指定難病ポルフィリン症の臨床的所見、遺伝形式、遺伝子異常および生化学的特徴などがほぼ確立しているが、治療および予防に関与する薬剤情報は以外と少ない。とくに、誘発因子としての薬剤に関しては症状の誘発・増悪に直接関与するため、治療および予防上極めて重要である。
Ⅰ.急性ポルフィリン症の治療指針、治療と予防管理
急性ポルフィリン症(AIP,VP,HCP,ADP)は何らかの誘発因子によって最終産物のヘムの利用率が高まると、最初の酵素肝δ-アミノレブリン酸合成酵素(ALAS1)が高活性となるため、障害酵素までの途中中間代謝物が増量・蓄積する。この中間代謝物が組織・臓器にさまざまな影響を与え、多様な症状が出現する。したがって、治療としては、肝ヘム合成の律速酵素である ALAS1活性を抑えると同時にヘムの減少を抑えることによって中間代謝物の生産・蓄積が抑えられ、症状は無くなる。これを利用したものが治療薬となる。
すなわち、治療薬として用いるのは次の二つになる。第1はストレスや禁忌薬剤などヘム分解を誘発する因子の除去、第2はALAS1活性を抑制するグルコース輸液療法、ヘミン療法、シメチジン(タガメット)療法、ALAS1mRNA標的療法、そして症状に対する対症療法からなる。禁忌薬物が多いので対症療法には細心の注意が必要である。
早期に診断し、誘発因子を避けることができれば予後は良好である。重症の場合には血漿交換が適応となる。
Ⅱ.皮膚ポルフィリン症の治療指針、治療と予防管理
皮膚ポルフィリン症(EPP,CEP,PCT,HEP,XLPP)の治療として、遮光と共にCEPでは外用薬、PCTでは瀉血などが治療の主体をなしている。しかし、効果については必ずしも一定しない。
PCTは血清鉄や尿中ポルフィリンが高値の場合は瀉血療法を行う。瀉血療法を繰り返して過剰鉄を除去すると症状は著しく改善する。また、鉄キレ-ト剤としてデスフェリオキサミン(デフェロキサミン)が、HCV合併PCTではインタ-フェロン投与の有効性が、各々報告されている。PCTの軽症例では誘発因子(飲酒、鉄、エストロゲンなど)の除去および感染の治癒によって尿中ポルフィリンが正常化すると同時に症状が改善される。
また、PCTとEPPについてはシメチジン投与の有効性が報告されている。しかし、EPPは赤芽球型であり、ALAS2の抑制は認められない。EPPは予後が比較的良好だが、肝障害がある場合は肝不全を起こすことがあるので注意する。(近藤雅雄、2025年4月20日)
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