指定難病、遺伝性コプロポルフィリン症(HCP)はヘム合成系の6番目の酵素、コプロポルフィリノゲン酸化酵素(CPO)の遺伝子異常が原因で起こる病気。本酵素はミトコンドリアの膜間空間に局在し、基質であるコプロポルフィリノゲン(CP’gen)ⅢからプロトポルフィリノゲンⅨの生成を触媒する。本酵素活性の低下によってポルフィリン前駆体δ-アミノレブリン酸(ALA)とポルホビリノゲン(PBG)およびコプロポルフィリン(CP)Ⅲが増量・蓄積する。常染色体優性の遺伝形式をとる。
本症発症に関わる誘発因子と思春期以降の女性に多いことなどは急性間歇性ポルフィリン症(AIP)、多様性ポルフィリン症(VP)と同じである。患者数は全世界で約200例に満たない。本邦では1966年の第1例報告から2010年12月までに41例しか報告(男性13例、女性27例、性別不明1例)されていない極めて稀な疾患である。
急性ポルフィリン症の診断は、尿中のALAまたはPBGの増量を確認することである。ただし、AIPでは寛解期にも尿中のALA、PBGの高値が持続するが、本症およびVPでは寛解期には正常化する。過剰生産・蓄積するCP’genⅢは水溶性と脂溶性の両方の性質を持つため尿や糞便中に排泄される。そして、空気で酸化されてCPⅢとなる。糞便中CPは寛解期でも持続的に高値を示すので早期診断に有効である。
本症は肝性ポルフィリン症に属し、AIPと類似の急性症状であるが、症状は軽度で、皮膚光線過敏症を起こす場合もある(患者の約30%)。すなわち、HCPは急性症状と皮膚症状の両方の出現を診ることがあるが、VPの皮膚症状およびAIPの急性症状よりは軽症のことが多い。
治療は、急性症状、皮膚症状についてはVPに準じる。急性症状については注意して禁忌薬剤の使用を避け、皮膚症状については日光への曝露を避けることが予防につながる。予後は悪くない。(近藤雅雄、2025年4月15日掲載)
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