5-アミノレブリン酸脱水酵素欠損性ポルフィリン症の病態

 指定難病ポルフィリン症の内、δ-アミノレブリン酸脱水酵素欠損性ポルフィリン症(ADP)はヘム合成系の2番目の酵素δ-アミノレブリン酸脱水酵素(ALAD)の遺伝子異常が原因で起こる病気です。本酵素は細胞質に局在し、2分子のδ-アミノレブリン酸(ALA)を1分子のピロールであるポルホ(フォ)ビリノゲン(PBG)の生成を触媒します。本酵素の著明な活性低下は基質のALAの異常増量・蓄積を起こします。常染色体劣性の遺伝形式をとります。
 本症は急性ポルフィリン症、肝性ポルフィリン症に属し、ALAD遺伝子変異に基づく酵素蛋白の異常によって酵素活性が著明に低下することが原因で基質ALAが体内に過剰生産・蓄積して発症します。
 1978年、Dossらによって始めて報告されて以来、現在までに世界で6例(ドイツ、スウェーデン、ベルギー、米国の症例、発症年齢3~63歳、すべて男性)の報告しかないという極めて稀な疾患です。日本では1例の報告があるが遺伝子解析や生化学データがなく、実態は不明であり、誤診の可能性が強いです。
 急性ポルフィリン症ではポルフィリン前駆体ALAとPBGが尿中に大量出現しますが、ADPは鉛中毒と同じくPBGは増量しません。ADPで増量するのは尿中ALAとコプロポルフィリン、血液中の亜鉛プロトポルフィリンで、鉛中毒のポルフィリン代謝異常と極めて似ています。しかし、症状は急性ポルフィリン症と同じく急性内臓神経発作を起こします。
 本症は最初の報告者に因み、”Doss porphyria”と呼ばれることがあります。(近藤雅雄、2025年4月14日掲載)
PDF:ALAD欠損性ポルフィリン症(ADP)