りんごは不思議な果物です。りんごに含まれているビタミンCは100g中に4mgで、食品の中ではさほど多いわけではありません。しかし、リンゴにはビタミンCを効率よく体内に取り込むのを助ける成分が含まれているため、含有量から予測される以上に血液中のビタミンCが増えると考えられます。国立がん研究センターが行った5年間の調査によれば、サプリメントでビタミンCを1日50mg摂取したグループの血液中ビタミンCの増加量は13.0%で、500mg摂取したグループでも増加量は38.5%でした。したがって、リンゴ摂取で血液中のビタミンCが34%増加したことを、サプリメントに直すと1日約500mgのビタミンCを摂取したことと同等になります。このことは、サプリメントよりも食品から摂取する方が効率的であるといえます。
ビタミンCは、抗酸化力が強く、さまざまな生活習慣病の予防に有効です。脳卒中、脳梗塞、がん、壊血病などの予防、ストレス解消、色素沈着の防止、白内障予防などに有効であると報告されています。さらに、りんごには良質な食物繊維が含まれ、血液中の中性脂肪を減らすのに効果的です。このりんごの水溶性食物繊維(リンゴペクチン)を摂取するとアレルギーの引き金と考えられているヒスタミンを下げる効果が明らかになっています。また、りんごは肌荒れや「にきび」の原因となる便秘を解消する力が強く、かつ、アラビノオリゴ糖はビフィズス菌を特異的に増殖させることも見出されています。さらに、カリウムなどのミネラルが豊富であり、血圧上昇を抑えます。また、ポリフェノールもたくさん含まれています。りんごが赤くなると医者が儲からなくなるといわれますが、まさに、りんごはさまざまな病気の予防、健康増進に不可欠な果物です。(近藤雅雄、2025年3月7日掲載)