1994年、ポルフィリン症並びにポルフィリン代謝関連物質に関わる用語の日本語統一を図るため、「ポルフィリン研究会」(会長 故菊地吾郎,日本医科大学名誉学長、事務局長 近藤雅雄)においてポルフィリン症に関わる研究者が集まり、議論し、統一したものを下記に示した(添付のPDF参照)。その背景として、1994年5月、ポルフィリン研究会編集により「ポルフィリン・ヘムの生命科学、-遺伝病、がん、工学応用などへの展開―」と題し、東京化学同人より現代化学増刊号として出版するのを契機に日本語表記の統一を図った。
例えば、ポルフィリン症が骨髄型と肝臓型に分類され、骨髄性ポルフィリン症とされてきたが、この骨髄をすべて赤芽球に変えたりなどの作業を行った。したがって、ポルフィリン症表記に関しては、
1.Erythropoietic protoporphyria(EPP):研究者によって骨髄性プロトポルフィリン症。肝骨髄性プロトポルフィリン症などの記載がある。EPPは骨髄におけるポルフィリン代謝異常ということであるが、実際に代謝異常を起こしているのは骨髄の赤芽球細胞であり、英文表記でもerythropoieticとあるので、赤芽球性とした。また、肝障害を伴うことが多いことから肝骨髄性との意見があったが、肝障害を合併するのは10%前後であり、さらに、肝でのポルフィリン代謝異常は無いことから本表記を検討外とした。
2.Congenital erythropoietic porphyria(CEP):先天性ポルフィリン症や先天性骨髄性ポルフィリン症、ギュンター病、ガンサー病という記載が多かったが、先天性赤芽球性ポルフィリン症に統一した。
3.Hepatoerythropoietic porphyria (HEP):かつては肝・骨髄性ポルフィリン症であったが、肝赤芽球性ポルフィリン症と統一した。
4.Variegate porphyria(VP):「variegate」は、日本語では「~に変化をつける」「~を多様にする」「まだらにする」などの意味で使われる。具体的には、何かをより多様に、または変化に富むようにすることを指す(AIによる)。日本では報告者により、異型ポルフィリン症、異形成ポルフィリン症、多様性ポルフィリン症などの表記があるが、腹部消化器症状や中枢神経・末梢神経症状、皮膚症状など多様な症状並びに多様な代謝異常を呈するなどから「多様性ポルフィリン症」に統一した。
以上であるが、今後、時代の変化と科学の進歩によってポルフィリン症の表記も変わるかもしれない。(近藤雅雄、2025年4月22日掲載)
PDF:ポルフィリン症の日本語表記の統一