概 念
指定難病、遺伝性鉄芽球性貧血は骨髄赤芽球の環状鉄芽球の出現を特徴とする疾患で、遺伝性と後天性に分類される。本症では、ヘム合成経路の最初の酵素でありピリドキサ-ルリン酸(PALP)を補酵素とするδ-アミノレブリン酸合成酵素(ALAS2)の活性が著明に低下しているが、ポルフィリン症にみられるような症状はなく、無効造血による貧血が主症状である。ALASには赤血球系細胞でのみ発現し、ヘモグロビン合成に必要なヘムの生産を供給している赤血球型酵素(ALAS2)と、肝臓等すべての臓器で発現している非特異型酵素(ALAS1)の二つのアイソザイムが存在するが、X染色体上に位置するALAS2の変異が鉄芽球性貧血で相次いで報告されている。
XLSAは生下時から30歳までに見られ、伴性遺伝で男児によく発症するが、高齢者または保因者の女性に発症した例も報告されている。このような症例ではRARSと診断されることがあるので注意が必要である。後天性は通常40歳以後に発見される。鉄芽球性貧血に共通した病態は赤芽球ALAS2活性の低下と考えられる。そのために赤血球系細胞の分化や機能が障害され、赤芽球の過形成にもかかわらず、低色素性貧血を呈する。また、ferrokinetics上では骨髄の赤芽球過形成と無効造血により、血漿鉄消失率の短縮と赤血球鉄利用率の低下を認める。一方、後天性では高色素性赤血球と小球性低色素性赤血球が混在するdimorphismが見られる。また、ヘムの合成異常によりFPが過剰生産され、光線過敏症を起こすこともある。
もう一つのALAS2異常症、X連鎖性優性プロトポルフィリン症(XLDP)との関係
近藤らは赤芽球細胞内のALAS2活性の異常が認められた鉄芽球性貧血患者46例のポルフィリン代謝について検討した。その結果、ALAS2活性の異常に加えてポルホビリノゲン脱アミン酵素(PBGD)活性の高値並びにポルフィリン代謝物の増量、とくに赤血球遊離プロトポルフィリン(FP)の増量を初めて見出した。さらに、FP量が1000µg/dlRBC以上を示した4例の患者にはEPPと同様の皮膚の光線過敏症を合併していることを見出した。一方、2008年、ALAS2活性の異常とFP量の異常高値を示し、EPPと同様の皮膚光線過敏症状をみる新しい型のXLDPが見出されたが、両者においてFEPの増量をみることは興味深く、各種赤血球造血性疾患の病態機序を追及する上でも重要な知見と思われる。(近藤雅雄、2025年4月19日)
PDF:ALAS2遺伝子異常症,遺伝性鉄芽球性貧血(XLSA)