色素性乾皮症とポルフィリン症では紫外線領域が異なる

 色素性乾皮症(XP:Xeroderma Pigmentosum)は光線過敏性の常染色体劣性遺伝性の皮膚疾患です。この病気の原因は紫外線による遺伝子(DNA)損傷の修復機能の障害によって発症します。つまり、紫外線によって細胞内のDNAが傷ついた場合、正常者であれば修復機能が働きますが、XPの患者さんでは修復する酵素が無いために皮膚細胞が無防備に曝され続け、ついには皮膚がんになってしまいます。
 この疾患には10群(A~I群とバリアント群に分類され、日本人に多いA群は皮膚疾患に加えて、進行性の中枢神経障害や末梢神経障害が出現します。
 XPの患者さんにとって最も危険なのは下図の280~300nmの紫外線領域です。

 一方、ポルフィリン症は常染色体遺伝性(優性と劣性が知られている)疾患でポルフィリン代謝異常を起こします。9病型が知られ、急性間歇性ポルフィリン症以外はすべて光線過敏症皮膚症状が出現します。ポルフィリン症の皮膚症状は遠紫外線領域の400nm付近(UV-A)が最も危険で、可視光線でも550~650nm付近に強い吸収帯があります。とくに、赤芽球性プロトポルフィリン症(EPP)の患者さんが400nm付近の強い紫外線に長時間急激に暴露されると急性肝不全など重篤な症状を起こします。



 光とは、電場と磁場が一体となって振動する波(電磁波)で、この波の長さ(波長)によって、光の色が変化します。光には、目に見える可視光線(波長が400~700nm)と、その波長以上の赤外線、以下の紫外線とがあります。XPの患者さんにとって重要な意味を持つのはこの中の紫外線の一部です。紫外線は、400nm以下の波長を持つ光であり、目には見えません。その中でも、A波と呼ばれる320nm~400nm、B波と呼ばれる280nm~320nm、C波と呼ばれる280nm以下のものに分けられます。(太陽光の290nm以下は、大気中の酸素やオゾン層があることにより地表に届くことはありません)(nm;ナノ・メートル):1nmとは百万分の1mmのこと)
(近藤雅雄、2025年3月30日掲載)