難病患者と大学病院医師:超稀少疾患研究の推進を望む

 難治性疾患の患者を有名私立大学病院に紹介し、入院した時、5~6人の医師たちにぜひ症例報告をして欲しい旨をお願いしたところ、一人の医師が「本症についてはすでに多くの報告があり、本症を発表してもその価値がない」と述べ、笑われたことを覚えている。多くの医師が同じ考えであろう。医師からすれば、日常の業務が忙しく、これまでに報告がない新しい発見などがあれば率先して公表するであろう。よほど新しい内容がなければ発表しないものだ。

 しかし、本症について調べたが、100万人に数人の発症といった極めて症例数が少ないことから、情報も少なく、十分な臨床統計もないことがわかった。したがって、疫学も勿論ない。本症のような超稀少疾患については症例が見つかれば、これまでに報告されていても、必ず論文として、誰でも検索して見られるように公表することを義務付ける必要があるのではないか。また、医療関係者は患者がいればぜひ国内外の医学会や研究会で報告し、症例報告として記録を残してほしいと願う。患者によって症状や治療の効果も異なるはず。その事実が大切なのである。

 医師や患者も情報を知りたがっている。大学病院の医師は「報告する価値がない」と言っていたが、それが医学の発展を妨げる原因ともなる。情報は多い方が良いのに決まっている。特に超稀少がんなどの難治性疾患においては患者数が少ないことが原因で治療研究が進まないことが深刻化しているのではないか。また、公表しないことは稀少疾患に対する治療上の不都合な真実も疑われかねない。(近藤雅雄、2025年3月8日掲載)