多様性(異型)ポルフィリン症のポルフィリン代謝異常と臨床

 指定難病多様性ポルフィリン症(VP)はヘム合成系の7番目のプロトポルフィリノゲン酸化酵素(PPO)の遺伝子異常が原因で起こる病気。本酵素はミトコンドリアに局在し、基質コプロポルフィリノゲンⅢからプロトポルフィリノゲンⅨの生成を触媒する。他の急性ポルフィリン症と同様、思春期以降の女性に多く見られ、薬などの様々な誘発因子によってヘムが減少するとポルフィリン前駆体δ-アミノレブリン酸(ALA)、ポルホビリノゲン(PBG)やポルフィリンが増量・蓄積して症状が出現する。常染色体優性の遺伝形式をとる。
 肝性ポルフィリン症に属し、急性間歇性ポルフィリン症(AIP)と同様の内科的・神経学的諸症状を診るが皮膚症状も存在することが異なる。南アフリカ共和国の白人に多く、1960年代には約2万人の患者がいるといわれ、南アフリカ型遺伝性ポルフィリン症と呼ばれることもある。わが国では2010年までに56例が報告されている。
 PPO活性の低下により、ほとんどすべてのポルフィリン代謝産物が蓄積・増量する。糞便中には主にPPとCPの排泄が増加する(PP>CP)。また、X-ポルフィリン(XP)が特異的に出現する。急性期には、尿中にUP~CPのⅢ型が増加するほか、AIP同様、ポルフィリン前駆体ALA、PBGが増加するが、寛解期には正常化する。
 臨床症状としては、急性ポルフィリン症に共通した内科的・神経学的諸症状と皮膚ポルフィリン症の一病型である晩発性皮膚ポルフィリン症(PCT)に類似した皮膚症状からなる。皮膚症状は過剰に蓄積したポルフィリンによる光毒作用の結果である。したがって、過剰なポルフィリンの蓄積量と日光に対する曝露時間に関係するのに対して、急性症状はヘムの予備能に関連した複雑な機序により出現する。本症もAIPと同様、遺伝性素因のある人に薬剤、その他の発症誘因が加わって発症する。
 治療は急性症状についてはAIPに準じ、禁忌薬剤の使用を避ける。皮膚症状についてはPCT、先天性赤芽球性ポルフィリン症(CEP)など皮膚ポルフィリン症の治療に準じ、日光への曝露を避けることが予防につながる。予後は悪くない。(近藤雅雄、2025年4月15日)
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