晩発性皮膚ポルフィリン症のポルフィリン代謝異常と臨床

 指定難病晩発性皮膚ポルフィリン症(PCT)は肝のウロポルフィリノ-ゲン脱炭酸酵素(UROD)活性の減少に基づくポルフィリン代謝異常症である。UROD活性の減少はウロポルフィリノゲン(UP’gen)~コプロポルフィリノゲン(CP’gen)への脱炭酸反応が障害され、UP’gen及びヘプタカルボン酸ポルフィリンノゲンなどの過剰生産が皮膚光線過敏及び肝障害発症の原因となる。本症には肝及び赤血球UROD活性が正常の50%に低下する家族性PCT(fPCT)と、肝でのみ活性低下が見られる散発性のPCT(sPCT)が知られている。fPCTの遺伝形式は常染色体優性遺伝であり、sPCTと同様成人後発症する。PCTはポルフィリン症の中で最も頻度が高い
 sPCTの誘因としてはアルコ-ル長期多飲やエストロゲンなどが多く、B及びC型肝炎ウィルス(HCV)やエイズウィルス(HIV)感染なども広く知られている。とくにHCV感染については高頻度(60~90%)でsPCTに合併する(fPCTでは約20%)。
 sPCTの発症機序は不明である。欧米では、sPCTは先天性のヘモクロマト-シスの原因遺伝子の変異(C282Y)が高いことが報告されたが、日本人症例では確認できなかった。
 肝障害は細胞内鉄、脂肪およびリポフスチン様の褐色の針状結晶の沈着、肝細胞壊死、繊維化が見られ、肝硬変の移行や肝細胞癌(日本29%、欧米13~47%)の合併も他の肝性ポルフィリン症の内、最も頻度が高い。
 診断、鑑別としては、日光曝露部の色素沈着、水疱、糜爛形成、皮膚脆弱性などが皮疹として挙げられる。尿(赤色尿)及び肝生検標本は長波長紫外線照射により赤色蛍光を呈する。尿中のウロポルフィリン、ヘプタカルボキシルポルフィリンが増量し、糞便・尿中isoコプロポルフィリンを検出する。赤血球内ポルフィリンはすべて正常であり、他のポルフィリン症との鑑別が容易である。遺伝性のfPCTの場合は赤血球URODの活性が正常の約50%であれば確定である。
 治療及び予防は誘因を除去する。軽症例では誘因を除去するだけで尿中ポルフィリンが正常化し、症状も改善する。尿中ポルフィリンが著しく高値の場合は瀉血療法を行う。また、HCV合併PCT患者ではインターフェロン治療によりHCV-RNAの消失とともに皮膚症状の改善、尿中ポルフィリンの低下が見られ有効であるが、無効とする報告もある。 (近藤雅雄、2025年4月17日掲載)

PDF:晩発性皮膚ポルフィリン症(PCT)