生体内に広く存在するヘム蛋白(赤血球中のヘモグロビンや筋肉中のミオグロビン、肝細胞内のチトクロームP-450など)のヘム部分を生成する系をヘム合成系と呼びますが、途中、7種類のポルフィリン代謝物質を経て合成されることからポルフィリン代謝系とも呼ばれます。この系には8つの酵素が関与しており、肝では最初のδ-アミノレブリン酸合成酵素(ALAS)が律速酵素となってヘムの生成が制御されています。この8つの酵素のいずれかが異常を起こすと、ヘム合成量の減少と同時に体内にポルフィリンまたはその前駆物質が大量に生産・蓄積されると共に多彩な症状を診ることになります。これがポルフィリン代謝異常症と呼ばれる疾患群であり、その中で最も深刻なのが指定難病の遺伝性ポルフィリン症です。
本症の臨床統計から、わが国では1920年の第一例報告から2010年の91年間で926例しか報告されていないといった超稀少疾患です。ヘム合成の最初の酵素であるALASは肝臓と骨髄赤芽球では異なった遺伝子により調節され、その発現は組織特異性に調節されています。そのため、ポルフィリンの代謝異常は組織臓器別に肝性ポルフィリン症と赤芽球(骨髄)性ポルフィリン症とに分類されます。また、臨床的には急性の神経症状を主徴とする急性ポルフィリン症(AIP、ADP、VP、HCP)と皮膚の光線過敏症を主とする皮膚(型)ポルフィリン症(CEP、EPP、PCT、HEP、XLDP)とに分類され、総計9病型が報告されています。
一方、ある種の疾患、あるいは薬物の使用、化学物質の曝露などに際して尿中にポルフィリン排泄量が増加する場合、吸収・排泄などを含めた広義のポルフィリン代謝異常が存在するといえますが、その機序は原因により異なります。尿中ポルフィリンの異常排泄を見ながら、その増加したポルフィリンの直接的な影響としては臨床症状を説明できない場合、これをポルフィリン尿症と呼んでいます。
詳細は下記のPDFにポルフィリン症の概念、分類、病態、診断法、治療法について記載しましたので参照して下さい。(近藤雅雄、2025年4月11日掲載)
PDF:指定難病、日本のポルフィリン症概論



