指定難病、急性間歇(欠)性ポルフィリン症(AIP)はヘム合成系の3番目の酵素ポルホビリノゲン脱アミノ酵素(PBGD)の遺伝子異常が原因で起こる病気。本酵素は細胞質に局在し、4分子のポルホ(フォ)ビリノゲン(PBG)を脱アミノ縮合させ、直鎖上のテトラピロールである1分子のヒドロキシメチルビラン(HMB)の生成を触媒することからHMB合成酵素とも呼ばれる。本酵素活性は健常者の約50%であるが、これに医薬品などが誘発因子となってヘムの減少が起こると、ヘム合成系の最初の酵素δ-アミノレブリン酸合成酵素(ALAS)活性が上昇し、ポルフィリン前駆体δ-アミノレブリン酸(ALA)やPBGが異常増量・蓄積して症状が出現する。常染色体優性の遺伝形式をとる。
急性ポルフィリン症の代表的な病型で、肝性ポルフィリン症に属する。遺伝的素因を持った人に薬剤、ストレスなど何らかの誘因が加わって、急性~亜急性に発症するが、寛解期は症状がなく、健常者と変わらない。思春期以降中年期(妊娠可能な年代)にかけての女性に多く発症するが、これは、月経、妊娠、分娩など性ホルモン分泌の変化が誘因になることが少なくないことを示している。発症時には尿が赤くなることから自覚できる。急性期は多彩な症状をみるが、多くは腹痛・嘔吐などの消化器症状で発症し、ついで四肢のしびれ・脱力などの末梢神経障害を伴うようになることが多い。また、症状の誘発因子は増悪因子ともなり、多くの禁忌薬が知られている。
治療は、急性ポルフィリン症のすべてに共通した大量の補液、グルコースの投与などと共に各症状については対症療法となる。薬剤の使用に際しては十分注意して適切に使用する。ヘマチンの静脈内投与が原因療法に近いものとして期待されている。また、肝ALA合成酵素活性を抑制するmRNA標的療法,ギボシラン(ギブラーリⓇ)およびシメチジン(タガメット)が臨床的にもポルフィリン代謝異常の改善にも有効との報告もある。(近藤雅雄、2025年4月14日掲載)
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