ポルフィリン症の診断技術と治療研究の推進・進化を期待

 1920年、わが国で最初にポルフィリン症患者が報告されて以来、100年経ったが未だに医療関係者ですらこの病気を知らない者が多く、その知名度は極めて低い。遺伝性ポルフィリン症は診断されていない患者が意外と多い。また、ポルフィリン代謝異常を起こす疾患は鉛中毒や血液・肝障害など意外と多い。にもかかわらず知名度が低い最大の理由は診断と治療の難しさにあるようだ。リトマス試験紙のような簡単な検査法が開発されると良いのだが。また、医学・医療に対する高い志があれば検査・診断はすぐに成就されるのだが。Impossible is Nothingである。
 指定難病 ポルフィリン症はポルフィリン代謝異常症の中で最も深刻な疾患で、生命の根源物質ヘムの合成を行うポルフィリン代謝系酵素の異常に基づく疾患群である。ポルフィリンの代謝障害が骨髄の赤芽球で起こると主に皮膚症状、肝臓で起こると消化器・神経・精神症状が、そして赤芽球と肝細胞の両者で起こると皮膚症状と肝障害が生じ、病因別に9病型が知られている。このヘム生合成の中間体であるポルフィリンが過剰産生・蓄積した場合に各種活性酸素の発生源となる。
 最終生産物であるヘムは、赤芽球細胞ではグロビン蛋白質と結合して赤い血色素ヘモグロビンとなり酸素の運搬を行う。肝臓では薬物代謝で重要なチトクロームP-450(CYP)として生理作用を発揮する。その他、ヘムは筋肉の運動、エネルギー(ATP)の生産、活性酸素の除去など生命維持に不可欠なさまざまなヘム蛋白質の作用基として、その重要性が広く知られている。ポルフィリン症はこのヘム生産量が減少し、ヘム生合成の途中中間代謝物であるポルフィリン前駆体δ-アミノレブリン酸やポルホビリノゲン、そして、各種ポルフィリン類が体内に過剰生産・蓄積すると発症する病気で、生命に関わる疾患である。

本稿では、ポルフィリン症のまとめとして
1.ポルフィリン症とは
2.ポルフィリン症という病気の重症度
3.ポルフィリン症は単一な病気ではなく9病型ある症候群である
4.ポルフィリン症の診断基準
5.ポルフィリン症の年代別頻度
6.ポルフィリン症の誘因、誤診、予後
7.ポルフィリン症の過去・現在・未来
について、下記のPDFに記載した。(近藤雅雄、2025年4月22日掲載)

PDF:ポルフィリン症の診断・治療の推進・進化を期待