵素から始まって、最終的に鉄導入酵素によってプロトポルフィリンに二価鉄が入り、ヘムが生産される。この間に6つの酵素反応が関与する。生産されたヘムはそれぞれの組織におけるアポ蛋白に配位して様々なヘム蛋白質(ヘモグロビン、ミオグロビン、チトクロームP-450、NO合成酵素、グアニル酸シクラーゼ、カタラーゼなど)となり、生体の呼吸システム、エネルギー生産システム、薬物代謝、血流調節、情報伝達システム、酸化ストレス防御システムなどを行う。すなわち、ヘムは生命維持に不可欠な機能の中心的な役割を果たしている。
ヘム合成に関わる8つの酵素活性の測定は遺伝性ポルフィリン症の鑑別診断、不顕性遺伝子保因者(キャリア)や鉛中毒などのポルフィリン代謝異常症の診断に重要である。測定材料は、主に血液細胞、肝細胞、皮膚などの各種培養細胞など極微量の生検材料が用いられるが、症例数が少ないだけでなく、測定法および活性値が統一されていない。したがって、判定には必ず対照値を必要とする。
酵素活性の測定方法はALA脱水酵素およびポルホビリノゲン脱アミノ酵素の両活性を除いて極めて煩雑である。わが国の医療現場ではヘム合成に関する8個の酵素についての活性測定は未だに行われていない。そこで、ポルフィリン代謝異常症の酵素異常を理解するために、この代謝(ヘム合成系またはポルフィリン代謝系という)に関連する酵素の概要として酵素活性の臨床的意義、基準値、異常値、生理的変動などの基本的事項を下記PDFに纏めた。酵素の活性測定法については本資料集の「ポルフィリン症の鑑別診断法:生化学及び酵素診断法(2025年4月21日掲載)」に記載した。(近藤雅雄、2025年4月24日掲載)
PDF:ヘム合成系8酵素の概要