肝赤芽球性ポルフィリン症のポルフィリン代謝異常と臨床

 指定難病ポルフィリン症」の一病型、肝赤芽球性ポルフィリン症(HEP)はヘム合成系の5番目の酵素であるウロポルフィリノゲン脱炭酸酵素(UROD)の遺伝子異常により、UROD活性が肝、赤血球その他の組織で著明に減少しているために肝と赤芽球の双方でポルフィリンの代謝異常が生じる。このUROD活性の著明な減少によりウロポルフィリノゲン(UP’gen)~コプロポルフィリノゲン(CP’gen)への脱炭酸反応が障害され、CP’genまでの途中中間物質であるUP’genおよびヘプタカルボキシルポルフィリンノゲンなどが過剰生産され、体内に蓄積、尿中に排泄される。また、赤芽球では過剰のプロトポルフィリン(PP)が生産され、末梢血液中に出現する。
 HEPの遺伝形式は常染色体劣性遺伝であり、生後~幼児期に発症する。本症は2010年までに世界で約40例しか報告がない極めてまれな疾患である。なお、わが国では、HEP症例が疑われた一症例を筆者らが見出している。
 症状は、生後直後から肝と骨髄赤芽球の双方において著明なポルフィリンの代謝異常を生じ、重篤な光線過敏性皮膚炎を主症状として発症するため、先天性赤芽球性ポルフィリン症(CEP)と酷似する。すなわち、幼児期に重篤な皮膚の脆弱性、水疱、瘢痕形成、多毛、顔面および手指の断節、溶血性貧血、脾腫などが診られる。また、全身倦怠感、食欲不振、肝腫大および神経症状を伴う。
 治療は、とくに有効な方法はない。したがって、できるかぎり日光曝露による光毒反応と皮膚の外傷を起こさないよう注意する。(近藤雅雄、2025年4月17日掲載)

PDF:肝赤芽球性ポルフィリン症(HEP)