人類の健康に貢献した元「国立公衆衛生院」の復活を願う

 元国立公衆衛生院は米国ロックフェラー財団の全額寄付によって建立され,昭和13(1938)年3月29日勅令第147号公衆衛生院管制の公布をもって厚生省の創立(1938年1月11日)に遅れること2か月余りの後に同省の直轄機関として設立されました。設立には野口英世が深く関与した記録があります。
 本院はわが国の公衆衛生の向上を期するため,国および地方公共団体などにおける衛生技術者の資質の向上を図るための養成訓練と公衆衛生に関する学理の応用の調査研究を司る教育・研究機関として設置されました。そして、わが国の保健・医療,福祉,環境の分野で多大な貢献をしてきました。
 平成7(1995)年、厚生省は「日本は近代国家として,公衆衛生の時代は終わった」とし,公衆衛生という言葉が省内から消えました。平成14(2002)年4月,旧厚生省は厚生労働省となり,試験研究機関の再編成によって64年という短い歴史を閉じました。
 今、世界は、新型感染症の到来、ロシアによる侵略戦争、地球温暖化など、安心安全な平和社会からどんどん遠ざかっているように見えます。このような時代にこそ、人類の健康に貢献する国立の公衆衛生院が必要とされているのではないでしょうか。先進国では国立の公衆衛生院は国家の中心的役割を果たしています。しかし、日本では残念ながら2002年に無くしてしまいました。
 日本の未来のために、元国立公衆衛生院の復活を期待したい。
(写真は元国立公衆衛生院、平成15(2003)年1月29日,筆者撮影)(2025年3月10日掲載)
PDF:元国立公衆衛生院