指定難病、ポルフィリン症の内、先天性赤芽球性ポルフィリン症(CEP)はGüntherによって初めて先天性代謝異常症として記載されたため、Günther(ギュンター)病とも呼ばれる。ヘム合成系の4番目の酵素であるウロポルフィリノゲンⅢ合成酵素(UROS)の遺伝子の異常による。そのために、UROS活性が正常の2~20%に減少し、基質のヒドロキシメチルビラン(HMB)が過剰生産され、ヘム合成に利用されないⅠ型異性体ウロポルフィリノゲン(UP’gen)Ⅰとコプロポルフィリノゲン(CP’gen)Ⅰとなって、体内に蓄積、屎尿中に排泄される。UP’genやCP’genは空気などで酸化されると、それぞれウロポルフィリン(UP)、コプロポルフィリン(CP)となる。UROS活性の減少の程度は光線過敏症の重症度とよく一致する。
本症は皮膚ポルフィリン症の中では最も激しい皮膚光線過敏症状を呈する。また、代謝異常が骨髄赤芽球で起ることから、赤芽球性ポルフィリン症に分類され、常染色体劣性遺伝の遺伝形式を示す。世界で約200例しか報告されていない極めてまれな疾患であるが、本邦では36例(家系)が報告されている。
CEPは幼児期より重篤な光線過敏性皮膚炎として発症するが、晩発例も報告されている。初期症状としては赤色尿、赤色歯牙、光線過敏症である。本症は皮膚ポルフィリン症に共通した皮膚病変(紅斑、水疱、色素沈着など)に加えて爪の変形、鼻・耳・指の欠損、赤色歯牙、脾腫、溶血性貧血、強膜病変などが挙げられる。光線過敏性皮膚障害と共に溶血性貧血や血小板減少症といった造血障害を伴うことが多い。
治療は、とくに有効な方法はなく、遮光するとともに外傷を起こさないよう注意することが大切である。皮膚以外に眼球の角膜、結膜、強膜に変化が起こり、失明に至ることもある。ポルフィリンの過剰な蓄積による溶血や皮膚症状を改善することを目的として、脾摘、ヘマチン療法、活性炭療法および外用薬などが試みられている。
(近藤雅雄、2025年4月18日掲載)
PDF:先天性赤芽球性ポルフィリン症(CEP)