茶のミネラル(無機質)成分とその量は意外と知られていません。
筆者らは国立健康・栄養研究所(現国立研究開発法人
医薬基盤・健康・栄養研究所)と千葉市環境保健研究所との共同研究で各種茶を誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)にて24種の元素定量を行いました。その結果、総ミネラル量は鳥龍茶が2594.3ppmで最も高く、麦茶が961.2ppmと最も低値(鳥龍茶>ほうじ茶>緑茶ほまれ>煎茶>静岡煎茶>宇治茶顆粒>カテキングリーン>玄米茶>宇治煎茶>麦茶)でした。この内、全茶においてマグネシウム(Mg)とマンガン(Mn)量が総ミネラル量の94.3(鳥龍茶)~98.1%(玄米茶)を占め、Mg量は60.4(鳥龍茶)~77%(玄米茶)、Mn量は1.9(麦茶)~40.4%(ほうじ茶)でした。
抗酸化元素および必須元素Co、Cr、Cu、Mg、Mo、Mn、Ni、Se、V、Znの総量は総ミネラル量とほぼ比例していました。鳥龍茶はCo, Cr、Cu、Mg、Se、Vが多く,麦茶はZnが多いことがわかりました。
汚染元素の定義はありませんが、Al、As、Cd、Pb、Snについて検討しました。茶腫の名前は避けますが、中にはアルミニウム(Al,175.6ppm)、砒素(As,0.425ppm)、鉛(Pb,3.608ppm)、錫(Sn,0.372ppm)と他の元素に比べて高値を示すものがありました。この数値はヒ素(宇治煎茶の22倍)、ビスマス(24倍)、鉛(20倍)、錫(16倍)に当たります。
以上、茶中の元素量は栽培される土壌等の環境によっても影響を受けますが、茶種によって元素バランスおよび量がかなり異なっていることが分かりました。また、砒素、カドミウム、鉛含有量の多いものが確認されました。茶腫については成分分析表示のない物も多く,ミネラルの成分表示の公開も含めた検討が必要です。(近藤雅雄、2025年3月6日掲載)