指定難病、急性ポルフィリン症は、ALAD欠損性ポルフィリン症(ADP)、急性間歇性ポルフィリン症(AIP)、遺伝性コプロポルフィリン症(HCP)、多様性ポルフィリン症(VP)の4病型を指します。発症は思春期以降の女性に多く、遺伝的素質と薬剤、サプリメント、月経・妊娠・分娩・ピル服用、感染、飢餓、ストレスなどの何らかの因子が加わって、急性~亜急性に発症します。誘発因子(遺伝子-環境因子)を早急に特定し、これを除去することが治療と予防の上、最も重要となります。
本症は肝のヘム生産量が低下する結果、肝ALA合成酵素(ALAS)活性が上昇し、δ-アミノレブリン酸(ALA)やポルフィリンが過剰生産され、消化器、神経、精神、循環器、内分泌、泌尿器、代謝、運動など、様々な障害を引き起こす疾患群です。
症候としては、共通して腹部症状、神経症状、精神症状が三徴をなし、腹部症状では腹痛、嘔吐、便秘(または下痢)が起こります。症状は発作的に起こり、数日,数週間あるいはさらに長く続く。これら腹部自律神経症状に加えて痙攣、意識障害、精神症状などの中枢神経障害、筋力低下、知覚異常などの末梢神経障害、そして、4病型共通して発症時には赤色尿が出現します。
治療として、腹痛発作時にはグルコースの点滴投与を行うと共に、シメチジン(タガメット)の内服、ヘミン製剤の点滴静注で対応します。シメチジンの作用は肝ALAS活性抑制作用があり、代謝異常の是正も含めて有効と報告されています。また、新薬のsiRNA製剤ギボシラン(ギブラーリⓇ)は月に1回の皮下注射で肝臓に特異的に取り込まれ、肝ALASの生産を抑制して、ALAやポルホビリノゲン(PBG)の過剰産生を抑えます。対症療法に対する薬剤の使用に際しては十分に注意し、適切に使用して下さい。早期診断と禁忌薬剤の使用を避ければ予後は良好です。重症の場合には血漿交換が適応となります。
(近藤雅雄、2025年4月12日掲載)
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