鉛は、採鉱、精錬、成型が簡単であったため古代から生活必需品として有用されてきた。ローマ帝国時代には、水道管、陶器用、化粧品、外用薬、塗料、料理用鍋類、食物用容器、酒の貯蔵などに使用された。このため鉛中毒が多発し、ローマ文明は衰退したといわれている。1994年、ベートーベンマニアがロンドンのサザビーでベートーベンの遺髪数本を7,300ドルで落札し、その内の2本の解析を米国のウォルシュ博士に依頼した結果、通常量の100倍多い鉛が検出された。彼の死因は長い間、梅毒死亡説が有力であったが、鉛の検出によって、肺炎治療に処方された鉛含有薬剤が原因で肝硬変を併発し、鉛中毒で死亡したと思われる。
鉛中毒は急性ポルフィリン症と似て、消化器症状、精神神経症状、造血障害、腎障害など多彩な症状を呈し、生命にかかわる重大な疾患である。国連は2020年07月31日、世界の子ども3人に1人が鉛中毒であると警鐘を発した。世界中で最大8億人の子どもが、水質・大気汚染が原因で鉛中毒になっていると警告する特別報告書を30日、国連児童基金(ユニセフ)が発表した。
以下、下記の論文PDFを参照してください。(近藤雅雄、2025年2月24日掲載)
PDF:鉛中毒の新たな問題