晩発性皮膚ポルフィリン症(porphyria cutanea tarda, PCT)は肝のウロポルフィリノゲン脱炭酸酵素(UROD)活性の減少に基づくポルフィリン代謝異常症であり、ウロポルフィリン(UP)が体内に大量蓄積・増量し、それが原因で皮膚光線過敏症や肝障害を発症する。また、肝臓がんに移行するリスクが高い。
PCTは遺伝的素因や何らかの体内因子に加えて、外からの因子、例えば、長期の飲酒、男性では前立腺癌治療のためのホルモン療法、女性では避妊を目的としたピルにそれぞれ関わるエストロゲン、あるいはC型肝炎やHIVウイルス感染および肝への鉄沈着などが誘因となって発症するがその機序は不明である。
そこで、PCT患者が診断のために採取された約5mgの微量生検肝を試料として、ポルフィリン代謝関連物質の測定を世界に先駆けて行った。
その結果、PCTの肝障害発症機序として、長期飲酒などによって体内のマグネシウム(Mg)量が減少すると共に何らかの機序で肝に鉄が蓄積される。この鉄は肝UROD活性を阻害するため肝にUPが肝臓に大量蓄積する。鉄やUPなどの強力な酸化物はコラーゲン生産を誘発し、肝障害が起こる原因となると推測される。
したがって、PCTの治療は、肝組織に蓄積した鉄およびUPの除去を目的とした瀉血療法の他に、MgやSeおよび抗酸化物質の投与についても治療の一選択肢と考えられる。詳細は以下のPDF参照。(近藤雅雄、3月21日掲載)
PDF:PCTの酵素異常